別れ話をしましょうか。

ふまさ

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「アール……」

 コリンナがアールを見詰める。その双眸は、少しの驚きを含んでいた。アールの口調が、これまでとはまるで違っていたからだ。

「怖いわ、アール……何を怒っているの?」

「怒ってなんかいないよ。ただ、もしデージーが僕に好意を抱いてくれていることが本当なら、これは僕と、デージーの問題だ」

「でも、この子はこんなだから……あたしが手伝ってあげなかったら、いつまでたっても気持ちなんか伝えられなかったと思うし……」

 それはその通りだと、デージーも理解している。でも、だからといって、こんな伝え方はしてほしくなかった。

(……それに、答えはわかりきっているもの)

 デージーは勇気を出し、アールに向かって頭を下げた。

「……アール様、答えはいりません。このことは、忘れてもらってかまいませんので」

「デージー?! どうして……あたしがせっかく──せめて返事ぐらいっ」

 コリンナに身体を揺すられながら、デージーは頭を下げたまま、ご迷惑をおかけしました、と呟いた。

 少しして。

「──時間を、くれないかな」

 アールが、小さく口を開いた。デージーはゆっくり顔をあげ、いえ、と頭をふった。

「……わたしなら大丈夫です。それに、答えはわかっていますので」

「いや、僕がきみのことを知りたいんだ。きみと会話したのは、数えるほどだし……答えるのは、きみをもっとよく知ってからじゃ、駄目かな?」

「……ですが」

 コリンナとは真逆の性格をしているデージー。果たしてそんな女性を、好きになってくれる可能性など、あるのだろうか。よけいに傷付くだけではないか。そんな考えが頭をよぎる。

「まあ、まあ!」

 嬉しそうに声をあげたのは、コリンナだった。戸惑うデージーの手を取り、良かったわね、と語りかけてきた。

「ほら、ね? 気持ちを伝えるって、大事でしょう? 最初から諦めていたら、何も叶わないんだから!」

 あたしのおかげね。と目で訴えかけられているような気がして、デージーは思わず、視線をそらせてしまった。コリンナは、もう、とため息をつく。

「まあ、いいわ。さてと。そうと決まれば、あたしは聞き役に徹するわ。さあ、二人で存分に話し合ってちょうだい」

 コリンナは先ほどまで自分が座っていたアールの正面の席にデージーを座らせると、自分はその隣、デージーが座っていた席に腰を落とした。

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