はずれのわたしで、ごめんなさい。

ふまさ

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 もともとレックスは、王都ではなく、地方に住んでいた。大好きだった母はよく、こんなことをレックスに言っていた。

『わたしはむかし、王都に住んでいてね。学園に通っていたころ、とても仲の良かった親友がいたの。もしお互いに子どもができて、結婚したら、親戚になれるわね、なんて話しをしていたわ』

 レックスが学園に通う年齢となり、一人で王都に住まうようになってから少しして、母が病に伏せてしまった。死ぬ前に、親友に会いたい。そうぽつりともらした母のために、父とレックスは母の親友を探したが、残念ながらその親友はすでに亡くなっていた。

『でも、二人の娘がいるみたいなんです。わたしにはまだ好きな人もいないし、恋人もいない。もしその娘さんのどちらかがわたしとお付き合いをしてみてもいいと言ってくれたら、してみようかと思いまして。もし結婚できたら、母上の親友と親戚になれますね』

 そんな報告をすると、寝台に横になりながらも母はとても嬉しそうに笑ってくれた。

 母はそう長くない。そう思ったレックスは、それからすぐにマイヤー伯爵のもとに向かった。妹にはすでに婚約者がいたが、姉のベティはまだ恋人もいなかった。話しはとんとん拍子に進み、マイヤー伯爵も悪い人ではなさそうだし、ベティは学園でも有名なほどに器量のよい女性だったし、数日の交際を経て、婚約した。早く母に、婚約者として紹介したかったから。

 ──けれど母は、正式に婚約したその日に病状が急変し、亡くなってしまった。

 身体から力が抜けてしまい、しばらくはなにもする気が起きなかった。だからだろうか。これまで見えていなかったものが、見えてきた気がしていた。

 そう。アリシアのことだ。

 屋敷を訪れても、いつも自室に閉じこもったまま。マイヤー伯爵とベティは、いつも気分がすぐれないらしいので休んでいますと言うだけ。

 学園でたまにすれ違うアリシアが表情を動かすところを見たことがない。いつも下を向いて、誰とも目を合わさないようにしている。対し、姉のベティは表情がよく動くし、社交的だ。それが個性だと、性格だと言うには、あまりにも二人がかけはなれているような気がして。

 ──それになによりおかしいと思ったのは。
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