7 / 30
7
しおりを挟む
「あんなに素敵な方と婚約できるなんて、うらやましいですわぁ」
モーガンとの婚約が成立して以来、そのうわさは学園中に広まっていき、リアもモーガンも、しばらくはたくさんの人に囲まれた。幸せだった。本当に。でも、そのころだったろうか。モーガンがデートに遅刻をするようになってきたのは。
最初は、ほんとに少しの遅刻。それがどんどんと長くなっていき。そしてある日、とうとう、二時間待たされたあげく、キャンセルまでされてしまった。
いつもの広場でニールとモーガンを待っていたリアの元に、モーガンの屋敷の使用人の男が青い顔をしながら駆けつけてきた。
「も、申し訳ございません。リア様。モーガン様は、どうしても手が放せない用ができてしまい、今日の予定をキャンセルさせてもらいたいと、言付かってきました……っっ」
ニールが青筋を立てながら前に出ようとするのを手で制止ながら、リアは目を口を開いた。
「……アビーの具合が悪いからですか?」
使用人が、口ごもる。リアはそれ以上追及することはやめた。
「……それで。このこと、おじさまたちは?」
「ほ、本日、旦那様たちは家におられず……」
だからかこそのキャンセルじゃないだろうな。ニールは舌打ちしそうになった。だが。
「──そう、良かった。なら、モーガンたちがとがめられることもないわね」
リアが、ほっと息を吐いた。ニールも、使用人までもが目を見張った。
「……怒っては、いらっしゃらないのですか……?」
「正直言うと、最初はね。でも、事故に遭ったとかでなくて良かったわ」
リアが頬を緩めるのを見て、ニールはくやしさから、こぶしを強く握りしめた。どうせこのことも、両親には言うなと止められるのだろう。けれど、これは本当にお嬢様のためになるのだろうか。ニールは自問自答したが、結局はリアにこわれるまま、このことを誰にも告げることはしなかった。
モーガンとの婚約が成立して以来、そのうわさは学園中に広まっていき、リアもモーガンも、しばらくはたくさんの人に囲まれた。幸せだった。本当に。でも、そのころだったろうか。モーガンがデートに遅刻をするようになってきたのは。
最初は、ほんとに少しの遅刻。それがどんどんと長くなっていき。そしてある日、とうとう、二時間待たされたあげく、キャンセルまでされてしまった。
いつもの広場でニールとモーガンを待っていたリアの元に、モーガンの屋敷の使用人の男が青い顔をしながら駆けつけてきた。
「も、申し訳ございません。リア様。モーガン様は、どうしても手が放せない用ができてしまい、今日の予定をキャンセルさせてもらいたいと、言付かってきました……っっ」
ニールが青筋を立てながら前に出ようとするのを手で制止ながら、リアは目を口を開いた。
「……アビーの具合が悪いからですか?」
使用人が、口ごもる。リアはそれ以上追及することはやめた。
「……それで。このこと、おじさまたちは?」
「ほ、本日、旦那様たちは家におられず……」
だからかこそのキャンセルじゃないだろうな。ニールは舌打ちしそうになった。だが。
「──そう、良かった。なら、モーガンたちがとがめられることもないわね」
リアが、ほっと息を吐いた。ニールも、使用人までもが目を見張った。
「……怒っては、いらっしゃらないのですか……?」
「正直言うと、最初はね。でも、事故に遭ったとかでなくて良かったわ」
リアが頬を緩めるのを見て、ニールはくやしさから、こぶしを強く握りしめた。どうせこのことも、両親には言うなと止められるのだろう。けれど、これは本当にお嬢様のためになるのだろうか。ニールは自問自答したが、結局はリアにこわれるまま、このことを誰にも告げることはしなかった。
180
お気に入りに追加
9,571
あなたにおすすめの小説
【完】婚約者に、気になる子ができたと言い渡されましたがお好きにどうぞ
さこの
恋愛
私の婚約者ユリシーズ様は、お互いの事を知らないと愛は芽生えないと言った。
そもそもあなたは私のことを何にも知らないでしょうに……。
二十話ほどのお話です。
ゆる設定の完結保証(執筆済)です( .ˬ.)"
ホットランキング入りありがとうございます
2021/08/08
冤罪をかけて申し訳ないって……謝罪で済む問題だと思ってます?
水垣するめ
恋愛
それは何の変哲もない日だった。
学園に登校した私は、朝一番、教室で待ち構えていた婚約者であるデイビット・ハミルトン王子に開口一番罵声を浴びせられた。
「シエスタ・フォード! この性悪女め! よくもノコノコと登校してきたな!」
「え……?」
いきなり罵声を浴びせられたシエスタは困惑する。
「な、何をおっしゃっているのですか……? 私が何かしましたか?」
尋常ではない様子のデイビットにシエスタは恐る恐る質問するが、それが逆にデイビットの逆鱗に触れたようで、罵声はより苛烈になった。
「とぼけるなこの犯罪者! お前はイザベルを虐めていただろう!」
デイビットは身に覚えのない冤罪をシエスタへとかける。
「虐め……!? 私はそんなことしていません!」
「ではイザベルを見てもそんなことが言えるか!」
おずおずと前に出てきたイザベルの様子を見て、シエスタはギョッとした。
イザベルには顔に大きなあざがあったからだ。
誰かに殴られたかのような大きな青いあざが目にある。
イザベルはデイビットの側に小走りで駆け寄り、イザベルを指差した。
「この人です! 昨日私を殴ってきたのはこの人です!」
冤罪だった。
しかしシエスタの訴えは聞き届けてもらえない。
シエスタは理解した。
イザベルに冤罪を着せられたのだと……。
【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫
紫崎 藍華
恋愛
政略結婚だったにも関わらず、スティーヴンはイルマに浮気し、妻のミシェルを捨てた。
スティーヴンは政略結婚の重要性を理解できていなかった。
そのような男の愛が許されるはずないのだが、彼は愛を貫いた。
捨てられたミシェルも貴族という立場に翻弄されつつも、一つの答えを見出した。
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。
田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。
結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。
だからもう離婚を考えてもいいと思う。
夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。
愛している人に愛されない苦しみを知ってもらおうとした結果
よしゆき
恋愛
許嫁のトビアスのことがカティは幼い頃から好きで彼と将来結婚できることを心から喜び楽しみにしていたけれど、彼はカティを妹のようにしか見てくれず他の女性と関係を持っていた。結婚すれば女として見てもらえると期待していたけれど結局なにも変わらず、女として愛されることを諦めたカティはトビアスに惚れ薬を飲ませ、そして離婚を切り出し家を出た。
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる