すべてはあなたの、望むまま。

ふまさ

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 ブライズは使用人に任せず、父親に頼み込み、自分の足で魔女のところに出向いた。

 魔女は、高額な報酬を用意すればどんな依頼も引き受ける、というわけではない。自分が気に入らない依頼なら、たとえどんなに金を払おうとも、受けてくれないという。


「いらっしゃいませ」

 森の奥深くにある一軒家にいたのは、若い、妖艶な女性だった。二十代後半、といったところか。年齢まで知らなかったブライズは、思っていたよりずっと若い魔女に驚いたが、そんなことを気にしている場合ではないと、出された飲み物にも手をつけず、依頼内容を説明した。


「──なるほど。婚約者の本音が聞きたい、と」

 椅子に腰掛けた魔女は終始、楽しそうに耳を傾けていた。人が落ち込んでいるのにと若干腹を立てていると、恋愛話が好物なのです、と魔女は心を読んだかのように微笑んだ。数秒間、考える素振りを見せたのち、魔女は口を開いた。

「ならば、王子様の望む世界を見せてあげるのはいかがでしょう?」

 提案されたものの、それがよく理解できなくて「どういう意味ですか?」と、ブライズは首をかしげた。魔女は、幻影魔法を使います、と答えた。

「幻影……」

「この魔法にかかった王子様は、自身が望む、心に思い描く世界──幻覚を見ます。ただ、その世界はわたしたちには見えないので」

 ふふふ。魔女が真っ赤な唇をあげて、笑う。

「端から見れば、王子様が一人で会話をしているようにしか見えないでしょうね」

「そ、そんなことで本当に、あの方がわたくしを本当に愛しているのかわかるのですか?」

「王子様が公爵令嬢様を愛し、浮気を疑われたくないと心から願っているのなら、きっと、あなたと愛し合う姿が見られると思いますよ?」

 だとしても、滑稽な姿には変わりないでしょうけど。魔女はこっそりと呟き、ほくそ笑む。

(他に方法がないわけではないけれど、これが一番おもしろそうだわ)

 そんな魔女の胸中など知るはずもないブライズは、わらにもすがる思いで、わかりました、と答えた。

「どのようなかたちでも構いません。わたくしはどうしても、どんな手段を用いようとも、あの方の本音が知りたいのです」


 まあ、素敵ですわ。魔女はにっこりと笑い、承りましたわ、と頭を垂れた。

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