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パーシーはいつもお茶をする応接室ではなく、二階にある自室へと、アデルを招いた。部屋にある椅子を引き「どうぞ」と、アデルにすすめてから、パーシーはテーブルを挟んだ正面の椅子に腰かけた。
「お茶をいれてきたいところなのですが、あいにくぼくは、あまり経験がなくてね。自信がないのですよ」
アデルが「……? 執事の方はおられないのですか?」と目を丸くする。パーシーは、ふっと目を伏せた。
「ええ……実は、ぼくがあなたを救いたいという気持ちが理解されず、カーラに婚約破棄されたあげく、使用人も全て、父上が連れ帰ってしまいまして……」
「そ、そんな……っ」
アデルは両手で口元を押さえると、目を潤ませた。
「あ、あたしのせいで……」
「いいえ。ぼくは、あなたを責める気はありません……ですがもう、どうしたらいいのかわからなくて」
「あ、あたしにできることはないでしょうか……?!」
「しかし……」
「あたしにできることなら、何でもします!」
パーシーは「──何でも?」と、ちらっとアデルを見た。アデルが「はい!」と答える。
「なら、ぼくの傷付いた心を癒してはくれませんか?」
「え、ど、どのようにすれば……」
パーシーは立ち上がると、アデルの手をとり、立ち上がらせた。流れるような仕草で軽く口付けすると、アデルを寝台に押し倒した。
アデルが目をぱちくりさせる。
「……パーシー様?」
「あなたがぼくに償える方法は一つですよ、アデル先輩──さて、どうします? ぼくを殴って逃げますか?」
アデルはしばらく黙考したあと、覚悟を決めたようにぎゅっと目をつぶった。
「……に、逃げません」
子爵令嬢が伯爵令息を殴るなど、できるわけがない。そんな思惑があったうえでの質問だった。
「なら、これは合意ということでよろしいですね」
パーシーはニヤリと口角をあげ、アデルの服に手をかけた。
「お茶をいれてきたいところなのですが、あいにくぼくは、あまり経験がなくてね。自信がないのですよ」
アデルが「……? 執事の方はおられないのですか?」と目を丸くする。パーシーは、ふっと目を伏せた。
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「そ、そんな……っ」
アデルは両手で口元を押さえると、目を潤ませた。
「あ、あたしのせいで……」
「いいえ。ぼくは、あなたを責める気はありません……ですがもう、どうしたらいいのかわからなくて」
「あ、あたしにできることはないでしょうか……?!」
「しかし……」
「あたしにできることなら、何でもします!」
パーシーは「──何でも?」と、ちらっとアデルを見た。アデルが「はい!」と答える。
「なら、ぼくの傷付いた心を癒してはくれませんか?」
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パーシーは立ち上がると、アデルの手をとり、立ち上がらせた。流れるような仕草で軽く口付けすると、アデルを寝台に押し倒した。
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