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 何事かと、パーシーは自室を出た。階段をくだる途中で、玄関ホールにいる複数の人物の顔をとらえたパーシーは、目を見張った。

 そこに立っていたのは、カーラと、カーラの父親であるヴェセリー伯爵。そして、パーシーの父親のペトロフ伯爵だった。

「父上? それに、ヴェセリー伯爵……どうして王都に……」

 カーラは無表情だったが、ヴェセリー伯爵と──特にペトロフ伯爵の目は、怒りのために吊り上がっていた。

「おはようございます、パーシー」

「お、はよう、カーラ。えと、これは……」

「はい。きちんとお話します。応接室をお借りしてもよいですか?」

「あ、ああ。それはもちろん、かまわないけど……」

「では、移動しましょう」

 すっとカーラが、優雅に応接室に足を向ける。ヴェセリー伯爵と、ペトロフ伯爵が、無言でそれに続く。ぽかんとするパーシーに、執事が困惑しながらも「お茶を用意してまいります」と告げ、厨房へ姿を消した。パーシーが遅れて応接室に入ると、ペトロフ伯爵に「お前はそこに立っていろ」と低音で命じられた。パーシーが目を丸くする。

「な、何故ですか。父上」

「自分の胸に聞いてみろ」

「良いではないですか、ペトロフ伯爵。これでは話しにくいですし」

 カーラがやんわり告げると、ペトロフ伯爵は「……仕方ないな」と吐き捨て、パーシーに、椅子に座ることを許可した。誰の隣でもない、ペトロフ伯爵の右斜め前にある椅子を指差して。

「カーラの隣では駄目なのですか?」

 不思議そうにパーシーが訊ねる。すると他でもないカーラが「わたしが嫌なので、駄目です」と、吐露した。

「…………え?」

 信じられない。パーシーがそういった目で、カーラを見つめる。ペトロフ伯爵はイライラしながら、早く座れと強く命じた。パーシーは訳がわからないまま、命じられた場所に、腰をおとした。
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