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「……ちょっと、なにそれ」

 代わりに口を挟んできたのは、マルヴィナだった。

「いい加減なこと言わないでくれます? アーノルド様が、こんな女を誘うわけ──」

「事実だけど?」

 アーノルドが強めの口調で、被さるように告げると、マルヴィナはぴたっと動きを止めた。それからゆるりと「……反対でしょう?」と、アーノルドを振り返った。

「なにが?」

「この女が、アーノルド様を誘ったのでは?」

「いや? わたしが、ミラベル嬢を昼食に誘った。断られたのは、これでもう、三度目だけどね」

「……理解できません」

 ぽかんと口を半開きにするマルヴィナに、アーノルドは「きみの理解なんか求めてないよ」と吐き捨て、オーブリーに視線を移した。

「ミラベル嬢は、きみとやり直すつもりはないそうだ。もう二度と、近付かないであげてくれ」

「……どうしてあなたにそんなことを言われなければならないんですか。ミラベルの幼なじみでも、恋人でもないくせに」

「見てわからないか? 彼女の顔色が、青ざめていることに。きみを、全身で拒絶しているんだ」

 オーブリーはちらっとミラベルを見てみた。確かに、顔色は悪い。でも、それがいつからかだったのか。オーブリーにはわからない。

「……拒絶されているのは、あなたでは?」

 見下した声色に、ミラベルは「いい加減にして!」と、涙目でオーブリーの左頬を平手打ちした。

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