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 その日の昼休み。

 ミラベルのクラスメイトたちからは睨まれ、元学友だけでなく、クラス中から距離をとられるようになってしまったオーブリーは、ひどく落ち込んでいた。

「オーブリー様。一緒に食堂に行きましょう」

 教室の扉からひょこっと顔を出し、にこやかに手を振るマルヴィナは、オーブリーには女神に見えた。「は、はい」と、オーブリーが、泣きそうになりながら駆け寄る。

「オーブリー様。明日の休日、デートしません?」

 食堂に向かう途中の廊下で、マルヴィナはそう提案してきた。すり寄ってきたマルヴィナの胸が、オーブリーの腕にあたる。

「い、いいですね。ぜひ」

 やっぱりぼくの選択は間違っていなかった。好みの顔をちらちら横目で見ながら、オーブリーが胸中で呟く。

「ふふ。なら、決まりですね。あたしを退屈させない、素敵なデートプランを考えてきてくださいね。でないとあたし、途中で帰っちゃいますから」

「……え?」

「やだ。なんですか、その間抜けな顔。そんなの、常識じゃないですか」

「……そうなんですか?」

 これまで。ミラベルとしかデートしたことのないオーブリーは、目を丸くした。

「紳士として、女性をエスコートするのは当然でしょう?」

「それは、そう、ですね」

「このあたしの婚約者になるのですから、相応の努力はしてもらわないと困りますよ? でないと、容赦なく捨てちゃいますから」

 ぴたっ。
 思わず足を止めたオーブリーに、マルヴィナは「冗談ですって」と、面倒くさそうにもらしてから、ニコッと口角を上げた。

「明日の初デート、楽しみにしていますね」

 絵画のような美しい笑みに、オーブリーは、はい、と頬を赤く染めた。

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