あなたがわたしを本気で愛せない理由は知っていましたが、まさかここまでとは思っていませんでした。

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「──なにしてるんですか！」

　オーブリーのミラベルのあいだに割って入ってきたのは、昨日、音楽室の前にいた女子生徒だった。ミラベルの前で両手を広げ、守るように立ち塞がる。

「昨日、あれだけ酷いことを言っていたくせに、ミラベル様に近付くなんて！　どうかしています！」

　オーブリーが「きみには関係ないだろう！」と叫ぶと、女子生徒はキッと睨み付けてきた。

「ミラベル様は、人見知りの私を気にかけ、優しく話しかけてきてくださったんです。恩人なんです。関係なくありません！」

「……ただのクラスメイトが出しゃばるな！　ぼくはミラベルの婚約者だ！」

　ぞっ。
　女子生徒は怒りより怖さが勝ったようで、背筋に冷たい汗が一筋垂れるのを感じた。

「あ、頭、おかしいんじゃないですか？　並んで歩くのが恥ずかしいだの、ぼくと別れたら生涯独身だのと脅し、あれだけミラベル様を侮辱して、暴言を並べ立てておいて……しかも、あの子爵令嬢と婚約するって宣言してましたよね？　なんかもう、怖いですよ……」

　化け物を見るかのような双眸に、オーブリーの右手が知らず、振り上げられていた。