わたしにはもうこの子がいるので、いまさら愛してもらわなくても結構です。

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　ハワードが、リネットを好きなところ。

　容姿もだが、なにより、ハワードにベタ惚れしていて、周りの意見に流させることなく、信じてくれること。

　女好きなハワードにとって、不倫は生きる糧だ。止められない。だからこそ、リネットの存在はとてもありがたかった。少し甘い言葉をかけ、傍にいてやれば、それだけで幸せそうな顔をする、お手軽な妻。

「ったく。せっかくこのぼくがデートしてやるって言ったのに、断るとは」

　馬車内で、ぷりぷり怒るハワード。しかし怒りの時間が過ぎてしまえば、少しだけ冷静になることができた。

　これまでとは明らかに様子も態度もおかしかったリネットに、僅かながらに危機感を覚えたハワードは、仕方ない、とため息をついた。

「まあ、妊娠してからあまりかまってあげてなかったし、今日はどこにも寄らず、真っ直ぐ屋敷に帰ってあげることにするか」

　歓喜するリネットの姿が目に浮かび、ハワードは簡単な奴で助かると、口角を上げた。



　リネットへの暴言は知らずとも、屋敷にいる者はみな、ハワードの不倫を確信していた。ハワードへの嫌悪感はもちろん、それに対して疑うことも咎めることもしないリネットへも、呆れとモヤモヤした気持ちを抱えていた使用人たち。

　でも、ここ数日。見送りも出迎えもしないリネット。しかも今朝、朝食にもデートにも誘ったのに断られたと怒るハワードの言葉に、使用人たちは、ついに、と静かに心を震わせていた。

　ルシアンお坊ちゃま効果？

　屋敷内がそわそわとし出す中。ちょうど夕食時に、いつもよりだいぶ早く、ハワードが屋敷に戻ってきた。