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「クラリッサはとにかくお前と別れられれば慰謝料はいらん、という考えだったらしいが、そうはさせん。不貞行為についてはもちろん、これまで貴様がクラリッサに与えてきた精神的苦痛に対しても、慰謝料を請求させてもらう」

 モンテス伯爵が告げると、ベイジルは「精神的苦痛って」と、苦笑した。

「流石に大袈裟では」

「ああ、理解せんでいい。どうやらお前の思考回路では理解不能らしいからな」

 会話を放棄したモンテス伯爵は、ロペス伯爵に顔を向けた。ロペス伯爵が、心得たとばかりに言葉を引き継ぐ。

「わかっているだろうが、私も誰も肩代わりはしない。自分で稼いで、自分で支払え。クラリッサは分割でかまわないと申し出てくれたからな。感謝して、慰謝料を支払うことだけに生涯を捧げろ」

 ここにきてはじめて、ベイジルは狼狽えた。

「ま、待ってください! ぼくはまだ学生で、個人資産なんてないし、払えるわけないじゃないですか!!」

「だから、働けと言っている」

「学園に通いながら働けと?」
  
 アホすぎる。ロペス伯爵は頭痛がした。

「……馬鹿め。貴様をロペス伯爵家から除籍することはもう決定している。他人のために支払う学費などないから、お前はもう、学園には通えんよ。よかったな。心置きなく、働くことに専念できるぞ」

「除籍……?」

 想像すらしていなかったのか。ベイジルは息すら忘れ、固まった。

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