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「モンテス伯爵、モンテス伯爵夫人、そして父上。クラリッサとそこにいる子爵令嬢からなにを聞かされたのかは知りませんが、すべて誤解です。事実ではありません」

「──貴様っ」

 こぶしを震わせ叫ぶロペス伯爵をやんわり制止したのは、クラリッサだった。

「ロペス伯爵。わたし、ベイジルの言い分を最後まで聞いてみたいです」

 その台詞に、ベイジルがこそっとほくそ笑む。なんだかんだ言って、やはりぼくと別れたくないのだろう。そう解釈したからだ。

「感謝するよ、クラリッサ。ぼくを置いて先に行ってしまったのは哀しかったけど、すべてはぼくの幸せのためにしたことだもんね。許すよ」

 まあ。クラリッサが口元を歪ませる。

「許す、だなんて。相変わらずの上から目線ですね」

 ベイジルは数秒固まったあと「……ん?」と、心底不思議そうにクラリッサを見詰めていたが、クラリッサに、続きを、と促され、はっとした。

「え、えと。クラリッサにはもう言いましたが、ぼくがそこの子爵令嬢と関係を持った事実はありません。すべては、彼女の妄想です」

 すかさずクラリッサが「え? 浮気は認めると、わたしにはっきりおっしゃいましたよね?」と詰め寄ると、ベイジルは目を丸くした。

 クラリッサはベイジルの言葉に、決して逆らったりしないと思い込んでいたからだ。

「い、言ってないよ。きみ、ショックで記憶が混乱してるんじゃないかな」

「ショックだなんて、そんな。わたしはあなたがネリーさんと愛し合っていると聞いて歓喜したので、それは絶対にありえません」

「かん……え?」

 言葉の意味を理解できなかったようで、ベイジルはわかりやすく、頭に疑問符を浮かべていた。

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