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喫茶店の窓際の二人席に、向かい合わせで座る。甘い物は好きかどうか。ちゃんとエミリアに確認してから、クリフトンは店員を呼び、二人分の注文してくれた。
(……紳士的過ぎる)
人の美醜にこれまであまり関心をもってこなかったエミリアだったが、顔もよくて、中身まで隙のない人を目の前に、改めて思ってしまった。
(わたしはどうしてあんなにアンガスに執着していたんだろう……)
優しかったころのアンガスならともかく、シンディーと比べはじめ、酷い言葉を投げかけられるようになってからも、捨てられるのが、嫌われるのが怖くて。だから耐えて、努力して。
振り返るたび、あまりに馬鹿馬鹿しくて、激しい羞恥心にかられた。
クリフトンから、アンガスが騎士の称号を剥奪され、鞭打ちの刑に処されると聞いたときも、エミリアの心はなにも揺れなかった。同情の心すら生まれなくて。
「そうなんですね」
けろっと答えるエミリアに、クリフトンが口元を手で隠したのが見えて、エミリアは、まずかったかな、と思いつつ、正直な気持ちを打ち明けた。
「すみません。あんなのでも元夫なのですから、他のことはともかく、鞭打ちのことだけでも心配すべきなのかもしれませんが……もう本当に、どうでもよくて」
「ああ、いや。なにも謝ることなんてありませんよ。当然のことだと思いますし」
「ですが……なんだか、引いてません?」
クリフトンは口元を知らぬ間に手で覆っていたことに気付き、ああ、と苦笑した。
「あいつの思考がそもそもおかしいので、比べることじたい間違っているのですが。あまりの温度差に、思わず笑ってしまいました」
「あ、笑っていたのですね」
「不躾でしたね。すみません」
「いえ。あの、温度差って?」
クリフトンから伝えられたアンガスの台詞に、エミリアは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「鞭打ちがわたしのせいで、それを知ったわたしは責任を感じ、泣いてしまう、ですか……」
「アンガスはそう言っていましたね」
エミリアは「……あの男の思考回路は、どうなっているのでしょう」と、膝の上に置いたこぶしをぎゅっと握った。
「……もうあの男は、わたしに興味なんてないと高をくくっていましたが。もしかして、逆恨みで殺されるなんてことも、あり得るのでしょうか」
エミリアの不安に、クリフトンが優しく応じる。
「それに関しては、安心してもらっていいかと。あいつはこの街から追放されることが決定しましたから。生涯、この街に立ち入ることは許されません」
「ほ、本当ですか?」
「はい」
「では、この街にいる限り、あの男と顔を合わせることはもうないってことですか?」
力強く、クリフトンが頷く。心からほっと胸をなで下ろしたエミリアは、身体中から力を抜いた。
「……よかった。これでもう、シンディーさんを怖い目に合わせることも、なくなったってことですよね」
その言葉に、クリフトンは嬉しそうに頬を緩めた。
(……紳士的過ぎる)
人の美醜にこれまであまり関心をもってこなかったエミリアだったが、顔もよくて、中身まで隙のない人を目の前に、改めて思ってしまった。
(わたしはどうしてあんなにアンガスに執着していたんだろう……)
優しかったころのアンガスならともかく、シンディーと比べはじめ、酷い言葉を投げかけられるようになってからも、捨てられるのが、嫌われるのが怖くて。だから耐えて、努力して。
振り返るたび、あまりに馬鹿馬鹿しくて、激しい羞恥心にかられた。
クリフトンから、アンガスが騎士の称号を剥奪され、鞭打ちの刑に処されると聞いたときも、エミリアの心はなにも揺れなかった。同情の心すら生まれなくて。
「そうなんですね」
けろっと答えるエミリアに、クリフトンが口元を手で隠したのが見えて、エミリアは、まずかったかな、と思いつつ、正直な気持ちを打ち明けた。
「すみません。あんなのでも元夫なのですから、他のことはともかく、鞭打ちのことだけでも心配すべきなのかもしれませんが……もう本当に、どうでもよくて」
「ああ、いや。なにも謝ることなんてありませんよ。当然のことだと思いますし」
「ですが……なんだか、引いてません?」
クリフトンは口元を知らぬ間に手で覆っていたことに気付き、ああ、と苦笑した。
「あいつの思考がそもそもおかしいので、比べることじたい間違っているのですが。あまりの温度差に、思わず笑ってしまいました」
「あ、笑っていたのですね」
「不躾でしたね。すみません」
「いえ。あの、温度差って?」
クリフトンから伝えられたアンガスの台詞に、エミリアは苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「鞭打ちがわたしのせいで、それを知ったわたしは責任を感じ、泣いてしまう、ですか……」
「アンガスはそう言っていましたね」
エミリアは「……あの男の思考回路は、どうなっているのでしょう」と、膝の上に置いたこぶしをぎゅっと握った。
「……もうあの男は、わたしに興味なんてないと高をくくっていましたが。もしかして、逆恨みで殺されるなんてことも、あり得るのでしょうか」
エミリアの不安に、クリフトンが優しく応じる。
「それに関しては、安心してもらっていいかと。あいつはこの街から追放されることが決定しましたから。生涯、この街に立ち入ることは許されません」
「ほ、本当ですか?」
「はい」
「では、この街にいる限り、あの男と顔を合わせることはもうないってことですか?」
力強く、クリフトンが頷く。心からほっと胸をなで下ろしたエミリアは、身体中から力を抜いた。
「……よかった。これでもう、シンディーさんを怖い目に合わせることも、なくなったってことですよね」
その言葉に、クリフトンは嬉しそうに頬を緩めた。
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