理想の妻とやらと結婚できるといいですね。

※以前短編で投稿したものを、長編に書き直したものです。


 それは、突然のことだった。少なくともエミリアには、そう思えた。

「手、随分と荒れてるね。ちゃんとケアしてる?」

 ある夕食の日。夫のアンガスが、エミリアの手をじっと見ていたかと思うと、そんなことを口にした。心配そうな声音ではなく、不快そうに眉を歪めていたので、エミリアは数秒、固まってしまった。

「えと……そう、ね。家事は水仕事も多いし、どうしたって荒れてしまうから。気をつけないといけないわね」

「なんだいそれ、言い訳? 女としての自覚、少し足りないんじゃない?」

 エミリアは目を見張った。こんな嫌味なことを面と向かってアンガスに言われたのははじめてだったから。

 どうしたらいいのかわからず、ただ哀しくて、エミリアは、ごめんなさいと謝ることしかできなかった。

 それがいけなかったのか。アンガスの嫌味や小言は、日を追うごとに増していった。


「化粧してるの? いくらここが家だからって、ぼくがいること忘れてない?」

「お弁当、手抜きすぎじゃない? あまりに貧相で、みんなの前で食べられなかったよ」

「髪も肌も艶がないし、きみ、いくつ? まだ二十歳前だよね?」


 などなど。



 あまりに哀しく、腹が立ったので「わたしなりに頑張っているのに、どうしてそんな酷いこと言うの?」と、反論したエミリアに、アンガスは。

「ぼくを愛しているなら、もっと頑張れるはずだろ?」

 と、呆れたように言い捨てた。

24h.ポイント 93,337pt
8,247
小説 12 位 / 191,576件 恋愛 12 位 / 57,712件

あなたにおすすめの小説

【完結】今更告白されても困ります!

夜船 紡
恋愛
少女は生まれてまもなく王子の婚約者として選ばれた。 いつかはこの国の王妃として生きるはずだった。 しかし、王子はとある伯爵令嬢に一目惚れ。 婚約を白紙に戻したいと申し出る。 少女は「わかりました」と受け入れた。 しかし、家に帰ると父は激怒して彼女を殺してしまったのだ。 そんな中で彼女は願う。 ーーもし、生まれ変われるのならば、柵のない平民に生まれたい。もし叶うのならば、今度は自由に・・・ その願いは聞き届けられ、少女は平民の娘ジェンヌとなった。 しかし、貴族に生まれ変わった王子に見つかり求愛される。 「君を失って、ようやく自分の本当の気持ちがわかった。それで、追いかけてきたんだ」

【完結】孕まないから離縁?喜んで!

ユユ
恋愛
嫁いだ先はとてもケチな伯爵家だった。 領地が隣で子爵の父が断れなかった。 結婚3年。義母に呼び出された。 3年も経つのに孕まない私は女ではないらしい。 石女を養いたくないそうだ。 夫は何も言わない。 その日のうちに書類に署名をして王都に向かった。 私は自由の身になったのだ。 * 作り話です * キチ姑います

意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei
恋愛
「セドリック様が悪いのですわ!」 「そうか?」 婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか! 「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」 その後意地を張っていたら6年もたってしまっていた二人の話。

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

【完結】妹?義妹ですらありませんけど?~王子様とは婚約破棄して世界中の美味しいものが食べたいですわ~

恋愛
エリシャ・エストルムが婚約しているのはジャービー国の第二王子ギース。 ギースには、婚約者を差し置いて仲の良い女性がいる。 それはピオミルという女性なのだがーー 「ピオミル・エストルムです」 「……エストルム?」 「お姉様!」 「だから、あなたの姉ではーー」 シュトルポジウム侯爵であるシュナイダー・エストルムが連れてきた親子、母パニラと娘ピオミル。 エリシャを姉と呼びエストルム姓を名乗るピオミルだが、パニラは後妻でもないしピオミルは隠し子でも養女でもない。 国教の危険地域を渡り歩くポジウム侯爵は、亡き妻にそっくりなエリシャと顔を合わせるのがつらいといってエストルム邸には帰らない。 いったい、この親子はなんなのか……周りの一同は首を傾げるばかりだった。 -------------------------------------- ※軽い気持ちでバーっと読んでくださいね。 ※設定は独自のものなので、いろいろおかしいと思われるところがあるかもしれませんが、あたたか~い目で見てくださいませ。 ※作者の妄想異世界です。 ※敬語とか?尊敬語とか?おかしいところは目をつぶってください。 ※似たりよったり異世界令嬢物語ですが完全オリジナルです。 ※酷評に耐性がないのでコメントは際限まで温めてからお願いします。 2023年11月18日 完結 ありがとうございました。 第二章は構想はありますがまだ書いていないので、すぐに更新はされません。 書けたらUPします! 感想たくさんありがとうございました。 ジャデリアが話していた相手がだれかというご質問が多かったですが、そこは想像してほしいので明記していません。ヒントは結構前の話にあります。 完結してから読む派のかたもいらっしゃいますので、ぼかしておきます。 本当に、たくさんの感想、ありがとうございました!

【完結】要らない私は消えます

かずき りり
恋愛
虐げてくる義母、義妹 会わない父と兄 浮気ばかりの婚約者 どうして私なの? どうして どうして どうして 妃教育が進むにつれ、自分に詰め込まれる情報の重要性。 もう戻れないのだと知る。 ……ならば…… ◇ HOT&人気ランキング一位 ありがとうございます((。´・ω・)。´_ _))ペコリ  ※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています

旦那様に離婚を突きつけられて身を引きましたが妊娠していました。

ゆらゆらぎ
恋愛
ある日、平民出身である侯爵夫人カトリーナは辺境へ行って二ヶ月間会っていない夫、ランドロフから執事を通して離縁届を突きつけられる。元の身分の差を考え気持ちを残しながらも大人しく身を引いたカトリーナ。 実家に戻り、兄の隣国行きについていくことになったが隣国アスファルタ王国に向かう旅の途中、急激に体調を崩したカトリーナは医師の診察を受けることに。