聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。

ふまさ

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「おお、アーリン! 久しいな。何だかずいぶんと……その、魅力的になったな」

 謁見の間にルーファスと共に入ってきたアーリンを目にしたショーンは、上から下まで値踏みするようにアーリンを眺めると、驚いたように目を白黒させた。

 痩せ細っていた身体は平均的な体重となり、清楚な服に身を包んだアーリンは、テンサンド王国にいたころとは見違えるようだった。

 ショーンのねっとりした視線に、アーリンの全身に鳥肌が立った。隣に立つルーファスの服の裾を、無意識に軽く握る。ショーンがそれに気付くはずもなく、近付いてきた。

「聞いてくれ、アーリン。ベリンダを覚えているか? そう、ぼくの婚約者だった女だ。あいつは自分が聖女だと、嘘をついていたんだ。そのせいで結界がなくなり、テンサンド王国は何十、何百もの魔物に襲われている」

 間近に迫ってきたショーンに、アーリンは一歩、後退りした。ショーンは興奮気味に続ける。

「喜べ。父上も、国民も、みながお前の帰りを待っている。孤児で平民のお前が、国に必要とされているんだ。これほど名誉で誇れることはないだろう? なに、心配するな。クリーシャー王国の国王は、お前が望めば、テンサンド王国に帰ってもよいと約束してくれた──さあ!」

 ショーンがアーリンの腕を掴もうとした。アーリンが「……ひっ」と小さく悲鳴をあげたので、ルーファスはショーンの腕を掴み、それを阻止した。ショーンがルーファスを睨みつける。

「ルーファス殿。邪魔をしないでいただきたい」

「それは無理な話しだ。怯える恋人をほうっておく男がどこにいる」

 ショーンは「はあ?」と、間抜け面で口を半開きにした。

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