26 / 31
26
しおりを挟む
「おお、アーリン! 久しいな。何だかずいぶんと……その、魅力的になったな」
謁見の間にルーファスと共に入ってきたアーリンを目にしたショーンは、上から下まで値踏みするようにアーリンを眺めると、驚いたように目を白黒させた。
痩せ細っていた身体は平均的な体重となり、清楚な服に身を包んだアーリンは、テンサンド王国にいたころとは見違えるようだった。
ショーンのねっとりした視線に、アーリンの全身に鳥肌が立った。隣に立つルーファスの服の裾を、無意識に軽く握る。ショーンがそれに気付くはずもなく、近付いてきた。
「聞いてくれ、アーリン。ベリンダを覚えているか? そう、ぼくの婚約者だった女だ。あいつは自分が聖女だと、嘘をついていたんだ。そのせいで結界がなくなり、テンサンド王国は何十、何百もの魔物に襲われている」
間近に迫ってきたショーンに、アーリンは一歩、後退りした。ショーンは興奮気味に続ける。
「喜べ。父上も、国民も、みながお前の帰りを待っている。孤児で平民のお前が、国に必要とされているんだ。これほど名誉で誇れることはないだろう? なに、心配するな。クリーシャー王国の国王は、お前が望めば、テンサンド王国に帰ってもよいと約束してくれた──さあ!」
ショーンがアーリンの腕を掴もうとした。アーリンが「……ひっ」と小さく悲鳴をあげたので、ルーファスはショーンの腕を掴み、それを阻止した。ショーンがルーファスを睨みつける。
「ルーファス殿。邪魔をしないでいただきたい」
「それは無理な話しだ。怯える恋人をほうっておく男がどこにいる」
ショーンは「はあ?」と、間抜け面で口を半開きにした。
謁見の間にルーファスと共に入ってきたアーリンを目にしたショーンは、上から下まで値踏みするようにアーリンを眺めると、驚いたように目を白黒させた。
痩せ細っていた身体は平均的な体重となり、清楚な服に身を包んだアーリンは、テンサンド王国にいたころとは見違えるようだった。
ショーンのねっとりした視線に、アーリンの全身に鳥肌が立った。隣に立つルーファスの服の裾を、無意識に軽く握る。ショーンがそれに気付くはずもなく、近付いてきた。
「聞いてくれ、アーリン。ベリンダを覚えているか? そう、ぼくの婚約者だった女だ。あいつは自分が聖女だと、嘘をついていたんだ。そのせいで結界がなくなり、テンサンド王国は何十、何百もの魔物に襲われている」
間近に迫ってきたショーンに、アーリンは一歩、後退りした。ショーンは興奮気味に続ける。
「喜べ。父上も、国民も、みながお前の帰りを待っている。孤児で平民のお前が、国に必要とされているんだ。これほど名誉で誇れることはないだろう? なに、心配するな。クリーシャー王国の国王は、お前が望めば、テンサンド王国に帰ってもよいと約束してくれた──さあ!」
ショーンがアーリンの腕を掴もうとした。アーリンが「……ひっ」と小さく悲鳴をあげたので、ルーファスはショーンの腕を掴み、それを阻止した。ショーンがルーファスを睨みつける。
「ルーファス殿。邪魔をしないでいただきたい」
「それは無理な話しだ。怯える恋人をほうっておく男がどこにいる」
ショーンは「はあ?」と、間抜け面で口を半開きにした。
389
お気に入りに追加
4,413
あなたにおすすめの小説

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

精霊の愛し子が濡れ衣を着せられ、婚約破棄された結果
あーもんど
恋愛
「アリス!私は真実の愛に目覚めたんだ!君との婚約を白紙に戻して欲しい!」
ある日の朝、突然家に押し掛けてきた婚約者───ノア・アレクサンダー公爵令息に婚約解消を申し込まれたアリス・ベネット伯爵令嬢。
婚約解消に同意したアリスだったが、ノアに『解消理由をそちらに非があるように偽装して欲しい』と頼まれる。
当然ながら、アリスはそれを拒否。
他に女を作って、婚約解消を申し込まれただけでも屈辱なのに、そのうえ解消理由を偽装するなど有り得ない。
『そこをなんとか······』と食い下がるノアをアリスは叱咤し、屋敷から追い出した。
その数日後、アカデミーの卒業パーティーへ出席したアリスはノアと再会する。
彼の隣には想い人と思われる女性の姿が·····。
『まだ正式に婚約解消した訳でもないのに、他の女とパーティーに出席するだなんて·····』と呆れ返るアリスに、ノアは大声で叫んだ。
「アリス・ベネット伯爵令嬢!君との婚約を破棄させてもらう!婚約者が居ながら、他の男と寝た君とは結婚出来ない!」
濡れ衣を着せられたアリスはノアを冷めた目で見つめる。
······もう我慢の限界です。この男にはほとほと愛想が尽きました。
復讐を誓ったアリスは────精霊王の名を呼んだ。
※本作を読んでご気分を害される可能性がありますので、閲覧注意です(詳しくは感想欄の方をご参照してください)
※息抜き作品です。クオリティはそこまで高くありません。
※本作のざまぁは物理です。社会的制裁などは特にありません。
※hotランキング一位ありがとうございます(2020/12/01)

【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。

素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?
長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。
王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、
「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」
あることないこと言われて、我慢の限界!
絶対にあなたなんかに王子様は渡さない!
これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー!
*旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。
*小説家になろうでも掲載しています。

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

純白の牢獄
ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる