真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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「あなた、一度でも、エディとミア嬢に罪悪感を抱いたことはありますか?」

「? あたし、あの二人になにも悪いことなんてしていません……罪悪感を抱く必要なんて」

「わたくしはね。エディとミア嬢を、とくに好いていたわけではありません。けれど、同情はしていました」

「同情って……可哀想なのは、あたしです。大好きだったお兄様に、あたしに優しくしてくれていたのは、お父様に脅されていたからだなんて言われて……心が、張り裂けそうでした」

「エディが脅されていたのは、可哀想ではないのですか?」

「脅されていたなんて、大袈裟です。きっとお父様は、お兄様に、あたしを大事にしてほしかっただけで」

「ああ言えば、こう言う。本当にあなたは、人を不快にさせる天才ですね。苛々します」

 コーリーが傷付いたと言わんばかりに、顔を歪ませた。ルソー伯爵が、可哀想にと、コーリーの肩をそっと抱き寄せる。

「こいつには、人の心がないんだ。諦めよう、コーリー」

「……お父様、でも、お母様もお兄様もいなくなったら、あたしっ」

「お前には、私がいる。そして私には、お前がいる。それで充分だ」

(妻と子どもを脅迫していた張本人が、人の心がないとは、逆に笑えるわ)

 そしてそれを聞いてもなお、父親をかばい、一番可哀想なのは自分だと嘆く娘。なんてお似合いの親子なのかしら。

 ルソー伯爵夫人は口には出さず、それらをそっと胸中で吐き捨てると、今度こそ振り返ることなく、その場をあとにした。

 お母様。
 背後から泣き声が響いたけれど、ルソー伯爵夫人の心は、ちらりとも動かなかった。



 ♢♢♢♢♢



 ふっと瞼を開けたミアは、寝起きにしても、やけに頭がぼんやりしているなと感じながら、身体は動かさず、目線だけを左右に動かした。

「……あれ?」

 ここは、王都にある屋敷ではなく、両親が住む屋敷にある自室だと気付いたミアは、ゆっくりと上半身を起こした。

 窓からもれる朝の光に、手をかざす。

「……朝、なの?」

 記憶をたぐり寄せ、ミアが首を傾げる。おかしい。確か、最後の記憶では、空は紅く染まっていて、王都にある自室で、コーリーと話しをしていたはずなのに。

 コンコン。コンコン。

 ノックの音にはっと我に返ったミアは慌てて「は、はい」と答えた。

「エディだけど、入ってもいいかな」

 扉の向こうから聞こえた声色に、ミアは心が熱くなった。

(……エディ!)

 寝台から飛び出し、急いで扉を開けた。驚いたように目を丸くしたエディが、そこにはいた。

「びっくりした。えと……」


「エディ! コ、コーリーと付き合うのですか?」

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