あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

ふまさ

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 ──その後。

 連絡を受けたダレルとバーサの父親は、すぐにアルマンド伯爵の元に飛んできた。土下座し、恥も外聞も捨て、申し訳ありませんとただひたすら謝罪した。

 アレクシアの精神的苦痛も含めた慰謝料を減額する気はない、と断言しつつ、アルマンド伯爵は、一括ではなく、分割を認めた。

「──ただし。これが一日でも遅れることがあったら、残りは全て、一括で支払ってもらう」

 二人の父親は、わかりました、と書類に署名した。オリバー伯爵は、馬鹿なプライドなど捨て、息子に我が家の経済状況を教えていればと、最後まで泣いていた。


「本当にこれで良かったのか?」
 
 屋敷の主の自室にて。アルマンド伯爵がたずねると、アレクシアは、はい、と笑った。一括ではなく分割でとアルマンド伯爵に進言したのは、アレクシアだった。

 アルマンド伯爵は、椅子の背もたれに体重を預け、目の前に立つ娘を改めて見た。

「……甘いな」

「だって、オリバー伯爵は、お父様とお母様の命の恩人なのでしょう?」

 アルマンド伯爵が、ふん、と鼻をならす。一回目の支払いは滞りなくされたが、これから先、オリバー伯爵家がどうなるかはわからない。ただでさえ厳しい経済状況が、悪化したのだ。だからと言って、もう、情けをかけるつもりは毛頭ない。

「だが、バーサという女の家には、何の恩もない」

「ですが、あの方のおかげでダレルの本性が知れたわけですし」

 アルマンド伯爵は、はあ、とため息をついた。

「……今回のこと。あの小僧の本性を見抜けなかった私にも、責任はある。だからこそ、お前の提案を受け入れたわけだが」

「はい。ありがとうございます」

 にっこり。アレクシアが微笑む。アルマンド伯爵はもう一度、深くため息をついた。

「……もうすぐお前の社交界デビューだな」

「はい」

「好いた相手はできたか?」

 アレクシアは、いいえ、と小さく頭をふってから、口を開いた。

「ですから、可能ならば、またお父様に相手を探していただきたいなと」

 アルマンド伯爵は、ゆっくりと面をあげた。

「……いいのか?」

「ええ。お父様のこと、信用していますから」

 それに、と。アレクシアは口元を緩めた。

「政略結婚だからと言って、愛がうまれないとは、限りませんから」

 ですよね?
 アレクシアが問うと、アルマンド伯爵は観念したように、そうだな、と小さく笑った。



             ─おわり─

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