6 / 11
6
しおりを挟む
屋敷に着くなり、アレクシアは出迎えてくれた侍女に詰め寄った。
「お父様は?!」
「え? さ、さきほど、お帰りになられましたが……」
「どこにいるの?!」
「じ、自室でお着替えをされているかと……」
「わかったわ。ありがとう」
アレクシアが二階へと続く階段に足を向ける。アレクシアの横顔を見て、侍女は、頬が赤くなっていることに気付いた。
「アレクシアお嬢様? 左頬が、赤くなっているようですが……」
「え? ああ、これは……ダレルに打たれて」
「?! ダレル様にですか? ど、どうして」
「──騒がしいな」
階段上からふってきた声は、アレクシアの父親である、アルマンド伯爵のものだった。その横には、アルマンド伯爵夫人もいた。
「お父様、お母様」
ほっとしたように胸をなで下ろした娘の様子に、両親たちは首を傾げた。
「いったい、どうしたというのだ」
「何かあったの?」
アレクシアは、はい、と頷き、はやる気持ちを抑え、口火を切った。
「……何だ、それは。無茶苦茶ではないかっ」
話しを聞き終えたアルマンド伯爵は、苦虫をかみつぶしたように顔を歪めた。隣ではアルマンド伯爵夫人も、似たような顔をしている。
「アレクシア。どうしてもっと早く報告しなかったんだ!」
アルマンド伯爵に詰め寄られたアレクシアは、戸惑った。
「……で、ですが。これでも最速で」
「今回のことではない。お前、ダレルとはうまくいっていると言っていたではないか。ダレルとデートだと休日出掛けていたのは、嘘だったのか?」
「……それは……申し訳ありません。お父様が選んだ方なので、うまくいっていないなどと、言いたくなくて……」
そのとき。
ドアノッカーを叩く音が玄関ホールに響いた。集まっていた全員が、扉に注目する。アルマンド伯爵に目配せをされた侍女が、こくりと頷いた。
「どなたでしょうか?」
侍女の問いかけに、扉を隔てた向こう側から、ダレルです、との返答があった。
アルマンド伯爵の眼光が鋭く光る。
「私が対応する。お前たちは、ここで待っていなさい」
そう告げると、アルマンド伯爵は、扉を開けた。
「お父様は?!」
「え? さ、さきほど、お帰りになられましたが……」
「どこにいるの?!」
「じ、自室でお着替えをされているかと……」
「わかったわ。ありがとう」
アレクシアが二階へと続く階段に足を向ける。アレクシアの横顔を見て、侍女は、頬が赤くなっていることに気付いた。
「アレクシアお嬢様? 左頬が、赤くなっているようですが……」
「え? ああ、これは……ダレルに打たれて」
「?! ダレル様にですか? ど、どうして」
「──騒がしいな」
階段上からふってきた声は、アレクシアの父親である、アルマンド伯爵のものだった。その横には、アルマンド伯爵夫人もいた。
「お父様、お母様」
ほっとしたように胸をなで下ろした娘の様子に、両親たちは首を傾げた。
「いったい、どうしたというのだ」
「何かあったの?」
アレクシアは、はい、と頷き、はやる気持ちを抑え、口火を切った。
「……何だ、それは。無茶苦茶ではないかっ」
話しを聞き終えたアルマンド伯爵は、苦虫をかみつぶしたように顔を歪めた。隣ではアルマンド伯爵夫人も、似たような顔をしている。
「アレクシア。どうしてもっと早く報告しなかったんだ!」
アルマンド伯爵に詰め寄られたアレクシアは、戸惑った。
「……で、ですが。これでも最速で」
「今回のことではない。お前、ダレルとはうまくいっていると言っていたではないか。ダレルとデートだと休日出掛けていたのは、嘘だったのか?」
「……それは……申し訳ありません。お父様が選んだ方なので、うまくいっていないなどと、言いたくなくて……」
そのとき。
ドアノッカーを叩く音が玄関ホールに響いた。集まっていた全員が、扉に注目する。アルマンド伯爵に目配せをされた侍女が、こくりと頷いた。
「どなたでしょうか?」
侍女の問いかけに、扉を隔てた向こう側から、ダレルです、との返答があった。
アルマンド伯爵の眼光が鋭く光る。
「私が対応する。お前たちは、ここで待っていなさい」
そう告げると、アルマンド伯爵は、扉を開けた。
488
お気に入りに追加
2,253
あなたにおすすめの小説

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜
流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。
偶然にも居合わせてしまったのだ。
学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。
そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。
「君を女性として見ることが出来ない」
幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。
その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。
「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」
大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。
そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。
※
ゆるふわ設定です。
完結しました。
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。

【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様
鏑木 うりこ
恋愛
マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!
わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。
なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?
あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?
シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。

婚約破棄されましたが気にしません
翔王(とわ)
恋愛
夜会に参加していたらいきなり婚約者のクリフ王太子殿下から婚約破棄を宣言される。
「メロディ、貴様とは婚約破棄をする!!!義妹のミルカをいつも虐げてるらしいじゃないか、そんな事性悪な貴様とは婚約破棄だ!!」
「ミルカを次の婚約者とする!!」
突然のことで反論できず、失意のまま帰宅する。
帰宅すると父に呼ばれ、「婚約破棄されたお前を置いておけないから修道院に行け」と言われ、何もかもが嫌になったメロディは父と義母の前で転移魔法で逃亡した。
魔法を使えることを知らなかった父達は慌てるが、どこ行ったかも分からずじまいだった。

【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています


魅了魔法にかかって婚約者を死なせた俺の後悔と聖夜の夢
鍋
恋愛
『スカーレット、貴様のような悪女を王太子妃にするわけにはいかん!今日をもって、婚約を破棄するっ!!』
王太子スティーヴンは宮中舞踏会で婚約者であるスカーレット・ランドルーフに婚約の破棄を宣言した。
この、お話は魅了魔法に掛かって大好きな婚約者との婚約を破棄した王太子のその後のお話。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※魔法のある異世界ですが、クリスマスはあります。
※ご都合主義でゆるい設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる