あなたを愛していないわたしは、嫉妬などしませんよ?

ふまさ

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 屋敷に着くなり、アレクシアは出迎えてくれた侍女に詰め寄った。

「お父様は?!」

「え? さ、さきほど、お帰りになられましたが……」

「どこにいるの?!」

「じ、自室でお着替えをされているかと……」

「わかったわ。ありがとう」

 アレクシアが二階へと続く階段に足を向ける。アレクシアの横顔を見て、侍女は、頬が赤くなっていることに気付いた。

「アレクシアお嬢様? 左頬が、赤くなっているようですが……」

「え? ああ、これは……ダレルに打たれて」

「?! ダレル様にですか? ど、どうして」

「──騒がしいな」

 階段上からふってきた声は、アレクシアの父親である、アルマンド伯爵のものだった。その横には、アルマンド伯爵夫人もいた。

「お父様、お母様」

 ほっとしたように胸をなで下ろした娘の様子に、両親たちは首を傾げた。

「いったい、どうしたというのだ」

「何かあったの?」

 アレクシアは、はい、と頷き、はやる気持ちを抑え、口火を切った。



「……何だ、それは。無茶苦茶ではないかっ」

 話しを聞き終えたアルマンド伯爵は、苦虫をかみつぶしたように顔を歪めた。隣ではアルマンド伯爵夫人も、似たような顔をしている。

「アレクシア。どうしてもっと早く報告しなかったんだ!」

 アルマンド伯爵に詰め寄られたアレクシアは、戸惑った。

「……で、ですが。これでも最速で」

「今回のことではない。お前、ダレルとはうまくいっていると言っていたではないか。ダレルとデートだと休日出掛けていたのは、嘘だったのか?」

「……それは……申し訳ありません。お父様が選んだ方なので、うまくいっていないなどと、言いたくなくて……」

 そのとき。

 ドアノッカーを叩く音が玄関ホールに響いた。集まっていた全員が、扉に注目する。アルマンド伯爵に目配せをされた侍女が、こくりと頷いた。

「どなたでしょうか?」

 侍女の問いかけに、扉を隔てた向こう側から、ダレルです、との返答があった。

 アルマンド伯爵の眼光が鋭く光る。

「私が対応する。お前たちは、ここで待っていなさい」

 そう告げると、アルマンド伯爵は、扉を開けた。

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