上 下
38 / 41

38

しおりを挟む
「フィオナ、待ちなさい!」

「フィオナ!!」

 侯爵と侯爵夫人がわめく。やがてフィオナの姿が見えなくなると、今度はニールを睨み付けてきた。

「説得をしてくださるのではなかったのですか?! 私たちに嘘をついたのですか!!」

 信じていたのに!
 叫ぶ二人に構わず、ニールは従者が持っていた紙の束を受けとると、柵の間からそれをドンと落とした。

 侯爵が「……何ですかな、これは」と訝しみながらニールを見る。ニールは、これか、と腕を組んだ。

「まず、お前らの家族、親戚、友人からの縁切り状と──」

 さらっと述べられた科白に、侯爵たちが「……は? え?」と目を点にする。

「フィオナがアイン侯爵家から除籍し、ポール公爵家の養女となった証となる書類もある。むろん、写しだがな」

 侯爵たちが紐でまとめられた書類を手に取り、血の気の引いた顔で一枚一枚確認している間も、ニールは続けた。

「このひと月半、本当に大変だった。お前たち阿呆のおかげでな──だが、まあ」

 ニールは、ニッと口角をあげた。

「そうそう。先ほどフィオナはお前たちのことを侯爵、侯爵夫人と呼んでいたが、あれは間違いだ。フィオナにはまだ知らせていなかったら、しようのないことだがな」

 侯爵が震える手で、とある一枚の書類に釘付けになっていた。そこに書かれていた内容は──。


「侯爵の爵位はもう、お前ではなく、お前の弟に正式に継がれている」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。

しげむろ ゆうき
恋愛
 男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない  そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった 全五話 ※ホラー無し

姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。

しげむろ ゆうき
恋愛
 姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。 全12話

あなたの仰ってる事は全くわかりません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者と友人が抱擁してキスをしていた。  しかも、私の父親の仕事場から見えるところでだ。  だから、あっという間に婚約解消になったが、婚約者はなぜか私がまだ婚約者を好きだと思い込んでいるらしく迫ってくる……。 全三話

私を侮辱する婚約者は早急に婚約破棄をしましょう。

しげむろ ゆうき
恋愛
私の婚約者は編入してきた男爵令嬢とあっという間に仲良くなり、私を侮辱しはじめたのだ。 だから、私は両親に相談して婚約を解消しようとしたのだが……。

そんなあなたには愛想が尽きました

ララ
恋愛
愛する人は私を裏切り、別の女性を体を重ねました。 そんなあなたには愛想が尽きました。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

この偽りが終わるとき

豆狸
恋愛
「……本当なのか、妃よ」 「エドワード陛下がそうお思いならば、それが真実です」 この偽りはまだ終わるべきときではない。 なろう様でも公開中です。

真実の愛を見つけた婚約者(殿下)を尊敬申し上げます、婚約破棄致しましょう

さこの
恋愛
「真実の愛を見つけた」 殿下にそう告げられる 「応援いたします」 だって真実の愛ですのよ? 見つける方が奇跡です! 婚約破棄の書類ご用意いたします。 わたくしはお先にサインをしました、殿下こちらにフルネームでお書き下さいね。 さぁ早く!わたくしは真実の愛の前では霞んでしまうような存在…身を引きます! なぜ婚約破棄後の元婚約者殿が、こんなに美しく写るのか… 私の真実の愛とは誠の愛であったのか… 気の迷いであったのでは… 葛藤するが、すでに時遅し…

処理中です...