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第8章 桜吹雪の下で

8話 とろとろ、甘い**

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 もう何も恐れなくていいという思いは予想以上に蘇芳の身体の熱をあげ、完全に発情しているのがくらくらした頭で分かる。たがの外れた身体は止まるところを知らない。
 涙で霞んだ視界で捉えた晴弥の瞳もまた情欲の炎を灯し、それが自分だけに向けられていることが嬉しくて、息もつけないほどの多幸感に溺れそうだ。
「ッ、煽んなっつってんだろ、これでも我慢してんだよ、……お前を、傷つけたくない」
「いい、そんなの、いいから……ッ」
 余裕のない表情が愛しくて、どこまでも蘇芳を気遣おうとする晴弥の最後の理性までも吹き飛ばしたくなって、蘇芳は晴弥の腰に、自ら疼く箇所を擦り付けてねだった。もうどろどろに蕩けた箇所が物欲しそうにひくついているのが見なくても分かる。
 こんなはしたないことをするなんて途方もなく恥ずかしいのに、その恥ずかしさにより一層昂ってしまう。
「ッたく、……!」
 舌打ちと共に巻きつけた足を剥がされ、開かされて押さえつけられる。
 ——見られてる……ッ。
 晒されたそこが物欲しそうにひくつくのが分かって、恥ずかしいのに感じてしまう。こぷりと新たな蜜が中から溢れて太腿を伝う感覚に腰が震えた。
 そんなふうに乱暴にされるのが嬉しいなんて、自分はどこかおかしくなってしまったのかもしれないと霞む頭でぼんやりと蘇芳は思う。でもそんなこと、もうどうでもいい。今はただこの愛しい男が欲しくて仕方がなかった。
 しかし、晴弥の次の行動は蘇芳の予測を大いに裏切る。
「え、やッ! そんな、そんなとこ……ぅ、ああ!」
 視線に炙られてとろとろと前からも後ろからも蜜をこぼす蘇芳の足を大きく開いて担いだかと思うと、晴弥がその間に顔を埋めてきた。
 雫をこぼし勃ち上がって震える屹立に口付けを落とし、会陰を伝って奥の窄まりへ舌が這う。
「ひぁッ、あ、やああんッ」
 湯で体を清めてあってよかったと妙に冷静に安心しつつ、だとしても口をつけるような場所とは言い難い。それなのに無遠慮に侵入する舌に身体は悦んでいるのが分かって、羞恥から灰になってしまいそうだ。
 びくびくと震える腰を両の手でがっしりと掴まれて身動きを封じられた状態で、晴弥の舌が浅く深く出入りし、敏感な内壁を擦る。身体の内側を舐められているという倒錯的な感覚に、脳髄まで痺れていく。
「……甘い」
「んなわけ……ッ」
 あふれて溢れる蜜を露骨に濡れた音を立てて啜られ、あげくそんなことを言う晴弥に息も絶え絶えに涙目で言い返すが、冗談を言っている顔にも見えない。蘇芳は、かつて晴弥本人から言われたことを唐突に思い出してしまった。
 ——相性のいい相手の匂いは好ましく感じるって……もしかして、相手が俺だから、甘く感じるとか……?
 そう思ってしまったら、もうだめだった。
「あ、あ、んああ……ッ!」
 なおもぬぐぬぐと中でうごめく柔らかな舌を食い締めるように内壁が収縮し、身体が跳ねる。屹立から飛んだ白濁が腹を温く濡らした。
 絶頂に強張った身体が徐々に弛緩する。ようやく舌が出ていく気配がして、下半身に覆い被さっていた晴弥の頭が腹に移動するのを、未だ呼吸が整わない蘇芳は見るともなく眺めていた。
 ぺちゃ、と濡れた感触を腹に感じ、蘇芳がハッと首を起こす。
「ちょ、なに……んッ」
「やっぱり、甘いな」
 当然のような顔で晴弥が蘇芳の腹に散った白濁を舐め取っていた。
 さも美味そうに丁寧に舐め取られ、恥ずかしいと思う自分の方がおかしいのかとさえ思える。真っ赤になった蘇芳に、晴弥が満足げに目を細めた。
 以前のように息をつく暇もなく嵐のように求められ、交わるのも後で思い返して地面に埋まりたくなったものだが、互いを唯一と見定め合った余裕からなのかこうして一つ一つ味わうようにことを進められるのも恥ずかしいやらいたたまれないやらでどうかなりそうになる。
 何より、一度達しても腹の奥の疼きは治るどころか一層ひどくなっていた。
「は、ぁ……」
 触りたいし、もっと触って欲しいし、口付けもしたい。
「おれ……も、する……」
 さっきから晴弥に主導権を握られっぱなしで、自分だけ上り詰めさせられたのがなんだか寂しく感じられて、蘇芳が力の入らない身体を起こそうとする。
 しかし、伸ばした腕は掴まれ、逆に引っ張り上げられてしまった。
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