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49. あれよあれよの急展開

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「よし。こんなもんでいいだろ」
 目ぼしいつまみを適当にカゴに追加して、レジへ向かって歩き出す。
「しかし、またえらく混んでいるな……」
 レジの行列を見て、東堂がうんざりしたような声を上げた。
「そうかー? 夕方のスーパーなんてこんなもんだろ」
 東堂は日頃スーパーで買い物なんかしなさそうだもんな、と列に並びながら将吾は思う。ちょっと所在なさそうに将吾の後ろにくっついてくる東堂が、なんだか可愛らしくて笑えた。
 あのあと将吾は、東堂に襲いかかりそうになったことをもう一度きちんと謝って、ついでにちゃんと意思の確認もした。そういう関係になってもいいか、と問う将吾に、真っ赤になりながら小さく頷いた東堂の姿は、将吾の心のアルバム永久保存版に収納だ。将吾の方も恥をしのんで、何が必要なのかを聞いた。思い返すと地面に埋まりたくなる。
 ——いや、だからもっと時間をかけるつもりだったんだって……。
 将吾の中では、肌を触れ合わせてもいいと東堂が自然に思えるまで待つつもりで、それまでにいろいろ調べて、イメトレをしておく予定だったのだ。ただ、恥ずかしさを堪えて男同士のやり方、その準備に必要なものを挙げる東堂には、正直かなり萌えたので、これはこれでよしとした。羞恥プレイもいいな、と早くも思ったりしている自分がちょっと怖い。これまで付き合ってきた恋人たちとはしたいと思ったことさえないような欲求や衝動が東堂相手だとどんどん湧いてくる。

「ありがとうございましたー」
 恥ずかしかった。猛烈に、恥ずかしかった。
 昼夜外食も悪くはないが、せっかく来てもらったことだし、家でゆっくりしようと東堂を連れて食材の買い出しに出た。その帰り、ドラッグストアに立ち寄り、言われたものを買い揃えたのである。
 こうしたものを店頭で買ったのは、初体験の時以来かもしれない。その後は知識を蓄え、その手のものはもっぱらネット通販という便利なものに頼ってきた。努めて何食わぬ顔で会計を済ませたし、レジの男性も眉一つ動かさずに商品を袋に詰めてくれたが、それでも買ったものを見ればこれから何をするか丸わかりだ。代金を払って袋を掴んで店を出るまでが苦行のようだった。
「……なんだ、やけにいろいろ買ったな」
 先に何やら自分の買い物を済ませて外で待っていた東堂が、将吾の手にした袋を覗き込み、中にひしめく袋菓子やら歯ブラシやらに呆れ顔をする。
「そりゃ、あからさまにこれだけ買うわけにいかないだろ……」
 目くらましの品々の間に埋もれるようにして、小さなチューブと四角い箱。「これ」こそ、東堂とつながるために必要なもの。
「お前、そういうところは意外に繊細なんだな」
 意外に、は余計だろ、と軽口を叩きながら、マンションまでの道のりを歩く。うっすらとした興奮に包まれているのが自分で分かった。
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