【完結】熱血くんと嫌味なアイツ【改稿版】

雫川サラ

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24. 風向きが変わった

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 数日後。
 英京新聞本社ビルでは、バタバタとフロアを走る足音があちこちで響いていた。
 社用携帯を耳に当て忙しくメモを取っているもの、外線に応じるもの。報道部の誰もが緊張と高揚を顔に浮かべ、落ち着きがない。
 それもそのはずである。なんと、文科省の前事務次官が突然A学園をめぐる一連の疑惑について、会見を行うという情報が飛び込んできたのだ。
 これが大きな転換点になるのは間違いなかった。前がつくとは言え、事務次官といえば大臣の直下、省庁の事務方トップだ。そのクラスが動くということを、どう読むか。会見の内容次第では、将吾たちの動きも大きく変わってくる。社内に走る緊張も、当然だった。
 会見は今日の夕方らしいが、出席できない将吾たちはただそれまでの時間を待つことしかできない。空いた時間に溜まった書類仕事をしようとPCを立ち上げた将吾だったが、周りで飛び交う会話の端々に聞き耳を立ててしまい、全く捗りそうになかった。

「学園の設立に関しまして、内閣府が押し通す形で進んだのは、確かです」
 はっきり言い切った前事務次官に、会場のどよめきが画面越しにこちらまで聞こえてくる。
 会見が始まると同時に、中継の画面が報道部フロアのモニタに映し出され、部員たちは仕事を一旦中断してその周りに集まっていた。皆、固唾を飲んで画面を見つめている。おそらくどの新聞社でも、同じような光景が繰り広げられているだろう。
 前事務次官からは衝撃の発言が続いた。英京新聞当局班が入手して大々的に報じた内部文書についても、在職中に受け取ったものであると認め、会場は報道カメラマンの焚くフラッシュの光で真っ白になる。
「こりゃあ……えらいことになったぞ」
 会見の報道を食い入るように見ていた報道部員の一人が呟いた。その場にいた誰もが同じ心境だったに違いない。
 会見終了後、報道部フロアは興奮に包まれた。これで形勢は一気に学園側が不利になる。この流れを見て、関係者の中には態度を変える者も出てくるはずだ。東堂と将吾もすぐに取材の計画を練り直し、アポ取りを開始した。

 そこからは文字通り、寝る間も惜しんでの取材が始まった。
 会見を受けて文科省が態度を一変し、文書の再調査をする旨を発表したことで、その勢いは一層加速した。今までは門前払いを受けてきた自治体のトップレベルにまで、笑いそうなほどあっさり話が通る。
 世間の現金さを目の当たりにするのは何度経験しても気持ちのいいものではないが、動き始めて一ヶ月と少し、ようやく身のある記事を出すこともできて、将吾は疲労さえ心地よく感じていた。
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