4 / 60
4. 最初の違和感
しおりを挟む夜の闇の中、商売柄もあってあまりに眠れぬもんだから、
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
少しだけ蝋燭をつけて、また吸い始めた煙草に火をつける。
そういえばこの可愛い折り紙の鶴も早く燃やしてしまわなければならない。
禿にやれば喜びそうだと思ったけれども、やはりどうしても手放せなかった。
あんまりかわいいもんだから、ちょっと意地悪がしてみたくなって、
掌の上で煙管で突っついて転がしてやった。
赤い鶴の内側になんだかちょっとだけ黒色が見えた気がした。
何かあるのかと気になってちょっと可哀想だが紙を解いていく。
内側に何か書いてあるようだ。
火を近づけて照らして見ると、
「あなたが好きだ」
と書いてある。
手が震える。
こんな単純な言葉なのに、どんな睦言より恋文より胸が苦しくなった。
若い彼の気持ちがその一言に青臭く溢れてくるようだ。
まさかまさか、他の男の元へ行く前夜にこんな気持ちになるなんて。
太夫は小さく声を上げてカラカラと笑って、鶴をそっと火にくべた。
少しずつ灰になる鶴に気落ちした心もとても晴れやかになる。
鼻が少しつまって目元がちょびっと暖かい。
冷えるはずの頬も鶴のおかげで熱くて痒い。
何を自分は迷っていたのか、全て思い通りにならぬなら最期位自由に生きてやろう。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
切なくて、恋しくて〜zielstrebige Liebe〜
水無瀬 蒼
BL
カフェオーナーである松倉湊斗(まつくらみなと)は高校生の頃から1人の人をずっと思い続けている。その相手は横家大輝(よこやだいき)で、大輝は大学を中退してドイツへサッカー留学をしていた。その後湊斗は一度も会っていないし、連絡もない。それでも、引退を決めたら迎えに来るという言葉を信じてずっと待っている。
そんなある誕生日、お店の常連であるファッションデザイナーの吉澤優馬(よしざわゆうま)に告白されーー
-------------------------------
松倉湊斗(まつくらみなと) 27歳
カフェ・ルーシェのオーナー
横家大輝(よこやだいき) 27歳
サッカー選手
吉澤優馬(よしざわゆうま) 31歳
ファッションデザイナー
-------------------------------
2024.12.21~
ブライダル・ラプソディー
葉月凛
BL
ゲストハウス・メルマリーで披露宴の音響をしている相川奈津は、新人ながらも一生懸命仕事に取り組む25歳。ある日、密かに憧れる会場キャプテン成瀬真一とイケナイ関係を持ってしまう。
しかし彼の左手の薬指には、シルバーのリングが──
エブリスタにも投稿しています。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…
まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。
5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。
相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。
一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。
唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。
それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。
そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。
そこへ社会人となっていた澄と再会する。
果たして5年越しの恋は、動き出すのか?
表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる