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「わ……なんか、すげえ……」
これまでラブホに入るような場面も相手もいなかった俺は、初めてみる本物のラブホに驚嘆の声を上げていた。部屋の入り口を入ると、すぐにどかーんと大きなベッドがある。天蓋からはレースのカーテンまで下がっている。
「本当に初めてなんだな」
「だから、先生しか好きじゃないって、言った……」
「ん、ありがとう。……ありがとう、って言うのは、結城はあんまり好きじゃないんだったっけ。でも、嬉しいよ」
所在なげに立ち尽くしている俺に、荷物を下ろした先生がベッドに腰掛けて、俺を隣に手招きした。
「結城がちゃんと言ってくれたから、俺も、言うね。俺は、ゲイじゃない」
俺がその言葉に息を飲んだのが伝わって、先生が俺の手を握り締めてくれた。
「だけど、結城だけは、なんだか特別だったんだ。当時、俺もそれを恋愛感情とは結びつけて考えなかった。ただ、お前が俺だけには笑顔を見せてくれるようになったのが、無性に嬉しくて、お前のためにできることはないかって、毎日調べるくらいには、お前のことばかり考えてた」
俺も嬉しくて、けど恥ずかしくて、先生の顔を直視できない。代わりに、肩に甘えるように顔をもたせかけた。先生が、つないでない方の手で、頭を撫でてくれるのが嬉しくて、身体が熱くなる。
「お前が卒業していくときは、なんだか胸に穴が開いたような気がしたよ。それからはお前に偶然でも会えないかなって思っていたけど、お前はもう俺のことなんて忘れて元気にやってるだろうなとも思ってた。それならそれでいいかって。だけど、さっきお前に呼び止められて、すっかり大人になったお前を見て、俺の気持ちが少し変わった」
「え?」
「ドキッとしたんだ。こんなに、綺麗になったお前に、こう、胸を鷲掴みにされたみたいになった。お前が俺に好きだって、抱いてくれって言ったとき、気持ち悪いどころか、お前のことをそういう目で見てる自分に気づいたんだよ」
「でも、先生、最初、帰ろうとした……」
「誰だってそりゃ、告白されたその日にヤろうなんて思わねえだろ。まずそう言うのはちゃんと酔ってないときに、改めてデートしてからだな」
「先生、頭固すぎ」
「悪かったな、こちとらもうノリで関係が結べるほど若くないんでね」
先生がムッとした顔でそんなことを言うものだから、俺はおかしくなってクスクス笑いながら先生の頬にキスをした。
「先生はいつだって格好いいよ」
「またそういうことを言う」
「本当だもん。で、先生は、俺が我慢できなかったから、ここに来てくれたの?」
「そりゃあ、好きだと自覚したばっかりの相手にあんな風にされて落ちない男がいたら教えて欲しい」
「へへっ、嬉しい。先生から好きって言ってもらえた」
俺の指摘に先生がまたムスッとした顔をする。中学の時には見せなかった表情をこの数時間の間にいくつも見られてる気がする。だけど、と俺は不安になる。本当に、先生、俺で勃つのかな。
「ね、先生、本当に、俺のこと、その」
「抱けるかって? 少なくとも俺はそのつもりだけどな。お前も、嫌になったり気持ち悪くなったら、すぐに言え。さっきも言ったが、俺は無理強いは趣味じゃないからな」
先生は、優しすぎるから、不安になる。俺のわがままに付き合ってくれてるだけなんじゃないかって。だけど、その不安は、カチャリとメガネを外してベッドサイドに置いた先生に、全部吹き飛ばされた。
これまでラブホに入るような場面も相手もいなかった俺は、初めてみる本物のラブホに驚嘆の声を上げていた。部屋の入り口を入ると、すぐにどかーんと大きなベッドがある。天蓋からはレースのカーテンまで下がっている。
「本当に初めてなんだな」
「だから、先生しか好きじゃないって、言った……」
「ん、ありがとう。……ありがとう、って言うのは、結城はあんまり好きじゃないんだったっけ。でも、嬉しいよ」
所在なげに立ち尽くしている俺に、荷物を下ろした先生がベッドに腰掛けて、俺を隣に手招きした。
「結城がちゃんと言ってくれたから、俺も、言うね。俺は、ゲイじゃない」
俺がその言葉に息を飲んだのが伝わって、先生が俺の手を握り締めてくれた。
「だけど、結城だけは、なんだか特別だったんだ。当時、俺もそれを恋愛感情とは結びつけて考えなかった。ただ、お前が俺だけには笑顔を見せてくれるようになったのが、無性に嬉しくて、お前のためにできることはないかって、毎日調べるくらいには、お前のことばかり考えてた」
俺も嬉しくて、けど恥ずかしくて、先生の顔を直視できない。代わりに、肩に甘えるように顔をもたせかけた。先生が、つないでない方の手で、頭を撫でてくれるのが嬉しくて、身体が熱くなる。
「お前が卒業していくときは、なんだか胸に穴が開いたような気がしたよ。それからはお前に偶然でも会えないかなって思っていたけど、お前はもう俺のことなんて忘れて元気にやってるだろうなとも思ってた。それならそれでいいかって。だけど、さっきお前に呼び止められて、すっかり大人になったお前を見て、俺の気持ちが少し変わった」
「え?」
「ドキッとしたんだ。こんなに、綺麗になったお前に、こう、胸を鷲掴みにされたみたいになった。お前が俺に好きだって、抱いてくれって言ったとき、気持ち悪いどころか、お前のことをそういう目で見てる自分に気づいたんだよ」
「でも、先生、最初、帰ろうとした……」
「誰だってそりゃ、告白されたその日にヤろうなんて思わねえだろ。まずそう言うのはちゃんと酔ってないときに、改めてデートしてからだな」
「先生、頭固すぎ」
「悪かったな、こちとらもうノリで関係が結べるほど若くないんでね」
先生がムッとした顔でそんなことを言うものだから、俺はおかしくなってクスクス笑いながら先生の頬にキスをした。
「先生はいつだって格好いいよ」
「またそういうことを言う」
「本当だもん。で、先生は、俺が我慢できなかったから、ここに来てくれたの?」
「そりゃあ、好きだと自覚したばっかりの相手にあんな風にされて落ちない男がいたら教えて欲しい」
「へへっ、嬉しい。先生から好きって言ってもらえた」
俺の指摘に先生がまたムスッとした顔をする。中学の時には見せなかった表情をこの数時間の間にいくつも見られてる気がする。だけど、と俺は不安になる。本当に、先生、俺で勃つのかな。
「ね、先生、本当に、俺のこと、その」
「抱けるかって? 少なくとも俺はそのつもりだけどな。お前も、嫌になったり気持ち悪くなったら、すぐに言え。さっきも言ったが、俺は無理強いは趣味じゃないからな」
先生は、優しすぎるから、不安になる。俺のわがままに付き合ってくれてるだけなんじゃないかって。だけど、その不安は、カチャリとメガネを外してベッドサイドに置いた先生に、全部吹き飛ばされた。
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