見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜

うさみち

文字の大きさ
上 下
196 / 207
第7章 海中宮殿と新たな試練

7-6 新たなステージへ

しおりを挟む
『それにしてもダンジョン内でダイニングテーブルまで出して食事をするとは。ピロン姉様が驚くのも必然ですわね』

 ーーポロンのお小言。
 やっぱり姉妹だ。ピロンもポロンも性格が似すぎている。

「うっっるさいわねぇ。いいじゃない。おいしく楽しく食べて体力回復できるなら。……あそうだ。ピロンは私の妹分よ。その妹ってことは、アンタも私の妹っていうことになるわ。わかったわね?」

 ーーボロォォン!

『なんということでしょう。崇高なるポップアップが、ただのぬいぐるみに圧政を敷かれるなど……』
「アンタ……言葉遣いはピロンよりましだけど、性格はピロンより真っ黒ね。ポロンじゃなくてボロンって呼ぼうかしら」

 ーーポッ!

『ご冗談を。この私がボロンですって? そんなこと言うならアナタは無能な濡れうさぎじゃないですか』
「なっ、なにを~! 鼻で笑いやがってぇ~!」

「まあまあ、落ち着けって2人とも」

 とゼラが言うも、

『「末っ子は黙ってなさい!」』

 と言われる始末。ゼラは、はぁ、とため息をつく。

「まぁまぁゼラくん。落ち込むのはやめてご飯食べよう? あの2人はきっとあれでもじゃれあってるんだよ」
「違うわ!」『違います、ミミリ』
「ほら? 息ぴったりでしょ?」
『「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」』

 いがみあう2人など意に介さずマイペースなミミリ。食事をとりあえず終えたので、【マジックバッグ】に片付けをし始めた。
 ゼラも手伝ったが、うさみは手伝わず片付けは終わる。まぁ、これも平常運転だ。

「次はどんなモンスターが出てくるんだろうね」
「ほんとね。ねえ、私思うんだけど、スズツリー=ソウタは、錬金術士であり、モンスターテイマーだったのかしら」
「確かに。審判の関所で戦ったぷるぷるや、今回のブラックウルフの件もあるしな。どう考えても、スズツリー=ソウタの意志を継いで闘ってる」

 すかさず答えたのは、ポロンだった。

『ソウタ様は錬金術士であり、そしてテイマーでもありました。やはり、動物やモンスターと仲良くなる素質をお持ちでしたね。ミミリも通ずる部分があるのでは?』
「それは、言えてるわね」
「ぷるぷるに懐かれてたしな」

 ーーそうかなぁ。確かに、仲良くなれるモンスターもいるはいるけれど、全員とではないし。でも、もし素質があってモンスターと仲良くなれるなら楽しそう!

「お腹もいっぱい食べたし、体力回復したし、行こっか! 次のステージへ」
「そうね」「ああ」

 ◇

 ミミリたちは、光の指す方へ向かう。
 しかし、步けども歩けども、なぜか一向に目的地へ届かない。光の差す方へ、歩いていると言うのに。

「おかしいわね」
「ね、どうして着かないんだろう」
「結構歩いたよな?」

『大丈夫、ご心配なく。
 もう目的地には着きましたから』
「「「え?」」」

『ではいってらっしゃいませ。

 、お気をつけて

 ーーご武運を!』


「「「?」」」

 すると、ガコン、と足元から音が聞こえ、ミミリたちはふわりと浮かび上がった……のではなく、落ちていった。

「きゃああああああごわいー」
「ゼラ! アンタミミリのスカートの中見たらどうなるかわかってるわよねえ?」
「ちょっ、ちょっとうさみ! 変なこと言うなよ! 余計に意識が向くだろ? ーーハッ!」

「ゼラくんのえっち!」

 ミミリを怒らせてしまったゼラ。ただでさえ落下して血の気が引くというのに、別の意味でも血の気が引く。後がこわい。こわすぎる。

 ーー俺、もう取り返しがつかないかも。ミミリのほっぺたが膨れ上がりすぎてる。
 だけどスカートの中は、白だった……。我が人生に悔いはない……なんてことはない。もう、手遅れだ。

 ゼラは戦闘前から力尽き……たかと思ったが、このままでは地面に激突してしまうので、なんとか策を講じなければ、と考える。

「ミミリ! 【ぷるゼラチンマット】だ! 『陰』でも『陽』でも構わないができれば『陰』で! あとは俺がなんとかするから! それと、2人とも俺の方に集まってくれ」
「わかった! えーと、マット、マット……」
「集まるって言われても……。わかったわ。ーー癒しの春風、豪風バージョン!」

 うさみの魔法により、風に導かれてミミリとうさみはゼラの方へ集まることができた。ゼラはすかさずミミリをお姫様抱っこし、うさみは肩に乗せた。

「2人とも、落ちないでくれよ!」

 ゼラは全魔力MPを足元へ集中させる。

「今だッ、ミミリ!」
「はいっ!」

 ミミリは眼下に向かって【ぷるゼラチンマット(隠)】を投げた。これで陽の雷属性を持つゼラと隠のマットは引かれ合うはずだ。

「うわ、引っ張られる!」

 ーーズシィィン! ぶるんっぶるんっ!

「良かった、無事に着陸できたね」
「ほんとだな。ありがとうミミリ」
「ゼラくんこそ、ありがとう」
「…………ねぇ、2人とも悠長なこと、言ってられないわよ。聞こえないの? この音が」
「「ーー!!」」


 ーーシュー! シャアアアアア!

 は長い舌をだし、シュルシュルと鳴いて威嚇しながらミミリたちを観察していた。

 全長5メートルはありそうな大蛇。
 目は金色に近い黄色。瞳に黒い縦線が入り、身体は黒と灰のまだら色をしている。

「蛇……」

 ミミリはゼラが心配になり、ゼラをチラリと見たが、取り越し苦労だったようだ。
 ゼラは勝気で、やる気に満ち溢れていた。

「蛇で良かったかもしれない」
「ゼラ?」
「だって蛇なら、容赦なく叩き切れるからッ!」

 ーー蛇頭のメデューサが全員の頭の中を巡り、の出来事が頭をよぎる。

 ーー俺は、二度と、負けやしない!

「倒そう! 絶対に」
「ゼラ! ミミリのパンツの件はあとでよ?」
「えっ! やだ、本当に見たのゼラくん」
「ちょっ、今その話するぅ?」

 ーーポッ!

 窮地に追い込まれてもなお、締まらないメンバーにポロンは吹き出した。


『忖度……する気持ちもわかるかもしれませんね。ピロン姉様、くまゴロー先生。亡き同志、からくりパペット……』


 各々が武器を構えた。
 ミミリは雷のロッドを。
 ゼラは騎士の短剣を。
 うさみは、聖女の慈愛を全員にかけた。

 ポロンに見守られながら、闘いの火蓋は、切って落とされたーー。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

盲目魔女さんに拾われた双子姉妹は恩返しをするそうです。

桐山一茶
児童書・童話
雨が降り注ぐ夜の山に、捨てられてしまった双子の姉妹が居ました。 山の中には恐ろしい魔物が出るので、幼い少女の力では山の中で生きていく事なんか出来ません。 そんな中、双子姉妹の目の前に全身黒ずくめの女の人が現れました。 するとその人は優しい声で言いました。 「私は目が見えません。だから手を繋ぎましょう」 その言葉をきっかけに、3人は仲良く暮らし始めたそうなのですが――。 (この作品はほぼ毎日更新です)

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~

めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。 いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている. 気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。 途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。 「ドラゴンがお姉さんになった?」 「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」 変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。 ・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

処理中です...