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第7章 海中宮殿と新たな試練
7-6 新たなステージへ
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『それにしてもダンジョン内でダイニングテーブルまで出して食事をするとは。ピロン姉様が驚くのも必然ですわね』
ーーポロンのお小言。
やっぱり姉妹だ。ピロンもポロンも性格が似すぎている。
「うっっるさいわねぇ。いいじゃない。おいしく楽しく食べて体力回復できるなら。……あそうだ。ピロンは私の妹分よ。その妹ってことは、アンタも私の妹っていうことになるわ。わかったわね?」
ーーボロォォン!
『なんということでしょう。崇高なるポップアップが、ただのぬいぐるみに圧政を敷かれるなど……』
「アンタ……言葉遣いはピロンよりましだけど、性格はピロンより真っ黒ね。ポロンじゃなくてボロンって呼ぼうかしら」
ーーポッ!
『ご冗談を。この私がボロンですって? そんなこと言うならアナタは無能な濡れうさぎじゃないですか』
「なっ、なにを~! 鼻で笑いやがってぇ~!」
「まあまあ、落ち着けって2人とも」
とゼラが言うも、
『「末っ子は黙ってなさい!」』
と言われる始末。ゼラは、はぁ、とため息をつく。
「まぁまぁゼラくん。落ち込むのはやめてご飯食べよう? あの2人はきっとあれでもじゃれあってるんだよ」
「違うわ!」『違います、ミミリ』
「ほら? 息ぴったりでしょ?」
『「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」』
いがみあう2人など意に介さずマイペースなミミリ。食事をとりあえず終えたので、【マジックバッグ】に片付けをし始めた。
ゼラも手伝ったが、うさみは手伝わず片付けは終わる。まぁ、これも平常運転だ。
「次はどんなモンスターが出てくるんだろうね」
「ほんとね。ねえ、私思うんだけど、スズツリー=ソウタは、錬金術士であり、モンスターテイマーだったのかしら」
「確かに。審判の関所で戦ったぷるぷるや、今回のブラックウルフの件もあるしな。どう考えても、スズツリー=ソウタの意志を継いで闘ってる」
すかさず答えたのは、ポロンだった。
『ソウタ様は錬金術士であり、そしてテイマーでもありました。やはり、動物やモンスターと仲良くなる素質をお持ちでしたね。ミミリも通ずる部分があるのでは?』
「それは、言えてるわね」
「ぷるぷるに懐かれてたしな」
ーーそうかなぁ。確かに、仲良くなれるモンスターもいるはいるけれど、全員とではないし。でも、もし素質があってモンスターと仲良くなれるなら楽しそう!
「お腹もいっぱい食べたし、体力回復したし、行こっか! 次のステージへ」
「そうね」「ああ」
◇
ミミリたちは、光の指す方へ向かう。
しかし、步けども歩けども、なぜか一向に目的地へ届かない。光の差す方へ、歩いていると言うのに。
「おかしいわね」
「ね、どうして着かないんだろう」
「結構歩いたよな?」
『大丈夫、ご心配なく。
もう目的地には着きましたから』
「「「え?」」」
『ではいってらっしゃいませ。
落下中、お気をつけて
ーーご武運を!』
「「「落下中?」」」
すると、ガコン、と足元から音が聞こえ、ミミリたちはふわりと浮かび上がった……のではなく、落ちていった。
「きゃああああああごわいー」
「ゼラ! アンタミミリのスカートの中見たらどうなるかわかってるわよねえ?」
「ちょっ、ちょっとうさみ! 変なこと言うなよ! 余計に意識が向くだろ? ーーハッ!」
「ゼラくんのえっち!」
ミミリを怒らせてしまったゼラ。ただでさえ落下して血の気が引くというのに、別の意味でも血の気が引く。後がこわい。こわすぎる。
ーー俺、もう取り返しがつかないかも。ミミリのほっぺたが膨れ上がりすぎてる。
だけどスカートの中は、白だった……。我が人生に悔いはない……なんてことはない。もう、手遅れだ。
ゼラは戦闘前から力尽き……たかと思ったが、このままでは地面に激突してしまうので、なんとか策を講じなければ、と考える。
「ミミリ! 【ぷるゼラチンマット】だ! 『陰』でも『陽』でも構わないができれば『陰』で! あとは俺がなんとかするから! それと、2人とも俺の方に集まってくれ」
「わかった! えーと、マット、マット……」
「集まるって言われても……。わかったわ。ーー癒しの春風、豪風バージョン!」
うさみの魔法により、風に導かれてミミリとうさみはゼラの方へ集まることができた。ゼラはすかさずミミリをお姫様抱っこし、うさみは肩に乗せた。
「2人とも、落ちないでくれよ!」
ゼラは全魔力を足元へ集中させる。
「今だッ、ミミリ!」
「はいっ!」
ミミリは眼下に向かって【ぷるゼラチンマット(隠)】を投げた。これで陽の雷属性を持つゼラと隠のマットは引かれ合うはずだ。
「うわ、引っ張られる!」
ーーズシィィン! ぶるんっぶるんっ!
「良かった、無事に着陸できたね」
「ほんとだな。ありがとうミミリ」
「ゼラくんこそ、ありがとう」
「…………ねぇ、2人とも悠長なこと、言ってられないわよ。聞こえないの? この音が」
「「ーー!!」」
ーーシュー! シャアアアアア!
それは長い舌をだし、シュルシュルと鳴いて威嚇しながらミミリたちを観察していた。
全長5メートルはありそうな大蛇。
目は金色に近い黄色。瞳に黒い縦線が入り、身体は黒と灰のまだら色をしている。
「蛇……」
ミミリはゼラが心配になり、ゼラをチラリと見たが、取り越し苦労だったようだ。
ゼラは勝気で、やる気に満ち溢れていた。
「蛇で良かったかもしれない」
「ゼラ?」
「だって蛇なら、容赦なく叩き切れるからッ!」
ーー蛇頭のメデューサが全員の頭の中を巡り、かつての出来事が頭をよぎる。
ーー俺は、二度と、負けやしない!
「倒そう! 絶対に」
「ゼラ! ミミリのパンツの件はあとでよ?」
「えっ! やだ、本当に見たのゼラくん」
「ちょっ、今その話するぅ?」
ーーポッ!
窮地に追い込まれてもなお、締まらないメンバーにポロンは吹き出した。
『忖度……する気持ちもわかるかもしれませんね。ピロン姉様、くまゴロー先生。亡き同志、からくりパペット……』
各々が武器を構えた。
ミミリは雷のロッドを。
ゼラは騎士の短剣を。
うさみは、聖女の慈愛を全員にかけた。
ポロンに見守られながら、闘いの火蓋は、切って落とされたーー。
ーーポロンのお小言。
やっぱり姉妹だ。ピロンもポロンも性格が似すぎている。
「うっっるさいわねぇ。いいじゃない。おいしく楽しく食べて体力回復できるなら。……あそうだ。ピロンは私の妹分よ。その妹ってことは、アンタも私の妹っていうことになるわ。わかったわね?」
ーーボロォォン!
『なんということでしょう。崇高なるポップアップが、ただのぬいぐるみに圧政を敷かれるなど……』
「アンタ……言葉遣いはピロンよりましだけど、性格はピロンより真っ黒ね。ポロンじゃなくてボロンって呼ぼうかしら」
ーーポッ!
『ご冗談を。この私がボロンですって? そんなこと言うならアナタは無能な濡れうさぎじゃないですか』
「なっ、なにを~! 鼻で笑いやがってぇ~!」
「まあまあ、落ち着けって2人とも」
とゼラが言うも、
『「末っ子は黙ってなさい!」』
と言われる始末。ゼラは、はぁ、とため息をつく。
「まぁまぁゼラくん。落ち込むのはやめてご飯食べよう? あの2人はきっとあれでもじゃれあってるんだよ」
「違うわ!」『違います、ミミリ』
「ほら? 息ぴったりでしょ?」
『「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!」』
いがみあう2人など意に介さずマイペースなミミリ。食事をとりあえず終えたので、【マジックバッグ】に片付けをし始めた。
ゼラも手伝ったが、うさみは手伝わず片付けは終わる。まぁ、これも平常運転だ。
「次はどんなモンスターが出てくるんだろうね」
「ほんとね。ねえ、私思うんだけど、スズツリー=ソウタは、錬金術士であり、モンスターテイマーだったのかしら」
「確かに。審判の関所で戦ったぷるぷるや、今回のブラックウルフの件もあるしな。どう考えても、スズツリー=ソウタの意志を継いで闘ってる」
すかさず答えたのは、ポロンだった。
『ソウタ様は錬金術士であり、そしてテイマーでもありました。やはり、動物やモンスターと仲良くなる素質をお持ちでしたね。ミミリも通ずる部分があるのでは?』
「それは、言えてるわね」
「ぷるぷるに懐かれてたしな」
ーーそうかなぁ。確かに、仲良くなれるモンスターもいるはいるけれど、全員とではないし。でも、もし素質があってモンスターと仲良くなれるなら楽しそう!
「お腹もいっぱい食べたし、体力回復したし、行こっか! 次のステージへ」
「そうね」「ああ」
◇
ミミリたちは、光の指す方へ向かう。
しかし、步けども歩けども、なぜか一向に目的地へ届かない。光の差す方へ、歩いていると言うのに。
「おかしいわね」
「ね、どうして着かないんだろう」
「結構歩いたよな?」
『大丈夫、ご心配なく。
もう目的地には着きましたから』
「「「え?」」」
『ではいってらっしゃいませ。
落下中、お気をつけて
ーーご武運を!』
「「「落下中?」」」
すると、ガコン、と足元から音が聞こえ、ミミリたちはふわりと浮かび上がった……のではなく、落ちていった。
「きゃああああああごわいー」
「ゼラ! アンタミミリのスカートの中見たらどうなるかわかってるわよねえ?」
「ちょっ、ちょっとうさみ! 変なこと言うなよ! 余計に意識が向くだろ? ーーハッ!」
「ゼラくんのえっち!」
ミミリを怒らせてしまったゼラ。ただでさえ落下して血の気が引くというのに、別の意味でも血の気が引く。後がこわい。こわすぎる。
ーー俺、もう取り返しがつかないかも。ミミリのほっぺたが膨れ上がりすぎてる。
だけどスカートの中は、白だった……。我が人生に悔いはない……なんてことはない。もう、手遅れだ。
ゼラは戦闘前から力尽き……たかと思ったが、このままでは地面に激突してしまうので、なんとか策を講じなければ、と考える。
「ミミリ! 【ぷるゼラチンマット】だ! 『陰』でも『陽』でも構わないができれば『陰』で! あとは俺がなんとかするから! それと、2人とも俺の方に集まってくれ」
「わかった! えーと、マット、マット……」
「集まるって言われても……。わかったわ。ーー癒しの春風、豪風バージョン!」
うさみの魔法により、風に導かれてミミリとうさみはゼラの方へ集まることができた。ゼラはすかさずミミリをお姫様抱っこし、うさみは肩に乗せた。
「2人とも、落ちないでくれよ!」
ゼラは全魔力を足元へ集中させる。
「今だッ、ミミリ!」
「はいっ!」
ミミリは眼下に向かって【ぷるゼラチンマット(隠)】を投げた。これで陽の雷属性を持つゼラと隠のマットは引かれ合うはずだ。
「うわ、引っ張られる!」
ーーズシィィン! ぶるんっぶるんっ!
「良かった、無事に着陸できたね」
「ほんとだな。ありがとうミミリ」
「ゼラくんこそ、ありがとう」
「…………ねぇ、2人とも悠長なこと、言ってられないわよ。聞こえないの? この音が」
「「ーー!!」」
ーーシュー! シャアアアアア!
それは長い舌をだし、シュルシュルと鳴いて威嚇しながらミミリたちを観察していた。
全長5メートルはありそうな大蛇。
目は金色に近い黄色。瞳に黒い縦線が入り、身体は黒と灰のまだら色をしている。
「蛇……」
ミミリはゼラが心配になり、ゼラをチラリと見たが、取り越し苦労だったようだ。
ゼラは勝気で、やる気に満ち溢れていた。
「蛇で良かったかもしれない」
「ゼラ?」
「だって蛇なら、容赦なく叩き切れるからッ!」
ーー蛇頭のメデューサが全員の頭の中を巡り、かつての出来事が頭をよぎる。
ーー俺は、二度と、負けやしない!
「倒そう! 絶対に」
「ゼラ! ミミリのパンツの件はあとでよ?」
「えっ! やだ、本当に見たのゼラくん」
「ちょっ、今その話するぅ?」
ーーポッ!
窮地に追い込まれてもなお、締まらないメンバーにポロンは吹き出した。
『忖度……する気持ちもわかるかもしれませんね。ピロン姉様、くまゴロー先生。亡き同志、からくりパペット……』
各々が武器を構えた。
ミミリは雷のロッドを。
ゼラは騎士の短剣を。
うさみは、聖女の慈愛を全員にかけた。
ポロンに見守られながら、闘いの火蓋は、切って落とされたーー。
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