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第7章 海中宮殿と新たな試練
7-4 ルート選択
しおりを挟むーーポロン‼︎
『ルートを選択してください。
なお、どのルートを選択しても報酬は変わりません。
しかし、参加人数が多ければ多いほど、行動に規制がかかり本領を発揮できなくなりますのでご注意ください。
▶︎錬金術士ルート:錬金術士1名、アタッカー2名まで 難易度★★★★★
▶︎文武両道ルート:錬金術士1名、アタッカー3名まで 難易度★★★★★
▶︎戦闘ルート:錬金術士1名、アタッカー5名まで 難易度 ★★★★★ 』
「どれも選んでも、難易度はMAXなんだね」
「そうね……」
アスワンは選択肢を見て、胸にドンと右手の拳を叩き当てる。
「私は人魚の端くれではありますが、長剣の扱いに精通しております。連れて行っていただけるのなら、お役に立ってみせます」
言いながら、ディーテをチラリと見るアスワン。意中の相手にアピールしたいのだろう。それだけ、このダンジョンに懸ける熱意は本物だと言える。
「私は……申し訳ないのだけれど、戦闘には参加できないわ。涙を流せばヒーラーにはなれるかもしれないけれど。足手纏いにしかならないと思うの」
「当たり前じゃ。娘をダンジョンに潜らせる気など毛頭ない。……しかしワシも……。海中に現れた不思議なダンジョン。海の統括者として把握する義務があるが、時勢がまだ不安定な中、席を外すわけには参らん」
海竜は口調は荒いながらも、ミミリたちに申し訳なさそうな顔を向けている。
「どうする? ミミリ……。消去法でいくならば、錬金術士ルートか文武両道ルートだわ」
うさみは、ミミリに問う。
ゼラもミミリに一任するつもりだ。
「うん……。決めた。ごめんね、アスワンさん。私が決めたルートは一択!」
ーーピッ!
『錬金術士ルート:錬金術士1名、アタッカー2名まで 難易度★★★★★』
ミミリは魔力を込めた右手の人差し指で錬金術士ルートを選んで押した。
「このメンバーで闘いたいの。だって私たちの、大事な人を助けるために向かうダンジョンだから」
アスワンは、固く目を閉じた。
「きっとそうなるだろうと、予測しておりましたから。ポッと出の私はまず信用するに欠ける。ただ、せめてもの御協力ということで、このダンジョンの前でお待ちしています。皆様方のお帰りを」
「アスワンさん……」
アスワンは、初めてニコリと微笑んだ。
「実は私、尽くすのが趣味でしてね。苦ではないのでご安心を。海竜様とディーテ姫様は一度自宮殿にお帰りください。結果を報告に上がりますから」
「うむ……。信じても良いのじゃな、アスワンよ」
「はい。私の海竜様への忠誠心と、自身の名誉に懸けて」
「気をつけてね、ミミリ、うさみ、ゼラ」
「主らの幸運を祈っておる」
「どんなに時間が掛かろうかと、お待ち申し上げております。錬金術士様方」
「ありがとうございます」
ミミリたちは、海中ダンジョンに目を向ける。
「ポロンちゃん、よろしくお願いします!」
ーーポロン!
『お決まりになったようですね。
かしこまりました。
錬金術士ルート:錬金術士1名、アタッカー2名まで 難易度★★★★★
パーティーのルート選択を承りました。
……選択されたルートを準備中です。
……選択されたルートを準備中です。
そのまましばらくお待ちください』
やはり大まかな内容は審判の関所で経験したことと同じだった。
小高いダンジョンにぽっかりと空いた大きな空洞の内部を、うさみの魔法、「灯し陽」の穏やかな光で照らすことができなかったことも要因の1つだ。それは、海中宮殿の底知れぬ闇に、穏やかな光では太刀打ちできなかったわけではない。
与えられた選択肢の中から進みたいルートを選ばない限り、灯し陽の穏やかな光はもちろん、たとえ燦々と輝く陽の光さえも、このダンジョンの内部を照らすことはできないだろう。
ルートを選択した今、ダンジョンは、内包する先の見えない闇から、その姿を変えようとしている。
ダンジョンの入り口の先が見えない暗闇が、ぐにゃりと渦巻く。
まるで、どろりとした黒色の水の中に、黄色と赤の絵の具をぽたりと垂らして、木のロッドでぐるぐると、時計回りにかきまぜたように。これも、審判の関所と同じだった。
中心には、隊長のミミリを。
右隣には、副隊長のうさみを。
左隣には、隊員のゼラを。
ミミうさ探検隊は、ダンジョンと向かい合い、変わりゆくその内部を見て、ゴクリと息を飲んだ。
緊張感と高揚感。
そして同じぐらいの恐怖心。
ゼラは、ブルッと身体を震わせた。
「あら、怖いの? コシヌカシ」
ゼラはからかいの言葉を投げたうさみをチラリと見てから、改めてダンジョンを見据えた。
「まさか! 武者震いだ! ……ってかこのやり取り、審判の関所と一緒だな。でも、あの時の俺とは、もう違う。拳は震えていない。高鳴るんだ。俺も力になってやる、って。本物の武者震いだ」
「あら、頼もしいのねん」
「ああ。俺が2人を、守ってみせるから」
「ふふ、すごいなぁ。ゼラくんは。私はちょっと怖いよ。あ、そうだ。【酸素山菜ボンベ】、用意しておいてね」
「ああ」 「ええ。 ――! ハッ! ああああ」
そして一拍間を置いて、晴れた空色の大きな瞳をキラキラと輝かせて、顔を少し紅潮させてミミリは言った。
「ーー私、こわいけど、でも、それ以上に楽しみでもあるの! やっとアルヒの手がかりを掴むことができるから……!」
ーーポロン!
『大変長らくお待たせいたしました。ルートの準備が整いました。
《貴方のパーティーが選択したルート》
錬金術士ルート:錬金術士1名、アタッカー2名まで 難易度★★★★★
心の準備はよろしいですか?
なお、ダンジョンの中では【酸素山菜ボンベ】は必要ありません。
ご健闘をお祈りいたします。
さあ、行ってらっしゃい。
ーーよい冒険を!』
「あっ! ちょっと待って! ディーテがいないと、私の身体っていうか綿、もしかして私ビシャb……」
『ーーご武運を!』
「きゃああああああああ! 吸い込まれてくうううううぅぅ! ポロン! アンタ無慈悲よおおお」
さすがピロンの妹。
容赦ない。
うさみの悲鳴が、海中に響く……。
「みんな……頑張って……!」
ディーテたちは、両手を合わせて、ただ祈ることしかできなかった。
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