90 / 207
第3章 人と人とが行き交う街 アザレア
3-13 『見習い錬金術士ミミリの冒険の記録 6錬成目』
しおりを挟む
【シャボン石鹸 主婦の友 特殊効果:シミ、黄ばみ汚れに抜群の効果を発揮する。新品のような輝きと毛並みを取り戻させ、一定期間汚れを弾く効果も付与する】
白シャツにコーヒーをこぼしちゃって落ち込んでいるお客さんに元気を出してもらいたくて、その場で汚れを落としてみたら大変なことになっちゃった錬成アイテムだよ。
あの場でもたくさんの注文依頼をいただいたのに、次の日もその次の日もたくさんの注文が直接工房に入ったの。
うさみは、笑いが止まらないわ~って言ってるけど、私は腕が止まらないわ~ってなってるよ。あれからずーっと、石鹸作りしてるの。後で泡立ちの実の採集に行かないと。アザレアの森にもあるといいんだけど。
・泡立ちの実 ×3
・メシュメルの実の絞り汁 ×1
・【ミール液】 ×1
●特等依頼
コブシさんが武器屋さんに行くって言ってたから、こっそりお願いしてゼラくんを連れて行ってもらったの。
その間にね、うさみと一緒に冒険者ギルドに行ってゼラくんの両親の仇について書かれた特等依頼を見てきたんだ。しっかり、メモもとってきたの。
『【目撃依頼(特等)】
パーティーの平均冒険者等級:不問
《対象モンスター》
蛇頭のメデューサ 1体
《モンスターの特徴》
全身石のような色をしている、女性のような見た目のモンスター。長く太い髪はうねうねと動く生きた蛇。
見た者を石にするという言い伝えのほか、男性を魅了し意のままに操るのではないかという分析報告も多数挙がっている。
《今までに確認された出現エリア》
アザレアの森、瞑想の湖
《依頼達成報酬》
300,000エニー
《補足・注意事項》
このモンスターは非常に危険です。出会った場合は絶対に立ち向かわず、速やかに退避してください。目撃情報をもとに当ギルドで討伐メンバーを集い、責任を持って討伐いたします。』
特等依頼の手配書を書き写しながら、ゼラくんがどんな思いで過ごしてきたか想像を巡らせて、私もうさみも、自然と涙があふれてきて……。文字が涙で滲んじゃった。
泣く私たちを見て、冒険者ギルドの人たちに声をかけてもらったんだけど、心配をかけてしまうのが申し訳なくてそのまま工房に帰ってきたんだ。
工房に帰ってきて、2人で改めて顔を見合わせてみたらお互いに目が真っ赤になっちゃってて、ゼラくんたちが帰ってくるまでに何とかしなきゃ~! って気合いを入れたんだけど、
「今まで泣いてただろ? どうしたんだ?」
……って、何故だかゼラくんにはバレちゃったんだ。
なんでもないよって、誤魔化したらそれ以上深く聞かないでいてくれて。
優しく微笑んでキッチンへ向かって、美味しいはちみつパンケーキを焼いてくれたの。
そしたらまた涙がぽろぽろあふれてきて、結局泣いちゃったんだ。
ゼラくんは困ったように笑ってから、何も言わないで私たちの頭をずっと撫でていてくれたんだよ。
☆これまでの冒険の感想☆
審判の関所を抜けた先にあったのは、優しい人たちであふれるアザレア。
来たばかりだというのに、たくさんの人に出会って、前から知り合いだったみたいに優しくしてくれたよ。
チョコレートクッキーをくれた優しい女の人。大きな盾がかっこいいガウラさん。心優しいバルディさんに、親しみやすいコブシさん。笑顔が可愛いデイジーさん。
そして、そして……。
凛とした立ち振る舞いが素敵なローデさん!
たくさんの出会いがあって、助けがあって、工房をもつことができて、カフェの店員さんも経験できたよ。
見知らぬ土地へ行くことの不安もあったけれど、それ以上に期待感もあったけれど。
期待していた以上に、素敵なことであふれていたよ。勇気を出して、冒険を始めてよかったなって、心から思うの。
もちろん、冒険の目的は忘れていないよ。
スズツリー=ソウタさんを探すこと。
【アンティーク・オイル】を探すこと。
私のママとパパを探すこと。
そして、もう1つ。
私の冒険に新たに加わった目的もある。
ーーゼラくんの両親の仇、特等依頼のモンスター、蛇頭のメデューサを私たちで探しだすこと。
……探しだした後は、どうするかまだわからないけれど。
ゼラくんを苦しめている元凶を取り除く手助けをしたいって、心から思うの。
……ゼラくん。
ご両親を亡くして、これまでどうやって生きてきたの?
出会った時に教えてくれた、小さい家族のために悪いことしようとしたって言っていた、その小さい家族はその後どうなったの?
暗くて狭いところが苦手な原因は、あのモンスターのせいなの?
心優しいゼラくんだからこそ、余計に苦しかったこと、たくさんあったでしょ?
ゼラくん。
ゼラくん。
ゼラくん……。
私とうさみがついてるからね。
アルヒもポチも、それにアユムもライちゃんも。
みんながついてるから。
くまゴロー先生も、ピロンちゃんも。
バルディさんやガウラさん。
コブシさんたちだって、きっと力になってくれるから。
冒険の目的を達成するためには、たくさん依頼を受けて、工房も有名にして、いっぱい情報を集めなきゃいけないね。
絶対1人で頑張らせないから。
みんなで頑張っていこうね。
私たちの冒険の目的を、叶えるために。
私の冒険の記録が、貴方のお役に立てますように。
著者:見習い錬金術士 ミミリ
白シャツにコーヒーをこぼしちゃって落ち込んでいるお客さんに元気を出してもらいたくて、その場で汚れを落としてみたら大変なことになっちゃった錬成アイテムだよ。
あの場でもたくさんの注文依頼をいただいたのに、次の日もその次の日もたくさんの注文が直接工房に入ったの。
うさみは、笑いが止まらないわ~って言ってるけど、私は腕が止まらないわ~ってなってるよ。あれからずーっと、石鹸作りしてるの。後で泡立ちの実の採集に行かないと。アザレアの森にもあるといいんだけど。
・泡立ちの実 ×3
・メシュメルの実の絞り汁 ×1
・【ミール液】 ×1
●特等依頼
コブシさんが武器屋さんに行くって言ってたから、こっそりお願いしてゼラくんを連れて行ってもらったの。
その間にね、うさみと一緒に冒険者ギルドに行ってゼラくんの両親の仇について書かれた特等依頼を見てきたんだ。しっかり、メモもとってきたの。
『【目撃依頼(特等)】
パーティーの平均冒険者等級:不問
《対象モンスター》
蛇頭のメデューサ 1体
《モンスターの特徴》
全身石のような色をしている、女性のような見た目のモンスター。長く太い髪はうねうねと動く生きた蛇。
見た者を石にするという言い伝えのほか、男性を魅了し意のままに操るのではないかという分析報告も多数挙がっている。
《今までに確認された出現エリア》
アザレアの森、瞑想の湖
《依頼達成報酬》
300,000エニー
《補足・注意事項》
このモンスターは非常に危険です。出会った場合は絶対に立ち向かわず、速やかに退避してください。目撃情報をもとに当ギルドで討伐メンバーを集い、責任を持って討伐いたします。』
特等依頼の手配書を書き写しながら、ゼラくんがどんな思いで過ごしてきたか想像を巡らせて、私もうさみも、自然と涙があふれてきて……。文字が涙で滲んじゃった。
泣く私たちを見て、冒険者ギルドの人たちに声をかけてもらったんだけど、心配をかけてしまうのが申し訳なくてそのまま工房に帰ってきたんだ。
工房に帰ってきて、2人で改めて顔を見合わせてみたらお互いに目が真っ赤になっちゃってて、ゼラくんたちが帰ってくるまでに何とかしなきゃ~! って気合いを入れたんだけど、
「今まで泣いてただろ? どうしたんだ?」
……って、何故だかゼラくんにはバレちゃったんだ。
なんでもないよって、誤魔化したらそれ以上深く聞かないでいてくれて。
優しく微笑んでキッチンへ向かって、美味しいはちみつパンケーキを焼いてくれたの。
そしたらまた涙がぽろぽろあふれてきて、結局泣いちゃったんだ。
ゼラくんは困ったように笑ってから、何も言わないで私たちの頭をずっと撫でていてくれたんだよ。
☆これまでの冒険の感想☆
審判の関所を抜けた先にあったのは、優しい人たちであふれるアザレア。
来たばかりだというのに、たくさんの人に出会って、前から知り合いだったみたいに優しくしてくれたよ。
チョコレートクッキーをくれた優しい女の人。大きな盾がかっこいいガウラさん。心優しいバルディさんに、親しみやすいコブシさん。笑顔が可愛いデイジーさん。
そして、そして……。
凛とした立ち振る舞いが素敵なローデさん!
たくさんの出会いがあって、助けがあって、工房をもつことができて、カフェの店員さんも経験できたよ。
見知らぬ土地へ行くことの不安もあったけれど、それ以上に期待感もあったけれど。
期待していた以上に、素敵なことであふれていたよ。勇気を出して、冒険を始めてよかったなって、心から思うの。
もちろん、冒険の目的は忘れていないよ。
スズツリー=ソウタさんを探すこと。
【アンティーク・オイル】を探すこと。
私のママとパパを探すこと。
そして、もう1つ。
私の冒険に新たに加わった目的もある。
ーーゼラくんの両親の仇、特等依頼のモンスター、蛇頭のメデューサを私たちで探しだすこと。
……探しだした後は、どうするかまだわからないけれど。
ゼラくんを苦しめている元凶を取り除く手助けをしたいって、心から思うの。
……ゼラくん。
ご両親を亡くして、これまでどうやって生きてきたの?
出会った時に教えてくれた、小さい家族のために悪いことしようとしたって言っていた、その小さい家族はその後どうなったの?
暗くて狭いところが苦手な原因は、あのモンスターのせいなの?
心優しいゼラくんだからこそ、余計に苦しかったこと、たくさんあったでしょ?
ゼラくん。
ゼラくん。
ゼラくん……。
私とうさみがついてるからね。
アルヒもポチも、それにアユムもライちゃんも。
みんながついてるから。
くまゴロー先生も、ピロンちゃんも。
バルディさんやガウラさん。
コブシさんたちだって、きっと力になってくれるから。
冒険の目的を達成するためには、たくさん依頼を受けて、工房も有名にして、いっぱい情報を集めなきゃいけないね。
絶対1人で頑張らせないから。
みんなで頑張っていこうね。
私たちの冒険の目的を、叶えるために。
私の冒険の記録が、貴方のお役に立てますように。
著者:見習い錬金術士 ミミリ
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
忠犬ハジッコ
SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。
「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。
※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、
今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。
お楽しみいただければうれしいです。

悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
かつて聖女は悪女と呼ばれていた
楪巴 (ゆずりは)
児童書・童話
「別に計算していたわけではないのよ」
この聖女、悪女よりもタチが悪い!?
悪魔の力で聖女に成り代わった悪女は、思い知ることになる。聖女がいかに優秀であったのかを――!!
聖女が華麗にざまぁします♪
※ エブリスタさんの妄コン『変身』にて、大賞をいただきました……!!✨
※ 悪女視点と聖女視点があります。
※ 表紙絵は親友の朝美智晴さまに描いていただきました♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる