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第2章 審判の関所
2-23 強い想いは決意に変えて、固い決意は力に変える
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「うさみか、それとも、ゼラくんか……?」
力なく座り込み、泣きじゃくりながら遠方を見るミミリ。
左奥のガラス瓶に閉じ込められたうさみ。上から徐々に注ぎ込まれる水は、すでにうさみの胸あたりまでの水位に。小さなうさみは、上から降り注ぐ水を避けるためにガラスの壁に寄りかかり、ふるふると震えて泣いている。
右奥のガラス瓶に閉じ込められたゼラ。暗く狭い空間が苦手だと思われるゼラは先程まで胸を押さえて苦しんでいたが、今は両手で喉を押さえて苦しんでいる。
2人の苦しみが、手に取るように伝わってくる。
……うさみの方へ走って行ったら、ゼラくんは死んじゃうかもしれない。ゼラくんの方に走って行ったら、そしたらうさみが……。でも、どっちかを選ばなかったら、2人とも死んじゃうかもしれない。どうしたらいいの……?
ミミリの胸中に渦巻く恐怖。ミミリの選択に2人の命運が懸かっているとなると、その重圧も恐怖もひとしお。
ミミリは頭の上からドロリとした黒い絵の具を被せられたように、思考も心も真っ黒に汚れていく。ミミリが頭で想い描いた2人の笑顔も、真っ黒な絵の具で塗りつぶされた。
「……2人の命を、選ぶことなんて……」
そうこう考えているうちに、閉じ込められた2人は更なる窮地に陥ってゆく。
こんな時ほど、2人と過ごした思い出は走馬灯のように駆け抜ける。
小さく可愛らしいうさみ。それでいて勝ち気なところも愛おしい。ミミリが幼い時からずっと一緒に暮らしてきた、大事な大事な可愛い家族。
優しく頼りがいのあるゼラ。ニカッと笑うゼラの笑顔は降り注ぐ太陽のように眩しいほど。黒いエプロンを身につけてはちみつパンケーキを焼く姿が思い浮かぶ。大事な大事な新しい家族。
ミミリは瞳を閉じて、自分の心と素直に向き合う。
……うん、無理だよ……。私には、無理……。そう、無理なんだ……!
「どうしたのですか、ミミリさん。急かして心苦しくはありますが、どちらかを選べば一方は助けられるのですよ!」
瞳を閉じて、涙を流しながら座り込んでいたミミリ。
くまゴロー先生の催促の声で、ミミリは決意を固めた。
「……くまゴロー先生! 私には、無理です。2人の命を選ぶなんて、私にはできない! 私は2人とも、助けてみせる‼︎」
ミミリは涙を手のひらで拭って、勢いよく顔を上げ、そして立ち上がる。
「いいのですか⁉︎ 2人とも失うことになるのかもしれないのですよ⁉︎」
と、惑わすような先生の言葉にも、ミミリはもう、迷わない。俯きもしない。
「……私は絶対に諦めない‼︎」
ミミリの晴れた空色の瞳の奥に、決意の炎が赤く灯った。
ミミリは右手首の華奢な黄金色のブレスレットと小さな紅い猫のチャームにすべてを懸ける。
ミミリの脳内に流れるのは、雷竜から授かった、あの加護の言葉。
『我、雷竜は、汝ミミリと共に在る。我は汝の鉾となり、また苦境を打ち破る一矢となろう。そして常に盾となる。授けよう、~雷神の加護~』
「助けて、雷様……! ……ライちゃん、お願い、力を貸して……!」
ミミリは瞳を閉じて祈りを捧げる。
すると、黄金のブレスレットは黄金色の眩い光を放ちはじめる。そして、光は宙に文字として綴られた。
『汝の祈り、しかと受け取った。我、雷竜は、苦境を打ち破る、汝の一矢となろう』
そして黄金の文字はミミリの両手に集約される。左手には輝く金の一張の弓。右手には、先端が二股に分かれた個性的な矢。
「……ライちゃん、ありがとう!」
……想いを乗せて、矢を放つのじゃ、小娘!
「はい!」
脳内に直接語りかけてくる雷竜の声。
ミミリは背筋を正してうさみとゼラに狙いを定める。その姿を見て、くまゴロー先生は驚きを隠せない。
「まさか、雷竜様から加護まで授かっているとは。ミミリさん、貴方は、一体……」
驚くくまゴロー先生を背景に。
ミミリは、願いを込めて、矢を放った。
……絶対に、助けてみせる。私の想い、2人に届いて!
ミミリの右手から放たれた一射。先端で二股に分かれた矢は、たちまち二本の矢に変わる。
――ヒュウゥゥ!
うさみとゼラ。
2人を捉えたガラスの瓶目掛けて、黄金の筋を描いて真っ直ぐに飛ぶ。
――ガシャアアアン!
二本の矢はガラス瓶に見事、命中した。
矢に穿たれたガラス瓶は嘘のように細かく砕け、突風に煽られる砂のように、輝きを放ちながら四方へ散った。
苦しみの渦中にいたうさみもゼラも無事に解放され、2人とも両手両膝をついて肩で息をしている。
そして。
落ち着きを取り戻した2人は、優しい笑顔をミミリに向けて――
「「ありがとう……、ミミリ……」」
――と言い残し、黄金の微粒子となって天高く舞い上がっていった。
「……え、嘘! 待って! どうして……⁉︎」
ミミリは天へ昇った2人の名残り、宙に浮かぶ金の光に手を翳して呼びかける。
2人はミミリに返答することはなかったが、代わりに光となってミミリを照らした。
暗闇の空間を包む、黄金の靄。
輝くだけでない。暖かみもある靄に包まれて、ミミリは漸く落ち着きを取り戻し、天を仰いだ。
ミミリの脳内に、2人の声は直接響く。
大丈夫だよ、心配しないでという、優しい声が。
「……そっか、これが、私に課された審判だったんだ」
ミミリに課された、4時間目、道徳の時間。
ミミリの想いや決意を問われた審判は、決して諦めない固い決意が身を結び、無事に合格の運びとなった。
「……ミミリ! ……ミミリ!」
「……ミミリ! 目を開けてくれ!」
――ミミリを呼ぶ聞き慣れた声。
ミミリが目を開けると、そこには真っ白な天井が。白く発光する長細い何かが、二本ずつ天井に埋め込まれている。
「あれ、ここは、どこ……?」
気づけば、ミミリは横になっていた。白いシーツに白い枕。ミミリはベッドに寝かされていたようだ。
……そして。
枕の横には灰色の可愛らしいうさみ。
反対側にはベットの端に両手をかけるゼラ。
2人とも、心配そうにミミリの顔を覗き込んでいる。
「……よかったぁ。2人とも、無事だったんだね」
ミミリの目尻から、涙がすうっとこぼれて枕を濡らす。ミミリは泣きながらも、ふにゃっと顔を綻ばせて2人の無事を喜んだ。
「もっ、もう! ミミリってば、無茶、するんだから……」
「ほんとだよ。でも、そうさせてしまったのは、俺たちだから。ごめんな、ミミリ。俺たち、全部、全部見てたから。助けてくれて、ありがとう」
うさみもゼラも泣きながらミミリに感謝を伝える。
「見ててくれたの? ありがとう。夢なようで、夢じゃなかったの? よくわからないけど、2人が無事で本当に良かった」
――ガラガラ!
部屋の戸が開けられる音。
だんだんと落ち着いて、環境に慣れてきたミミリは漸く背景に目を向けられるようになった。
白い天井に白いベッド。白を基調としているかと思ったが、このベッドは薄ピンク色のカーテンで囲われていた。カーテンを支えるのは、銀のレール。
――シャッ!
「失礼します」
カーテンの隙間から顔を覗かせたのは、くまゴロー先生だった。
「ミミリさん。4時間目、道徳の時間、クリアおめでとうございます。本当にお疲れ様でした」
「へへへ。ありがとうございます。くまゴロー先生」
あの空間でのくまゴロー先生の仕打ちに関わらず、変わらぬ態度で接するミミリ。
負い目のあったくまゴロー先生は、優しくおおらかなミミリの器の広さに、感謝で頭が下がるばかりだった。
「……貴方は、本当に……」
くまゴロー先生の頭の中に、ピロンが体育館でミミリ向けて言った、ある言葉がリフレインする。
『……貴方には、恨んだり、憎んだり、そういう感情はないのですね』
……ミミリさんは、常に前を向いている。だからきっと、雷竜様も加護を授けたのでしょう。決意の強さは、力に変わる。そういった意味では、ミミリさんは偉大なる錬金術士に比肩するくらい、強いかもしれないですね。
くまゴロー先生は想いを巡らせてから、ミミたちに労いの言葉をかける。
「ここまで、お疲れ様でした。4時間目の振り返りは、睡眠の後に。襲ってくるモンスターはいませんから、どうぞこの『保健室』でゆっくり身体を休めてください」
「はい、ありがとうございます、くまゴロー先生」
ミミリは心身共に疲れているのか、ふにゃりと力なく笑っている。そしてそのミミリへ寄り添う、小さな小さな可愛らしいうさみ。あまりにも可愛らしい少女が2人。
……これは、危険ですね。
「この保健室には何台ものベッドがありますから、ゼラくんは一番端のベッドで寝てくださいね。みなさんが目覚めるまで私もこの保健室に常駐しておりますから、そのつもりで」
「……? はい、わかりました」
何故か語気を強めて言ったくまゴロー先生に首を傾げながらも、ゼラは部屋の隅のベッドに横たわる。横になってみて、ゼラは改めて実感した。
思った以上に、身体も、そして心も。ひとたび気を抜くと、容易に力を込められないほどにグッタリと疲れていた。
ゼラは重たい瞼を、ゆっくり閉じる。
そして決意を、胸に刻む。
……もっと、もっと力をつける。ミミリも、うさみも苦しめなくて済むような力を。2人のことは、俺が守ってみせる。絶対に……!
力なく座り込み、泣きじゃくりながら遠方を見るミミリ。
左奥のガラス瓶に閉じ込められたうさみ。上から徐々に注ぎ込まれる水は、すでにうさみの胸あたりまでの水位に。小さなうさみは、上から降り注ぐ水を避けるためにガラスの壁に寄りかかり、ふるふると震えて泣いている。
右奥のガラス瓶に閉じ込められたゼラ。暗く狭い空間が苦手だと思われるゼラは先程まで胸を押さえて苦しんでいたが、今は両手で喉を押さえて苦しんでいる。
2人の苦しみが、手に取るように伝わってくる。
……うさみの方へ走って行ったら、ゼラくんは死んじゃうかもしれない。ゼラくんの方に走って行ったら、そしたらうさみが……。でも、どっちかを選ばなかったら、2人とも死んじゃうかもしれない。どうしたらいいの……?
ミミリの胸中に渦巻く恐怖。ミミリの選択に2人の命運が懸かっているとなると、その重圧も恐怖もひとしお。
ミミリは頭の上からドロリとした黒い絵の具を被せられたように、思考も心も真っ黒に汚れていく。ミミリが頭で想い描いた2人の笑顔も、真っ黒な絵の具で塗りつぶされた。
「……2人の命を、選ぶことなんて……」
そうこう考えているうちに、閉じ込められた2人は更なる窮地に陥ってゆく。
こんな時ほど、2人と過ごした思い出は走馬灯のように駆け抜ける。
小さく可愛らしいうさみ。それでいて勝ち気なところも愛おしい。ミミリが幼い時からずっと一緒に暮らしてきた、大事な大事な可愛い家族。
優しく頼りがいのあるゼラ。ニカッと笑うゼラの笑顔は降り注ぐ太陽のように眩しいほど。黒いエプロンを身につけてはちみつパンケーキを焼く姿が思い浮かぶ。大事な大事な新しい家族。
ミミリは瞳を閉じて、自分の心と素直に向き合う。
……うん、無理だよ……。私には、無理……。そう、無理なんだ……!
「どうしたのですか、ミミリさん。急かして心苦しくはありますが、どちらかを選べば一方は助けられるのですよ!」
瞳を閉じて、涙を流しながら座り込んでいたミミリ。
くまゴロー先生の催促の声で、ミミリは決意を固めた。
「……くまゴロー先生! 私には、無理です。2人の命を選ぶなんて、私にはできない! 私は2人とも、助けてみせる‼︎」
ミミリは涙を手のひらで拭って、勢いよく顔を上げ、そして立ち上がる。
「いいのですか⁉︎ 2人とも失うことになるのかもしれないのですよ⁉︎」
と、惑わすような先生の言葉にも、ミミリはもう、迷わない。俯きもしない。
「……私は絶対に諦めない‼︎」
ミミリの晴れた空色の瞳の奥に、決意の炎が赤く灯った。
ミミリは右手首の華奢な黄金色のブレスレットと小さな紅い猫のチャームにすべてを懸ける。
ミミリの脳内に流れるのは、雷竜から授かった、あの加護の言葉。
『我、雷竜は、汝ミミリと共に在る。我は汝の鉾となり、また苦境を打ち破る一矢となろう。そして常に盾となる。授けよう、~雷神の加護~』
「助けて、雷様……! ……ライちゃん、お願い、力を貸して……!」
ミミリは瞳を閉じて祈りを捧げる。
すると、黄金のブレスレットは黄金色の眩い光を放ちはじめる。そして、光は宙に文字として綴られた。
『汝の祈り、しかと受け取った。我、雷竜は、苦境を打ち破る、汝の一矢となろう』
そして黄金の文字はミミリの両手に集約される。左手には輝く金の一張の弓。右手には、先端が二股に分かれた個性的な矢。
「……ライちゃん、ありがとう!」
……想いを乗せて、矢を放つのじゃ、小娘!
「はい!」
脳内に直接語りかけてくる雷竜の声。
ミミリは背筋を正してうさみとゼラに狙いを定める。その姿を見て、くまゴロー先生は驚きを隠せない。
「まさか、雷竜様から加護まで授かっているとは。ミミリさん、貴方は、一体……」
驚くくまゴロー先生を背景に。
ミミリは、願いを込めて、矢を放った。
……絶対に、助けてみせる。私の想い、2人に届いて!
ミミリの右手から放たれた一射。先端で二股に分かれた矢は、たちまち二本の矢に変わる。
――ヒュウゥゥ!
うさみとゼラ。
2人を捉えたガラスの瓶目掛けて、黄金の筋を描いて真っ直ぐに飛ぶ。
――ガシャアアアン!
二本の矢はガラス瓶に見事、命中した。
矢に穿たれたガラス瓶は嘘のように細かく砕け、突風に煽られる砂のように、輝きを放ちながら四方へ散った。
苦しみの渦中にいたうさみもゼラも無事に解放され、2人とも両手両膝をついて肩で息をしている。
そして。
落ち着きを取り戻した2人は、優しい笑顔をミミリに向けて――
「「ありがとう……、ミミリ……」」
――と言い残し、黄金の微粒子となって天高く舞い上がっていった。
「……え、嘘! 待って! どうして……⁉︎」
ミミリは天へ昇った2人の名残り、宙に浮かぶ金の光に手を翳して呼びかける。
2人はミミリに返答することはなかったが、代わりに光となってミミリを照らした。
暗闇の空間を包む、黄金の靄。
輝くだけでない。暖かみもある靄に包まれて、ミミリは漸く落ち着きを取り戻し、天を仰いだ。
ミミリの脳内に、2人の声は直接響く。
大丈夫だよ、心配しないでという、優しい声が。
「……そっか、これが、私に課された審判だったんだ」
ミミリに課された、4時間目、道徳の時間。
ミミリの想いや決意を問われた審判は、決して諦めない固い決意が身を結び、無事に合格の運びとなった。
「……ミミリ! ……ミミリ!」
「……ミミリ! 目を開けてくれ!」
――ミミリを呼ぶ聞き慣れた声。
ミミリが目を開けると、そこには真っ白な天井が。白く発光する長細い何かが、二本ずつ天井に埋め込まれている。
「あれ、ここは、どこ……?」
気づけば、ミミリは横になっていた。白いシーツに白い枕。ミミリはベッドに寝かされていたようだ。
……そして。
枕の横には灰色の可愛らしいうさみ。
反対側にはベットの端に両手をかけるゼラ。
2人とも、心配そうにミミリの顔を覗き込んでいる。
「……よかったぁ。2人とも、無事だったんだね」
ミミリの目尻から、涙がすうっとこぼれて枕を濡らす。ミミリは泣きながらも、ふにゃっと顔を綻ばせて2人の無事を喜んだ。
「もっ、もう! ミミリってば、無茶、するんだから……」
「ほんとだよ。でも、そうさせてしまったのは、俺たちだから。ごめんな、ミミリ。俺たち、全部、全部見てたから。助けてくれて、ありがとう」
うさみもゼラも泣きながらミミリに感謝を伝える。
「見ててくれたの? ありがとう。夢なようで、夢じゃなかったの? よくわからないけど、2人が無事で本当に良かった」
――ガラガラ!
部屋の戸が開けられる音。
だんだんと落ち着いて、環境に慣れてきたミミリは漸く背景に目を向けられるようになった。
白い天井に白いベッド。白を基調としているかと思ったが、このベッドは薄ピンク色のカーテンで囲われていた。カーテンを支えるのは、銀のレール。
――シャッ!
「失礼します」
カーテンの隙間から顔を覗かせたのは、くまゴロー先生だった。
「ミミリさん。4時間目、道徳の時間、クリアおめでとうございます。本当にお疲れ様でした」
「へへへ。ありがとうございます。くまゴロー先生」
あの空間でのくまゴロー先生の仕打ちに関わらず、変わらぬ態度で接するミミリ。
負い目のあったくまゴロー先生は、優しくおおらかなミミリの器の広さに、感謝で頭が下がるばかりだった。
「……貴方は、本当に……」
くまゴロー先生の頭の中に、ピロンが体育館でミミリ向けて言った、ある言葉がリフレインする。
『……貴方には、恨んだり、憎んだり、そういう感情はないのですね』
……ミミリさんは、常に前を向いている。だからきっと、雷竜様も加護を授けたのでしょう。決意の強さは、力に変わる。そういった意味では、ミミリさんは偉大なる錬金術士に比肩するくらい、強いかもしれないですね。
くまゴロー先生は想いを巡らせてから、ミミたちに労いの言葉をかける。
「ここまで、お疲れ様でした。4時間目の振り返りは、睡眠の後に。襲ってくるモンスターはいませんから、どうぞこの『保健室』でゆっくり身体を休めてください」
「はい、ありがとうございます、くまゴロー先生」
ミミリは心身共に疲れているのか、ふにゃりと力なく笑っている。そしてそのミミリへ寄り添う、小さな小さな可愛らしいうさみ。あまりにも可愛らしい少女が2人。
……これは、危険ですね。
「この保健室には何台ものベッドがありますから、ゼラくんは一番端のベッドで寝てくださいね。みなさんが目覚めるまで私もこの保健室に常駐しておりますから、そのつもりで」
「……? はい、わかりました」
何故か語気を強めて言ったくまゴロー先生に首を傾げながらも、ゼラは部屋の隅のベッドに横たわる。横になってみて、ゼラは改めて実感した。
思った以上に、身体も、そして心も。ひとたび気を抜くと、容易に力を込められないほどにグッタリと疲れていた。
ゼラは重たい瞼を、ゆっくり閉じる。
そして決意を、胸に刻む。
……もっと、もっと力をつける。ミミリも、うさみも苦しめなくて済むような力を。2人のことは、俺が守ってみせる。絶対に……!
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