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第1章 まだ見ぬ世界へ想いを馳せる君へ
1-23 森の窪地の舞踏会
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「お願い、誰か、嘘って言ってよ……」
森の中。
太い幹から派生した、しなる枝と若い葉を押しのけて、更に眼前の深い緑の草を掻き分けた先。
……窪地にて、うさみは目を疑いたくなる光景を目の当たりにする。
「ーーミミリ‼︎」
うさみの叫びが、森へと響いた。
ーー遡ること半刻前。
ミミリたちは、野営地を求め、森の中で適所を探していた。
希望は短く柔らかい草が群生しているような場所。それが叶わなければ最低限、ぬかるみがなく、地盤が安定している所。
そして、気づけば既にモンスターに囲まれていた、ということがないように、モンスターが隠れやすい藪などが周りにないことも条件として挙げられる。
見晴らしがよく開けたところか、若しくは山陵の麓まで行って、地層を背に野営をするのもいいかもしれない。
なるべくモンスターに出会わないよう、ミミリたちは普段からモンスターがよく通っている道であろう、地が踏み固められたけもの道を避け、敢えて足場の悪い木の間を歩いていた。
樹間から、湿気を帯びた風が顔を撫でる。
湿気を帯びた風ですら、汗が冷やされ寒気を感じる。
まだ昼下がりだというのに、厚い雲が陽を隠していることや、木の枝と幾重もの葉が創り出す緑のカーテンが、森の中気温を上がりづらくしているのだろう。
ミミリは少し肌寒く感じ、クシュンとひとつクシャミをして、プルプルッと身震いした。
「ミミリ、大丈夫か?」
ミミリの後方から、心配そうにゼラが声をかける。
「ありがとう、ゼラくん。大丈夫だよ。もう少ししたら、ローブを着ようかな。それか、いい野営地を見つけたらもっと暖かい服に着替えようかな」
「そうだな、そうしよう。病み上がりだから、大事にしような」
「ありがとう!」
ミミリの猫のしっぽは楽しそうに左右に揺れる。病み上がりの体調に反して、ご機嫌はいいようだ。
「新しい採集作業の服、楽しみなんだ! アルヒが手直しして作ってくれたんだよ。新しい服にも、ゼラくんが好きなしっぽがあるけど、あんまり見ないでね?」
ミミリは猫のしっぽの根元、おしりを押さえて、むくれ面で振り返りながらゼラを軽く睨んだ。
「ーー‼︎ だからさ、ミミリ、それは冤罪なんだって。まぁ、見ないと言ったら嘘になるけど、やましい気持ちはないからな?」
「「ふーーーーーーん」」
ゼラの言葉を信じていない者がもう1匹加わって返事をしたようだが、ゼラはこれ以上反論しなかった。
反論しなかったのは、理由があるから。
冤罪だとは思いつつも若干良心が痛む気がするのはただの気のせいであってほしいと、ゼラは考えていたからだった。
「なにか、いるようですね」
先頭を行くアルヒは、先にいる何かを感じ取ったようだ。
時を同じくして、うさみもまた然り。
「探索魔法により感知! この先にモンスターが複数っていう表現でいいのか悩むくらいたくさんいるわ。色はグリーン。危険度は低いから大丈夫そうね」
「行ってみましょう。おそらく、この茂みの向こうです」
ミミリたちは、気を引き締めて、眼前に茂る草を掻き分けた。
最初に目が入ったのは、緩やかな窪地に広がる、色彩豊かなテトラ型の鞘を実らせた草だった。
そして窪地の中央には、大きな木が一本。
……どうやら、テトラ型の鞘が色鮮やかというよりは、鞘の表皮が薄いからなのか、白い半透明の鞘から中身の種なのか実なのかわからないものの多様な色が透けて見えているだけのようだ。
赤に黄にオレンジに。もっと色があるかもしれない。
風通りがあまり良くなさそうな窪地の底の草へも、風が揺らいだのかテトラ型の鞘が鈴なりに揺れる。
カタカタ、カサカサ、サラサラ……。
鞘の中身の形状で奏でる音が違うのか。
小気味いいほど耳障りのいい音が聞こえて、危険な森の中にいるということすら忘れてしまうほどだった。
「綺麗な音だね……」
「本当ね」
「夢みたいだ……」
「どうやら、悪い印象は与えなかったようですね」
アルヒは意味深な発言をする。
「……アルヒ、どういう意味?」
「私たちが彼らに与えた印象が、悪くはなかったという意味です」
ミミリの質問にアルヒは答えた。
「それって……」
と、さらに質問をしようとした矢先、足下で、何かがモゾモゾと動いて、ミミリの足を触った気がした。
「ひゃあ‼︎」
「ミミリ、大丈夫か⁉︎」
「何かが今、私の足を触った気がして」
「ゼラじゃないわよねぇ。どさくさに紛れて」
「おい! また誤解を生むようなこと言うなよ、うさみ!」
「やっぱり、私の足、触ってたんだ……」
ミミリは震えながら、真下を見ている。
「……ちょ、ミミリまで……」
「見て! ホラ! 鞘が揺れたの、風のせいじゃなかったんだ‼︎ 動いてる! この草‼︎」
「え……⁇」
ミミリが指した指の先を見てみると、確かに草が動いている。
……気のせいではない。
テトラ型の鞘をつけた草は、根を張るはずの地に根(あし)をつけて、針葉のような長い葉を左右に振って、動いている。
注視して見てみると、テトラ型の鞘をつけた草は全て、動いていた。
風で揺られていたのではない。自発的に動いていたのだ。
…動いているというのは、語弊がある。
訂正すると、踊っている、が正しい。
自分達の鞘の実、楽器が奏でる、小気味良いメロディーに合わせて。
ミミリたちは踏み入れてしまったのだ。
森の窪地の舞踏会へ。
ーーそして場面は冒頭へ。
「お願い、誰か、嘘って言ってよ…。ーーミミリ‼︎」
うさみの悲鳴を背景に。
ミミリは踊っていた。
テトラ型の鞘をつけた草と、社交ダンスを。
いや、正しくは、魅惑のスパイスを鞘に秘めた、「魅惑草」とペアになって。
魅惑草たちが奏でる、メロディーに乗せて。
魅惑草の長い針葉の葉は優しくミミリの腰に添えられて。
一本の大きな木の周りを、ミミリとペアになった魅惑草を含めて、いくつかの魅惑草がペアとなって踊っている。
一本の木を中心にして、時計の針を回すかのように、円を描くように。
社交ダンスが披露される舞台を囲んで、たくさんの魅惑草が観客となり、また演奏者となり、ひとつの舞台を創り上げていた。
ミミリは魅惑草にリードされるまま、生まれて初めての社交ダンスを踊る。
優美なステップ、そしてターン。
「貴方が差し伸べてくれた手、なんとなくの気持ちでそっと触れてみたけど、まさかこんなに素敵なダンスのお申し込みだったなんて!」
楽しそうに踊るミミリを遠目から見ているうさみたち。
「ねぇ。嘘って言ってよ、コシヌカシ」
「……俺は夢だと思ってる」
「……アンタも踊ってきたらどう?」
「いや、俺は観客に徹するよ。うさみこそ踊ってきたらどうなんだ?」
「ううん、私も右に同じ。」
そんな二人を横目に、アルヒは思い出に浸っていた。
「やはり、ミミリはご主人様に似ていますね。臆することなく挑戦し、不思議な事象と向き合っていく姿。ご主人様の姿が、目に浮かぶようです」
ーーーーーカサカサ、サラサラ……‼︎
メロディーの終わりと共に、ミミリがダンスを終えると、魅惑草は一斉に鞘を揺らし、賛辞を送った。
「拍手、してくれてるのかな?」
ミミリはワンピースの裾を軽く摘んで、ペアとなった魅惑草へ頭を下げてお礼した。
魅惑草は針葉の長い葉を差し伸べ、ミミリが添えた手に、草の穂先を軽く当てた。
……ミミリの手の甲にキスをするかのように。
「……ッ!」
観客として、舞踏会を観ていたゼラ。
腕組みする手の指で、肘の部分の服をギュッと掴んでミミリに声をかけようとした瞬間、
いくつかを残して、その大多数の魅惑草は、窪地に根を張って動かなくなった。
ーードサッ、ドサッ。
根を張った魅惑草から、また一つ、また一つと魅惑のスパイスを収めた鞘が地に落ちる。
それはそれは、たくさんの量が。
ミミリのペアだった魅惑草は自分で鞘をもぎ、虹色の魅惑のスパイスが入った鞘をミミリの手のひらへそっと乗せた。
……そして、ミミリのマジックバックの中へ、自ら入って行った。
「エッ⁉︎」
いくつか残った他の魅惑草、ミミリの周りで社交ダンスを踊っていた草々も同様に、ミミリの足下に多様な色魅惑のスパイスを収めた鞘を置いて、自らマジックバッグの中へ入って行った。
ミミリは、
・魅惑のスパイス(虹色)
・魅惑のスパイス(赤)、他各色
・魅惑草の苗木
を手に入れた。
「エエエエエエエ~⁉︎⁉︎ な、なんか、バッグの中に入ってきてくれたよ? あと、なんかたくさんもらったみたい!」
この状況に、一番驚いているのはミミリだった。今になって慌てふためき、動揺している。
「ミミリ、素晴らしいダンスでしたよ。」
と言いながら、アルヒは地面に魅惑草が置いて行ってくれた鞘を拾い、ミミリの動揺など意にも介さない。
「あのさ、アルヒさんはもちろん強いんだけどさ」
「うん。強いわよね」
「でもさ、俺、一番強いのはミミリなんじゃないかって思うわ」
「うん、私も。右に同じ」
かくして、森の窪地の舞踏会は、たくさんの魅惑のスパイスとともに、その幕を下ろしたのだった。
……めでたしめでたし、と言いたいところだが。
うさみは、ギシギシ…という音がなるのではないかというくらい、ぎこちなくアルヒの方へ顔を向けて言う。
「えぇと、私、気がついちゃったんだけど……。アルヒ? 私の予想当たってるわよね?」
「えぇ、おそらくは。仰るとおりかと」
と言ってアルヒは、深紺の鞘から白刃の剣を引き抜いた。
森の中。
太い幹から派生した、しなる枝と若い葉を押しのけて、更に眼前の深い緑の草を掻き分けた先。
……窪地にて、うさみは目を疑いたくなる光景を目の当たりにする。
「ーーミミリ‼︎」
うさみの叫びが、森へと響いた。
ーー遡ること半刻前。
ミミリたちは、野営地を求め、森の中で適所を探していた。
希望は短く柔らかい草が群生しているような場所。それが叶わなければ最低限、ぬかるみがなく、地盤が安定している所。
そして、気づけば既にモンスターに囲まれていた、ということがないように、モンスターが隠れやすい藪などが周りにないことも条件として挙げられる。
見晴らしがよく開けたところか、若しくは山陵の麓まで行って、地層を背に野営をするのもいいかもしれない。
なるべくモンスターに出会わないよう、ミミリたちは普段からモンスターがよく通っている道であろう、地が踏み固められたけもの道を避け、敢えて足場の悪い木の間を歩いていた。
樹間から、湿気を帯びた風が顔を撫でる。
湿気を帯びた風ですら、汗が冷やされ寒気を感じる。
まだ昼下がりだというのに、厚い雲が陽を隠していることや、木の枝と幾重もの葉が創り出す緑のカーテンが、森の中気温を上がりづらくしているのだろう。
ミミリは少し肌寒く感じ、クシュンとひとつクシャミをして、プルプルッと身震いした。
「ミミリ、大丈夫か?」
ミミリの後方から、心配そうにゼラが声をかける。
「ありがとう、ゼラくん。大丈夫だよ。もう少ししたら、ローブを着ようかな。それか、いい野営地を見つけたらもっと暖かい服に着替えようかな」
「そうだな、そうしよう。病み上がりだから、大事にしような」
「ありがとう!」
ミミリの猫のしっぽは楽しそうに左右に揺れる。病み上がりの体調に反して、ご機嫌はいいようだ。
「新しい採集作業の服、楽しみなんだ! アルヒが手直しして作ってくれたんだよ。新しい服にも、ゼラくんが好きなしっぽがあるけど、あんまり見ないでね?」
ミミリは猫のしっぽの根元、おしりを押さえて、むくれ面で振り返りながらゼラを軽く睨んだ。
「ーー‼︎ だからさ、ミミリ、それは冤罪なんだって。まぁ、見ないと言ったら嘘になるけど、やましい気持ちはないからな?」
「「ふーーーーーーん」」
ゼラの言葉を信じていない者がもう1匹加わって返事をしたようだが、ゼラはこれ以上反論しなかった。
反論しなかったのは、理由があるから。
冤罪だとは思いつつも若干良心が痛む気がするのはただの気のせいであってほしいと、ゼラは考えていたからだった。
「なにか、いるようですね」
先頭を行くアルヒは、先にいる何かを感じ取ったようだ。
時を同じくして、うさみもまた然り。
「探索魔法により感知! この先にモンスターが複数っていう表現でいいのか悩むくらいたくさんいるわ。色はグリーン。危険度は低いから大丈夫そうね」
「行ってみましょう。おそらく、この茂みの向こうです」
ミミリたちは、気を引き締めて、眼前に茂る草を掻き分けた。
最初に目が入ったのは、緩やかな窪地に広がる、色彩豊かなテトラ型の鞘を実らせた草だった。
そして窪地の中央には、大きな木が一本。
……どうやら、テトラ型の鞘が色鮮やかというよりは、鞘の表皮が薄いからなのか、白い半透明の鞘から中身の種なのか実なのかわからないものの多様な色が透けて見えているだけのようだ。
赤に黄にオレンジに。もっと色があるかもしれない。
風通りがあまり良くなさそうな窪地の底の草へも、風が揺らいだのかテトラ型の鞘が鈴なりに揺れる。
カタカタ、カサカサ、サラサラ……。
鞘の中身の形状で奏でる音が違うのか。
小気味いいほど耳障りのいい音が聞こえて、危険な森の中にいるということすら忘れてしまうほどだった。
「綺麗な音だね……」
「本当ね」
「夢みたいだ……」
「どうやら、悪い印象は与えなかったようですね」
アルヒは意味深な発言をする。
「……アルヒ、どういう意味?」
「私たちが彼らに与えた印象が、悪くはなかったという意味です」
ミミリの質問にアルヒは答えた。
「それって……」
と、さらに質問をしようとした矢先、足下で、何かがモゾモゾと動いて、ミミリの足を触った気がした。
「ひゃあ‼︎」
「ミミリ、大丈夫か⁉︎」
「何かが今、私の足を触った気がして」
「ゼラじゃないわよねぇ。どさくさに紛れて」
「おい! また誤解を生むようなこと言うなよ、うさみ!」
「やっぱり、私の足、触ってたんだ……」
ミミリは震えながら、真下を見ている。
「……ちょ、ミミリまで……」
「見て! ホラ! 鞘が揺れたの、風のせいじゃなかったんだ‼︎ 動いてる! この草‼︎」
「え……⁇」
ミミリが指した指の先を見てみると、確かに草が動いている。
……気のせいではない。
テトラ型の鞘をつけた草は、根を張るはずの地に根(あし)をつけて、針葉のような長い葉を左右に振って、動いている。
注視して見てみると、テトラ型の鞘をつけた草は全て、動いていた。
風で揺られていたのではない。自発的に動いていたのだ。
…動いているというのは、語弊がある。
訂正すると、踊っている、が正しい。
自分達の鞘の実、楽器が奏でる、小気味良いメロディーに合わせて。
ミミリたちは踏み入れてしまったのだ。
森の窪地の舞踏会へ。
ーーそして場面は冒頭へ。
「お願い、誰か、嘘って言ってよ…。ーーミミリ‼︎」
うさみの悲鳴を背景に。
ミミリは踊っていた。
テトラ型の鞘をつけた草と、社交ダンスを。
いや、正しくは、魅惑のスパイスを鞘に秘めた、「魅惑草」とペアになって。
魅惑草たちが奏でる、メロディーに乗せて。
魅惑草の長い針葉の葉は優しくミミリの腰に添えられて。
一本の大きな木の周りを、ミミリとペアになった魅惑草を含めて、いくつかの魅惑草がペアとなって踊っている。
一本の木を中心にして、時計の針を回すかのように、円を描くように。
社交ダンスが披露される舞台を囲んで、たくさんの魅惑草が観客となり、また演奏者となり、ひとつの舞台を創り上げていた。
ミミリは魅惑草にリードされるまま、生まれて初めての社交ダンスを踊る。
優美なステップ、そしてターン。
「貴方が差し伸べてくれた手、なんとなくの気持ちでそっと触れてみたけど、まさかこんなに素敵なダンスのお申し込みだったなんて!」
楽しそうに踊るミミリを遠目から見ているうさみたち。
「ねぇ。嘘って言ってよ、コシヌカシ」
「……俺は夢だと思ってる」
「……アンタも踊ってきたらどう?」
「いや、俺は観客に徹するよ。うさみこそ踊ってきたらどうなんだ?」
「ううん、私も右に同じ。」
そんな二人を横目に、アルヒは思い出に浸っていた。
「やはり、ミミリはご主人様に似ていますね。臆することなく挑戦し、不思議な事象と向き合っていく姿。ご主人様の姿が、目に浮かぶようです」
ーーーーーカサカサ、サラサラ……‼︎
メロディーの終わりと共に、ミミリがダンスを終えると、魅惑草は一斉に鞘を揺らし、賛辞を送った。
「拍手、してくれてるのかな?」
ミミリはワンピースの裾を軽く摘んで、ペアとなった魅惑草へ頭を下げてお礼した。
魅惑草は針葉の長い葉を差し伸べ、ミミリが添えた手に、草の穂先を軽く当てた。
……ミミリの手の甲にキスをするかのように。
「……ッ!」
観客として、舞踏会を観ていたゼラ。
腕組みする手の指で、肘の部分の服をギュッと掴んでミミリに声をかけようとした瞬間、
いくつかを残して、その大多数の魅惑草は、窪地に根を張って動かなくなった。
ーードサッ、ドサッ。
根を張った魅惑草から、また一つ、また一つと魅惑のスパイスを収めた鞘が地に落ちる。
それはそれは、たくさんの量が。
ミミリのペアだった魅惑草は自分で鞘をもぎ、虹色の魅惑のスパイスが入った鞘をミミリの手のひらへそっと乗せた。
……そして、ミミリのマジックバックの中へ、自ら入って行った。
「エッ⁉︎」
いくつか残った他の魅惑草、ミミリの周りで社交ダンスを踊っていた草々も同様に、ミミリの足下に多様な色魅惑のスパイスを収めた鞘を置いて、自らマジックバッグの中へ入って行った。
ミミリは、
・魅惑のスパイス(虹色)
・魅惑のスパイス(赤)、他各色
・魅惑草の苗木
を手に入れた。
「エエエエエエエ~⁉︎⁉︎ な、なんか、バッグの中に入ってきてくれたよ? あと、なんかたくさんもらったみたい!」
この状況に、一番驚いているのはミミリだった。今になって慌てふためき、動揺している。
「ミミリ、素晴らしいダンスでしたよ。」
と言いながら、アルヒは地面に魅惑草が置いて行ってくれた鞘を拾い、ミミリの動揺など意にも介さない。
「あのさ、アルヒさんはもちろん強いんだけどさ」
「うん。強いわよね」
「でもさ、俺、一番強いのはミミリなんじゃないかって思うわ」
「うん、私も。右に同じ」
かくして、森の窪地の舞踏会は、たくさんの魅惑のスパイスとともに、その幕を下ろしたのだった。
……めでたしめでたし、と言いたいところだが。
うさみは、ギシギシ…という音がなるのではないかというくらい、ぎこちなくアルヒの方へ顔を向けて言う。
「えぇと、私、気がついちゃったんだけど……。アルヒ? 私の予想当たってるわよね?」
「えぇ、おそらくは。仰るとおりかと」
と言ってアルヒは、深紺の鞘から白刃の剣を引き抜いた。
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