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第6話 【アップルパイ】はどんな味?

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 それからというもの。
 俺は錬成に錬成を重ねた。
 幸いにも、どれくらい無理をすればするのかがわかってきた。

 今は【アップルパイ】のレシピの最終調整。俺の予想が正しければ、うまくいくはずだ。

「やった、完成したぞ!」

【アップルパイ 体力回復(中)】
 錬金術で作るスイーツといったらコレだな。錬金素材アイテムの加減次第で追加効果の幅が出やすいからアレンジ料理としてもオススメ。もちろん、魔力操作や魔力調整の仕方を学ぶのに適してるから錬金術の練習にもなるな。
 ・皮を剥いたリンゴ ×2
 ・メシュメルの実(中身) ×3
 ・小麦粉 ×1
 ・【ミール液】 ×1(ひと匙)
 ・【火薬草の結晶】 ×1

 俺は、万象の女神フレイヤからもらった本とは別に、自分用にレシピを書き留めることに決めた。錬金術はに『』作る必要があり、目分量ではダメなのだ。そのあたりが、フレイヤの本では適当すぎる。

「おっ、創太、いい匂いがするな」
「せっかくだからお茶にしようか」

 俺はすっかり手慣れた様子で、お茶を淹れてポチも家の中に招き入れる。

「いただきます! うんまっ! これ、過去最高じゃないか? なぁ……なんで食わないんだ?」

 亮の反応からするに、やはり俺のレシピは間違っていなかった。補足するが、自分は食べずに亮に食べさせたのは、毒味させたわけじゃないぞ? 完成にある程度の確信はあった。……そうだな、9割くらいは。

「まさかっ! 毒味かよッ⁉︎」
「いや、そんなことはないぞ? 成功確率は9割くらいあった」
「その1割を引き当てんのが俺なんだよッ」
「はははは」
「はははじゃねえよもー!」

 初めて【アップルパイ】を作ってから、すでに半月は経っていた。その間モンスターも倒しレベルが上がった俺たちは、まるで共働きの夫婦のように分業制にして生活している。
 俺は家で錬成しながらとあるひを守る役目。
 亮は山へ……ではなくポチを連れて森へ芝刈りに行く役目。

 錬成をするたびに固定スキルユニークスキルもレベルが上がり、常に目に注力して鑑定しながら生活しようと思った俺は、満遍なくスキルも上がりつつあり、アイテムの名前などもわかるようになってきた。

-----------------------------------------------
【名前】 鈴木すずき 創太そうた
【称号】万象の女神フレイヤのを受ける者
    はじまり創世の錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.15/錬金術士
    Lv.18/魔法使い
【体力/HP】2500/2500
【魔力/MP】5890/6200
【戦闘スキル】
   錬成アイテム:Lv.12 /♾️
   殴る: Lv.2 /♾
          魔法(雷属性):Lv.18/♾
     (風属性):Lv.1 /♾
     (炎属性):Lv.15/♾
     (水属性):Lv.1 /♾️
     (土属性):Lv.1 /♾️
     (闇属性):Lv.1 /♾
     (光属性):Lv.1 /♾
固有スキルユニークスキル
   錬金術:Lv.15 /♾
   錬成知識:Lv.22 /♾
   テイマー:Lv.2 /♾
   鑑定:Lv.6 /♾
   探索魔法:Lv.12 /♾
-----------------------------------------------

「そういえば俺もさ、亮たちについて行って森の中でアイテムを探したいんだよ」
「それは構わないけど……俺らがいない時にあるひが狙われたらどうする」

 亮の意見はもっともだ。
 でも俺は考えてある。無慈悲のようにも、感じるけれど……。

「【マジックバッグ】に入れようと思う」
「――ッ! そんな、アイテムみたいに……。いや……ごめん、苦肉の策だよな」

 俺は首肯する。どうしても、家から離れなきゃならないときだってあるんだ。……だったら……。安全なところに隠れていてもらったほうがよっぽどいい。

「試して、いいか?」
「……ああ。試そう」

 俺たちは二階のあるひの部屋に行き、今も眠っているだけにしか見えないあるひにそっと触れる。

「ほんと、眠り姫みたいだよな」
「うん…………」

 俺はあるひを抱き抱え、【マジックバッグ】の中へ収納した。

「くっ……」

 それは、あるひが生き物ではない証拠。
 【マジックバッグ】は、生命を受け付けないのだから……。

「は、そうだよな……」

 亮も自嘲するほどに、異世界この世界は残酷だ。

「なぁ、亮。旅に出ないか?」
「旅に?」
「練金釜も木のロッドも、【マジックバッグ】にしまえることはわかった。……あるひも。だったらここへいる意味ってないだろ? 俺はあるひを生き返らせたい。もっとたくさんのレシピが知りたい」
「たしかに、創太の言うとおりだ」
「くぅん」、とポチも鳴く。

「行こう、明日。冒険の旅へ」
「あらゆるものをバッグにつめて、用意周到に向かうんだ。新たな地へ」

 亮は言う。

「ちょうど、外への抜け道らしき穴を発見したんだ。行ってみないか?」
「もちろん、行こう」

「でも……その前に……!」
「前に?」

 怒った顔で亮は言う。

「お前も食べろよ⁉︎ アップルパイ!」
「ははは。わかったよ」

 ――こうして、始めることになったんだ。
 あるひを生き返らせるための、冒険という名の旅が。
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