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第3話 小屋を目指して
しおりを挟む俺のレベルが3上がった話を聞いて、亮は手に汗を握るように固く拳を握った。
「そうか、敵を倒せば早くレベルが上がるんだな!
この異世界はそういう仕組みなのか。俺も頑張るよ。次は倒せるように。俺は武闘家だし、みんなの盾になれねぇと。な、ポチ?」
「ワンッ」
「盾とかはいいよ、危ないから。協力して倒そう。……っと、まずはドロップアイテムを拾って、小屋を目指すか。どこかわからないけれど」
俺はまたあるひを抱きかかえ、亮とポチとあてもなく歩き始めた。途中、何度も敵と遭遇し、その度に闘う。
探索魔法によると、イエローやグリーン、など淡く優しい色ほど弱い部類になるらしい。ぷるぷると揺れ動くその名のとおりのモンスター名『ぷるぷる』や、『メリーさん』っていう朗らかな名前の羊らしきモンスターと闘ったりとした。
ここでちょっとした小ネタがある。
『メリーさん』っていうくらいだから、当然羊のように「メエェ」と鳴くのかと思った。だけど実際は「メリイィィィィ」と鳴いたのだ。――あぁ、なるほどね、と2人で吹き出してしまったほどだ。しかも、戦闘に負けると判断するや否や、自分で羊毛を脱いで逃げていったのだ。もちろん羊毛は回収させてもらった。なんとも不思議なモンスターだった。
メリーさんたちは、探索魔法による色が淡かったからか、倒すまでにそこまで苦労はしなかった。
だとすると、最初に闘ったピギーウルフは相当強い部類だったんだろう。危険度パープルとは、そういうことか。
◇
俺たちは、まさか夜通し闘うことになるとは思わなかった。
それに、モンスターは夜行性なのか、森はどんどん重厚感を増してゆく。探索魔法からも、昼間より敵の数が増えていくのがわかった。
亮のレベルも、俺のレベルも、闘えば闘うほど上がっていった。この世界の『普通』がわからないから、なんとも言えないけれど。
それに、驚くべきことに、ポチも次第にモンスターを狩れるようになっていった。ポチのステータスは俺たちと違って簡素だが、それでもやはりレベルは上がっているようだ。
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【名前】 鈴木 ポチ
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける獣
【性別】犬 オス
【職業】Lv.3/番犬
【体力/HP】254/300
【魔力/MP】5/5
【戦闘スキル】
噛みつき:Lv.3
威嚇: Lv.3
【固有スキル】
森を統べる獣:Lv.1
鈴木創太への忠誠心:Lv.10
-----------------------------------------------
固有スキルの忠誠心が何とも愛らしい。さすが俺のポチだ。
◇
夜が明けた。
これが、不老不死の効果なのか、と思う。
身体は疲れていても、飲まず食わずでここまでやってこれた。
「腹減ったなぁ。創太」
「喉も渇いたな。なぁ、不思議な感覚じゃないか? 不老不死って、こういうことか?」
お腹は空いているし、喉だってカラカラだ。
だけど、大丈夫ではある。
一晩異世界を経験して、わかったことは他にもある。
――最初は。
敵を仕留めたほうがレベルが上がりやすいんだと思っていた。でも、そうじゃなかった。夜が明けた頃には、俺のレベルは相当上がっていた。
-----------------------------------------------
【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/錬金術士
Lv.13/魔法使い
【体力/HP】1000/1500
【魔力/MP】3856/4000
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.1 /♾️
殴る: Lv.1 /♾
魔法(雷属性):Lv.1 /♾
(風属性):Lv.1 /♾
(炎属性):Lv.15/♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.1 /♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.1 /♾
錬成知識:Lv.1 /♾
テイマー:Lv.2 /♾
鑑定:Lv.3 /♾
探索魔法:Lv.6 /♾
創作魔法:Lv.1/♾️
-----------------------------------------------
「なぁ、創太」
「ん?」
「変な意味で捉えないで欲しいんだけれど、やっぱり主人公とモブって違うんだな」
「どういう意味?」
「俺は、モンスターを倒してもなかなかレベルが上がらなくなってきた。でも、創太の闘いを見ればすぐわかるよ。上がってるんだろ? レベルが」
「あぁ、一応、な」
ちょっぴり気まずい空気が流れる。
「ま、まぁ、俺に武術の才があっただけラッキーだよな。な、ポチ?」
一生懸命場を盛り上げようとしてくれる亮。なんとなくこんな雰囲気になる気がして、俺はステータスを亮に開示しないでいる。これからも開示する気はない。
「なぁ、小屋、あそこじゃないか?」
川で囲われた小高い丘、その頂上に家が見える。
こちら側の森と小高い丘の間を流れる川には、橋が通され、行き来できるようになっていた。
ただ、橋を渡ればいい。
それだけだったら良かったのに。
小高い丘に見えるんだ。
――ピギーウルフが、3体も。
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