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第2話 異世界転移、再び〜新たなる世界へ〜

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「では、主たちを新たな地へ転移させる。その小娘もの。小娘の件は、本当にすまなかった」
「「…………」」

 俺たちは、何も答えなかった。

「――我は万象の女神 フレイヤ。転移の門よ、この者共を新たな地へと、導きたまえ」

 再びピンク色の魔法陣が現れた。
 俺はあるひを抱き抱えながら、亮と目を合わせたのちに前を見据える。

 ――この異世界転移が俺のせいだというならば、俺がみんなを、守ってみせる。

「まず、小屋を目指すのじゃ。そこには、ささやかじゃが、妾から主らに用意したものがある。さぁ、行くが良い。武運を祈っておる」

 そして俺たちはピンク色の世界に包まれた――。

 ◇
 
 青臭い、だけれど涼やかな風を感じる。
 どうやら転移は無事に終わったようだ。

「亮、ポチ、無事かっ?」
「ああ、なんとか」
「ワンワンッ」

「こ、ここは――?」

 ――森の中?
 今は朝なのだろうか。雲の切れ間から覗く陽の光を手で遮って、澄んだ空気を肌で感じる。
 
 森の木々で視界が悪くよく見えないが、どうやら勾配のキツイ山陵に囲われた場所らしい。山稜からは所々剥き出しになった地層が見える。俺は、飲み込まれそうな圧倒的自然の気高さを感じていた。

「なぁ、創太。俺思うんだけど、ぐるっと角度のキツイ山陵に囲まれていて、この地に閉じ込められた感じがしないか?」
「どこかに抜け道があるかもしれない。……っと、その前に小屋を探せ、だったか」

 ――その時だった。

 ――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、1体。1分後に遭遇エンカウントします』
 俺の目の前に、薄水色の背景に白文字のポップアップが急に現れた。

「――敵⁉︎」
「――どうした創太、敵が来るのか?」

 ――そうか、これは俺の固有スキルユニースキルだから亮には見えないのか。

「どうやらそうらしい。危険度パープルっていうのがよくわからないけど……。敵が1体くるらしい」
「なんだか、RPGの中にいるみたいだよ。まだ冒険は始まったばかりだし、定石で言えばスライムあたりじゃないか?」

 ――聞こえる。迫り来る気配。速い足音、そして殺気……!
 ――やばい、これは……殺される……!

「亮、違うっ! かなりヤバいヤツが来るはずだ。臨戦体勢に入ってくれ」

 亮の額から、汗がポタリと滴り落ちた。

「あぁ、俺もようやくわかった。……これはヤバイ! 創太、あるひを!」
「ああ。ポチ、あるひを頼んだぞ!」
「ワンッワンッ」

 亮は足でバキッと木の枝を鋭利に折り、敵との遭遇エンカウントに備えた。
 俺も同じく、枯れ枝を持つ。

 ――そもそも敵って、どんな奴なんだよ。人間だったら、かなりキツイぞ。人殺しはしたくない。

「グルルルルルルルル……」

 ――来た。
 森の中から、ピンク色の毛で鋭い牙をもち、1メートル程の体躯の狼が現れた。
 赤く光る鋭い眼光で、こちらを一点に見据え、ジリジリと間合いを図っている。

「なんだコイツは。ピンクの狼⁉︎」

 ――ピコン!
『 ●ピギーウルフ
 本来は子豚の姿をしている狼。怒るとピンク色の毛を逆立て、狼のような姿に変化し素早く襲ってくる。敵の首を狙って襲うのが特徴』

「亮! 首だ! コイツは首を狙って襲ってくるピギーウルフっていうらしい」
「素早そうだし、やべぇじゃん」

 ピギーウルフは唸り声を上げながら、こちらとの間合いを徐々に詰めている。
 ポチも必死だ。やられまいと、横たわるあるひの前で毛を逆立て、必死に唸っている。

 ーー来る!
 ピギーウルフは、亮目掛けて駆け出した。

「うおっ、俺か!」

 ――俺らの中から、何故亮が選ばれたんだ? まさか、亮の戦闘スキルの敵対心ヘイトのせいか?

 亮は枯れ枝を構えるも、ピギーウルフのあまりの素早さと獰猛さにたじろいで体勢を崩す。

「やべえっ……」
「亮!」

 俺は頭が真っ白になり駆け出していた。でもこのままじゃ間に合わない。亮が、――このままでは亮が、喰われてしまう……!

 ――ピコン!
『貴方は魔法が使えます』

 ――そうだ。俺は一応、魔法使いでもあったんだ。

 だが、使い方なんから知らない俺は、適当にRPGっぽい呪文を唱えてみる。

「ファイヤーボルト!」

 ピギーウルフ目掛けてかざした右手から、銃のように炎の塊が飛び出した。そして亮とピギーウルフが交わる前に、ピギーウルフを捉え、業火の如く焼いていく。

「ギャアアアアアア!」

 ピギーウルフは、背を反って力無くその場へ倒れた。……丸焦げになって。
 
 俺たちは、
《ドロップアイテム》
 ・ピギーウルフの肉
 ・ピギーウルフの毛
 を手に入れた。

「ありがとう、創太、助かったよ。死ぬかと思った。創太、それが錬金術か?」
「いや、違う。俺は魔法使いでもあるらしい」
「なんか魔法が使えるって聞くと……改めて思うよ。ここは、本当に異世界なんだなって」

 ――ピコン!
 ――ピコン!
 ――ピコン!
『――レベルが上がりました。
 ――レベルが上がりました。
 ――レベルが上がりました』
 俺のポップアップが、レベルアップを告げる。

「創太、俺、戦えてなかったけど、レベルが上がったみたいだ! ステータスオープン!」
「そうか、同じパーティーだと恩恵があるのかもしれないな」

-----------------------------------------------
【名前】 加賀かが りょう
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける者
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.2/武闘家  
    Lv.1/魔法剣士
【体力/HP】10/15  
【魔力/MP】20/20
【戦闘スキル】
  敵対心ヘイト:Lv.1 
   剣技: Lv.1
          魔法剣(雷属性):Lv.1
固有スキルユニークスキル
   多種多様な武器の使い手:Lv.1
   怒り:Lv.1
   大工:Lv.1
   解体:Lv.1
-----------------------------------------------

 申し訳ないが、亮のステータスは俺の固有スキルユニークスキルで勝手に見えてしまう。

「ステータスオープン」
 俺は小声で言ってみた。

-----------------------------------------------
【名前】 鈴木すずき 創太そうた
【称号】万象の女神フレイヤのを受ける者
    はじまり創世の錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/錬金術士
    Lv.4/魔法使い
【体力/HP】1000/1000
【魔力/MP】1999/2500
【戦闘スキル】
   錬成アイテム:Lv.1 /♾️
   殴る: Lv.1 /♾
          魔法(雷属性):Lv.1 /♾
     (風属性):Lv.1 /♾
     (炎属性):Lv.4 /♾
     (水属性):Lv.1 /♾️
     (土属性):Lv.1 /♾️
     (闇属性):Lv.1 /♾
     (光属性):Lv.1 /♾
固有スキルユニークスキル
   錬金術:Lv.1 /♾
   錬成知識:Lv.1 /♾
   テイマー:Lv.1 /♾
   鑑定:Lv.2 /♾
   探索魔法:Lv.2 /♾
   解体:Lv.1 /♾
   創作魔法:Lv.1/♾️
-----------------------------------------------

 なんだか、亮に比べてレベルの上がり方が半端ない。

「なんだ……これ……。敵を仕留めるとレベルが早く上がるってことか」
「いくつあがったんだ?」
「3、だよ」

 俺はなんだか、亮よりレベルの上がりが早いことに、負い目を感じた。
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