3 / 7
第2話 異世界転移、再び〜新たなる世界へ〜
しおりを挟む「では、主たちを新たな地へ転移させる。その小娘もの。小娘の件は、本当にすまなかった」
「「…………」」
俺たちは、何も答えなかった。
「――我は万象の女神 フレイヤ。転移の門よ、この者共を新たな地へと、導きたまえ」
再びピンク色の魔法陣が現れた。
俺はあるひを抱き抱えながら、亮と目を合わせたのちに前を見据える。
――この異世界転移が俺のせいだというならば、俺がみんなを、守ってみせる。
「まず、小屋を目指すのじゃ。そこには、ささやかじゃが、妾から主らに用意したものがある。さぁ、行くが良い。武運を祈っておる」
そして俺たちはピンク色の世界に包まれた――。
◇
青臭い、だけれど涼やかな風を感じる。
どうやら転移は無事に終わったようだ。
「亮、ポチ、無事かっ?」
「ああ、なんとか」
「ワンワンッ」
「こ、ここは――?」
――森の中?
今は朝なのだろうか。雲の切れ間から覗く陽の光を手で遮って、澄んだ空気を肌で感じる。
森の木々で視界が悪くよく見えないが、どうやら勾配のキツイ山陵に囲われた場所らしい。山稜からは所々剥き出しになった地層が見える。俺は、飲み込まれそうな圧倒的自然の気高さを感じていた。
「なぁ、創太。俺思うんだけど、ぐるっと角度のキツイ山陵に囲まれていて、この地に閉じ込められた感じがしないか?」
「どこかに抜け道があるかもしれない。……っと、その前に小屋を探せ、だったか」
――その時だった。
――ピコン!
『探索魔法により感知。危険度パープル。敵、1体。1分後に遭遇します』
俺の目の前に、薄水色の背景に白文字のポップアップが急に現れた。
「――敵⁉︎」
「――どうした創太、敵が来るのか?」
――そうか、これは俺の固有スキルだから亮には見えないのか。
「どうやらそうらしい。危険度パープルっていうのがよくわからないけど……。敵が1体くるらしい」
「なんだか、RPGの中にいるみたいだよ。まだ冒険は始まったばかりだし、定石で言えばスライムあたりじゃないか?」
――聞こえる。迫り来る気配。速い足音、そして殺気……!
――やばい、これは……殺される……!
「亮、違うっ! かなりヤバいヤツが来るはずだ。臨戦体勢に入ってくれ」
亮の額から、汗がポタリと滴り落ちた。
「あぁ、俺も漸くわかった。……これはヤバイ! 創太、あるひを!」
「ああ。ポチ、あるひを頼んだぞ!」
「ワンッワンッ」
亮は足でバキッと木の枝を鋭利に折り、敵との遭遇に備えた。
俺も同じく、枯れ枝を持つ。
――そもそも敵って、どんな奴なんだよ。人間だったら、かなりキツイぞ。人殺しはしたくない。
「グルルルルルルルル……」
――来た。
森の中から、ピンク色の毛で鋭い牙をもち、1メートル程の体躯の狼が現れた。
赤く光る鋭い眼光で、こちらを一点に見据え、ジリジリと間合いを図っている。
「なんだコイツは。ピンクの狼⁉︎」
――ピコン!
『 ●ピギーウルフ
本来は子豚の姿をしている狼。怒るとピンク色の毛を逆立て、狼のような姿に変化し素早く襲ってくる。敵の首を狙って襲うのが特徴』
「亮! 首だ! コイツは首を狙って襲ってくるピギーウルフっていうらしい」
「素早そうだし、やべぇじゃん」
ピギーウルフは唸り声を上げながら、こちらとの間合いを徐々に詰めている。
ポチも必死だ。やられまいと、横たわるあるひの前で毛を逆立て、必死に唸っている。
ーー来る!
ピギーウルフは、亮目掛けて駆け出した。
「うおっ、俺か!」
――俺らの中から、何故亮が選ばれたんだ? まさか、亮の戦闘スキルの敵対心のせいか?
亮は枯れ枝を構えるも、ピギーウルフのあまりの素早さと獰猛さにたじろいで体勢を崩す。
「やべえっ……」
「亮!」
俺は頭が真っ白になり駆け出していた。でもこのままじゃ間に合わない。亮が、――このままでは亮が、喰われてしまう……!
――ピコン!
『貴方は魔法が使えます』
――そうだ。俺は一応、魔法使いでもあったんだ。
だが、使い方なんから知らない俺は、適当にRPGっぽい呪文を唱えてみる。
「ファイヤーボルト!」
ピギーウルフ目掛けてかざした右手から、銃のように炎の塊が飛び出した。そして亮とピギーウルフが交わる前に、ピギーウルフを捉え、業火の如く焼いていく。
「ギャアアアアアア!」
ピギーウルフは、背を反って力無くその場へ倒れた。……丸焦げになって。
俺たちは、
《ドロップアイテム》
・ピギーウルフの肉
・ピギーウルフの毛
を手に入れた。
「ありがとう、創太、助かったよ。死ぬかと思った。創太、それが錬金術か?」
「いや、違う。俺は魔法使いでもあるらしい」
「なんか魔法が使えるって聞くと……改めて思うよ。ここは、本当に異世界なんだなって」
――ピコン!
――ピコン!
――ピコン!
『――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました。
――レベルが上がりました』
俺のポップアップが、レベルアップを告げる。
「創太、俺、戦えてなかったけど、レベルが上がったみたいだ! ステータスオープン!」
「そうか、同じパーティーだと恩恵があるのかもしれないな」
-----------------------------------------------
【名前】 加賀 亮
【称号】万象の女神フレイヤの加護を受ける者
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.2/武闘家
Lv.1/魔法剣士
【体力/HP】10/15
【魔力/MP】20/20
【戦闘スキル】
敵対心:Lv.1
剣技: Lv.1
魔法剣(雷属性):Lv.1
【固有スキル】
多種多様な武器の使い手:Lv.1
怒り:Lv.1
大工:Lv.1
解体:Lv.1
-----------------------------------------------
申し訳ないが、亮のステータスは俺の固有スキルで勝手に見えてしまう。
「ステータスオープン」
俺は小声で言ってみた。
-----------------------------------------------
【名前】 鈴木 創太
【称号】万象の女神フレイヤの寵愛を受ける者
はじまりの錬金術士
【性別】ヒューマン 男
【職業】Lv.1/錬金術士
Lv.4/魔法使い
【体力/HP】1000/1000
【魔力/MP】1999/2500
【戦闘スキル】
錬成アイテム:Lv.1 /♾️
殴る: Lv.1 /♾
魔法(雷属性):Lv.1 /♾
(風属性):Lv.1 /♾
(炎属性):Lv.4 /♾
(水属性):Lv.1 /♾️
(土属性):Lv.1 /♾️
(闇属性):Lv.1 /♾
(光属性):Lv.1 /♾
【固有スキル】
錬金術:Lv.1 /♾
錬成知識:Lv.1 /♾
テイマー:Lv.1 /♾
鑑定:Lv.2 /♾
探索魔法:Lv.2 /♾
解体:Lv.1 /♾
創作魔法:Lv.1/♾️
-----------------------------------------------
なんだか、亮に比べてレベルの上がり方が半端ない。
「なんだ……これ……。敵を仕留めるとレベルが早く上がるってことか」
「いくつあがったんだ?」
「3、だよ」
俺はなんだか、亮よりレベルの上がりが早いことに、負い目を感じた。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる