上 下
11 / 11

11話 自分の治療院

しおりを挟む
「「ルーク!?」」

 ホルマン公爵さまの後ろから、冒険者のルークさんが出て来た。
 そこで私は手に持っていた物を、もう一度確認する。

 思い出しました!
 これは王国でたまに見かけた紋章です!
 どこかで見かけたことがあると思っていたけど、ホルマン公爵家さまの紋章だったのですね。

 それをルークさんが持っていたと言うことは......。

「我が息子が世話になった」

「なっ」
「ルークが公爵家の」
「息子だとっー!?」

 ホルマン公爵さまの一言で、周囲にいたみんなは驚いた。
 ルークさん本人は、申し訳なさそうにしている。

「みんな黙っていてすまなかった」

「なんだよ水くさいじゃないかよ」
「ルークが公爵家だからって何かが変わったりはしねぇよ」
「そうだそうだ、金は借りるかもしれねぇがな」

 アランさんは驚いてはいなかった所をみると、知っていたのかもしれない。
 冒険者たちは、ルークさんに近付いて取り囲んでいた。

「メアリーさん、これで恩返しが出来ました」

「王都で不穏なうわさを聞いて、急いで駆けつけて良かった。ここでメアリーに何かあれば、公爵家としての名が泣いていた」

「ありがとうございます、ルークさん、公爵さま」

 私はルークさんとホルマン公爵さまにお礼を伝えた。
 この二人がいなければ、今回はとても大変なことになっていたかもしれない。

「それで、ギルドマスターよ」

「アランだ、公爵殿」

 ホルマン公爵さまは、先程までとは違って公私を分けた顔になった。
 何か話があるのかもしれない。

「アランよ、この度は王国の貴族が迷惑をかけた。本来であれば冒険者都市での処分が妥当だが、ここは私に任せてくれないか」

「どういう意味だ?」

「伯爵は王国法に則って、私が責任を持って裁かせることを約束しよう」

「まぁ、ルークの父親なら信用出来るだろう、任せた公爵殿」

 こうして、冒険者ギルドに、冒険者都市に平和が戻った。


 ◇


 数年後。
 あの冒険者ギルドでの一件から、いろいろなことがありました。
 王国からは正式な謝罪があり、私個人への賠償金と冒険者都市にも賠償金が支払われました。


「おいルーク、お前金持ってるんだから、酒代払えよっ!」

「残念だったな! 私の残高はゼロだっ!」


 あれからルークさんは、周囲の理解を得られながら、冒険者を続けています。



 私はと言うと、冒険者ギルドの治療師は辞めてしまいました。
 あれから何がしたいのかを考えた結果、自分の治療院を持ちたいと思って、独り立ちしました。

 冒険者都市に大きくはないけれど、自分だけの治療院を開設しました。
 冒険者ギルドからの付き合いのある人も来てくれて、日々なんとか生活出来ています。


「メアリーさん、また治療をお願いします」

「ルーク、そんな怪我は唾でも付けとけ」

「や、辞めろ! お前の唾は怪我が悪化するだろっ!」

「な、なんだと!? 俺はそんなに汚くねーよ」


「ふふふ、みなさーん。治療しますから、並んで待っていて下さいね」

 これからも私の物語は続いて行きます。
 いろんなことがあったけど、この冒険者都市でこれからも生活をして行きます——。
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

猫3号
2021.01.07 猫3号
ネタバレ含む
ダイナイ
2021.01.07 ダイナイ

感想ありがとうございます!

主人公と聖国の関係については、設定上は一応決まっています。
ただ、その辺を書き出してしまうとごちゃごちゃとしてしまう気がしたので、省いてしまいました。

解除
まっくす
2020.12.27 まっくす

えつと、終わり???

ダイナイ
2020.12.27 ダイナイ

感想ありがとうございます!

打ち切りとかではなく、最初からこのような形の終わりを想定していました。
こんな風が良かった、こうしたら良かった、などのご意見があれば、是非是非お待ちしています!

解除
猫3号
2020.12.23 猫3号

誤字報告 一話
小さな怪我の後一つ → 怪我の跡

ダイナイ
2020.12.23 ダイナイ

誤字報告ありがとうございます!

解除

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

聖女として全力を尽くしてまいりました。しかし、好色王子に婚約破棄された挙句に国を追放されました。国がどうなるか分かっていますか?

宮城 晟峰
ファンタジー
代々、受け継がれてきた聖女の力。 それは、神との誓約のもと、決して誰にも漏らしてはいけない秘密だった。 そんな事とは知らないバカな王子に、聖女アティアは追放されてしまう。 アティアは葛藤の中、国を去り、不毛の地と言われた隣国を豊穣な地へと変えていく。 その話を聞きつけ、王子、もといい王となっていた青年は、彼女のもとを訪れるのだが……。 ※完結いたしました。お読みいただきありがとうございました。

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜

黄舞
ファンタジー
 侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。  一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。  配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。  一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います

かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。 現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。 一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。 【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。 癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。 レイナの目標は自立する事なのだが……。

【完結】次期聖女として育てられてきましたが、異父妹の出現で全てが終わりました。史上最高の聖女を追放した代償は高くつきます!

林 真帆
恋愛
マリアは聖女の血を受け継ぐ家系に生まれ、次期聖女として大切に育てられてきた。  マリア自身も、自分が聖女になり、全てを国と民に捧げるものと信じて疑わなかった。  そんなマリアの前に、異父妹のカタリナが突然現れる。  そして、カタリナが現れたことで、マリアの生活は一変する。  どうやら現聖女である母親のエリザベートが、マリアを追い出し、カタリナを次期聖女にしようと企んでいるようで……。 2022.6.22 第一章完結しました。 2022.7.5 第二章完結しました。 第一章は、主人公が理不尽な目に遭い、追放されるまでのお話です。 第二章は、主人公が国を追放された後の生活。まだまだ不幸は続きます。 第三章から徐々に主人公が報われる展開となる予定です。

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

異世界から本物の聖女が来たからと、追い出された聖女は自由に生きたい! (完結)

深月カナメ
恋愛
十歳から十八歳まで聖女として、国の為に祈り続けた、白銀の髪、グリーンの瞳、伯爵令嬢ヒーラギだった。 そんなある日、異世界から聖女ーーアリカが降臨した。一応アリカも聖女だってらしく傷を治す力を持っていた。 この世界には珍しい黒髪、黒い瞳の彼女をみて、自分を嫌っていた王子、国王陛下、王妃、騎士など周りは本物の聖女が来たと喜ぶ。 聖女で、王子の婚約者だったヒーラギは婚約破棄されてしまう。 ヒーラギは新しい聖女が現れたのなら、自分の役目は終わった、これからは美味しいものをたくさん食べて、自由に生きると決めた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。