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10話 冒険者ギルドの戦い

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 伯爵さまが冒険者ギルドから出てからすぐ、また入り口へと戻って来た。

「メアリー、最後に聞くが我が領には来ないのだな?」

「はい、私はここで働きます」

「そうか、分かったよ」

 伯爵さまは諦めが悪く聞いて来ましたが、やっと分かってくれたみたいです。

「私のものにならないのなら必要ない。お前たち、やってしまえ」

 いや、やっぱり分かってくれなかったみたいです。
 冒険者ギルドの入り口には、一般人に偽装した伯爵さまの私兵らしき人たちが集まって来た。

「お前たち、聖女メアリーをやってしまえ。あれが他に渡るくらいなら、ここで処分した方がましだ」

「了解しました、伯爵さま」

 私兵たちは、剣を抜刀して構え始めた。
 辺りからは悲鳴が聞こえ、周囲の人たちは逃げ出した。

「伯爵よ、超えてはならない一線を超えちまったみたいだな」

 私の隣にいたアランさんはそう言った。

「お前たち! 冒険者ギルド直々の依頼だ、伯爵を取り押さえた者にはそれなりの金を約束しよう」

「おう、任せておけっ!」
「俺が一番乗りだぜ」
「金なんか無くてもやったのに、太っ腹だな」

 冒険者ギルドにいた冒険者たちは、それぞれ持っていた武器を構えた。
 剣、槍、こん棒、冒険者が持っているのは人によって違う。

「伯爵さまっ! お辞めになって下さい、今なら間に合います」

「何を今更、メアリー、お前が私の提案を受け入れないから悪いのだ。さっさっとやってしまえっ!」

「あいつの話を聞くなメアリー。お前は悪くない。お前たち、かかれっ!」

 冒険者ギルドは、戦場となった。
 伯爵の私兵と冒険者たちは、あちこちで激しくぶつかり合っている。

 どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
 私は悲しくなる気持ちを抑えて、今出来ることを探した。

「ぐっ、ここまでか」

 冒険者の一人が、伯爵さまの私兵に切られて血だらけになっていた。
 周囲を見ると一人だけではなく、大勢が傷付いている。

回復魔法ヒール!皆さん、私がついています」

 怪我をした冒険者たちの治療を始めました。
 私兵の皆さんも怪我をしていますが、今はそっちにまでは手が回りません。


 ◇


回復魔法ヒール!」

 次から次へと怪我をする冒険者たちを治療して行く。

「こ、こんなはずでは......何なのだこの回復魔法は、こんなのありえない」

 倒れた先から回復魔法を使って、治療をして行った結果。
 まるでゾンビのように、倒れても倒れても起き上がる冒険者たちが出来上がりました。

「伯爵さま! もう辞めて下さい!」

 伯爵さまに声をかけても、聞いていない様子です。
 どうしたら良いか困っていると、ふと思い出しました。
「困ったら使って欲しい」とルークさんから渡された謎の物。

 どう使えば良いのか分からないけれど、今なら使えそうな気がして来ました。
 ポケットにしまってあったそれを取り出した。

「伯爵さまっ! これでお辞めになって下さい!」

 伯爵さまに見せながら、そう言った。

「なっ!? なんでお前がそれを持っているのだ!」

 何か分かりませんが、伯爵さまは驚いた様子です。
 ありえないと言った顔をして、動きを止めてしまいました。
 止まったのは伯爵さまだけではなく、その私兵の皆さんも戦闘を中断して、私の方を見ています。

「聖女メアリーが持っているはずがない......偽物か、いやだが仮に本物だった場合......」

 伯爵さまは、完全に動きを止めてしまいました。
 ぶつぶつと何かを口にしていて、不気味です。

「本物のはずがないっ! 皆、攻撃を辞めるな!」

「それは本物だよ」

 伯爵さまが大声で叫んだところで、誰かが戦場へとやって来た。
 やって来たのは馬にまたがった男性で、綺麗な身なりをしている。

 あ、あの服は見たことがあります。
 王国の貴族が来ている服です。
 それも、より身分の高い人だけが着られる服です。

「ホルマン公爵!? なぜこのような場所に」

 周囲の伯爵の私兵たちは、完全に戦意を失っている。
 伯爵さまも先程までとは違って、小さくなっていた。

 みんな、ポカンとした状況で固まっていた。
 そんな時、ホルマン公爵の後ろからルークさんが出てきた。

「る、ルーク! どう言うことだ!」

 固まっていた冒険者の一人が、そう口にした。
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