9 / 11
9話 メアリー、大人気になる
しおりを挟む
冒険者ギルドの二階。
そこには、職員専用の宿があって無料で利用することが出来る。
お金がなかった私は、雇われ治療師になってから、二階にある宿を利用していた。
私、メアリーの朝は早い。
冒険者ギルドの二階にある自室で目覚めて、仕事の準備を始める。
仕事場まで、移動時間はほとんどかからないので、ギリギリまで寝ていられるのがとても魅力的。
「おはようございま......す」
冒険者ギルドの一階へと降りると、いつもとは違うことに気が付いた。
なんだかギルドの外が騒がしい気がします。
それに、外には多くの馬車が停まっているのが見えました。
「メアリー、良いところに来たな」
「おはようございますアランさん」
ギルドマスターのアランさんが、話かけてきた。
「はぁ、面倒なことになってしまった」
アランさんは、頭に手を置いて困っている様子です。
外の騒ぎといい、何かあったのでしょうか。
「すまないメアリー、冒険者ギルドの不手際だ。おまえの回復魔法のことが漏れたみたいだ。それで貴族の連中が大勢訪ねて来ちまった」
「私の回復魔法ですか?」
「ああ、この前のルークたちに使ったあれだ」
ああ!
思い出しました。
この前、瀕死の状態にあったルークさんたちに使った魔法のことですね。
でもそれが漏れたからって、どうして貴族の人たちが来たのでしょうか。
「メアリーはいるのかー」
「聖女メアリーに合わせろー」
「ここにいるのは知っているんだぞ」
冒険者ギルドのドアがドンドンと叩かれて、私を呼ぶことが聞こえて来た。
わ、私いつのまにこんなに人気者になったのでしょうか。
「メアリー、応接室に行っておいてくれ。面倒だが、あれらの相手はしないとまずいだろう」
「分かりました」
私は、アランさんに言われた通りに冒険者ギルドにある応接室へと向かった。
◇
「ごめんなさいね」
「今は冒険者ギルドで働いているので......」
「申し訳ございません」
あれから何回目か数えるのが嫌になるほど、貴族たちと面会を行った。
皆さんは、私をぜひ引き抜きたいと言って来ていたみたいです。
それでも今は冒険者ギルドで働いているからと、引き抜きをお断りしました。
「困ったらいつでも我が領に来て下さい」
「残念ですが仕方ありませんね」
「先を越されてしまいましたか、残念です」
貴族の皆さんはしばしばながら、諦めて帰って行きました。
「次は王国の伯爵家の番だな」
「が、頑張ります」
丸々と太った伯爵さまと、その従者の方が入って来た。
第一印象はあまり良くなく、王国でも良いうわさを聞かなかった人物だ。
「久しぶりだな、聖女メアリーよ」
「はい、伯爵さま。今回はどのようなご用件ですか?」
「メアリー、王国での出来事は聞いたぞ。そこで、おまえを我が領で雇ってやることにした」
「伯爵さま、今は冒険者ギルドで働いているので......」
王国の伯爵さまは、上から目線で話かけて来た。
うわさ通りの人で、良い印象は受けなかった。
「なに、金なら心配することはない。どこぞの王子と違ってケチるほど貧乏ではないからな。メアリーの言い値、好きなだけ給金を出すとしようじゃないか」
「あの伯爵さま、お金の問題でもありません。今は冒険者都市で働いているので、王国に行くことは出来ません」
伯爵さまは、私と第三王子のカールさまのやりとりを知っているようだった。
「心配することはない。何不自由ない生活も保証しようじゃないか。私の女になれと言うつもりもない、我が領で働いてくれるのなら、全てを与えよう。それで、いつから我が領で働けるのかな?」
伯爵さまは、私の話を一切聞いてはくれませんでした。
伯爵さまの中で、私が伯爵領に行くのは決まっていることであり、後は契約内容の確認をするだけになっているのかもしれない。
「そこまでにしてもらおうか、伯爵。メアリーは断っている。素直に受け入れるんだな」
「ふん、冒険者都市のギルドマスターごときが、私に口を出すと言うのか」
私が困っていると、アランさんが助けてくれました。
伯爵さまは私のことを見て、私が行く気がないとやった分かった様子です。
「そうか、メアリーはそいつに脅されているのだな」
「そんなことはありません! 私は自分の意思で伯爵領には行きません」
伯爵さまは、顔を真っ赤にして怒り始めました。
「聖女が私の提案を断るだと?」
「伯爵、そろそろお帰りの時間だ」
「そうか、やはり念には念を入れて準備をして来たのが良かったな。そいつは私の物だ、誰にもやるつもりはない」
伯爵さまは、不気味な笑みを浮かべながら、小さな声でそう言った。
そして、冒険者ギルドの外へと向かって行った。
そこには、職員専用の宿があって無料で利用することが出来る。
お金がなかった私は、雇われ治療師になってから、二階にある宿を利用していた。
私、メアリーの朝は早い。
冒険者ギルドの二階にある自室で目覚めて、仕事の準備を始める。
仕事場まで、移動時間はほとんどかからないので、ギリギリまで寝ていられるのがとても魅力的。
「おはようございま......す」
冒険者ギルドの一階へと降りると、いつもとは違うことに気が付いた。
なんだかギルドの外が騒がしい気がします。
それに、外には多くの馬車が停まっているのが見えました。
「メアリー、良いところに来たな」
「おはようございますアランさん」
ギルドマスターのアランさんが、話かけてきた。
「はぁ、面倒なことになってしまった」
アランさんは、頭に手を置いて困っている様子です。
外の騒ぎといい、何かあったのでしょうか。
「すまないメアリー、冒険者ギルドの不手際だ。おまえの回復魔法のことが漏れたみたいだ。それで貴族の連中が大勢訪ねて来ちまった」
「私の回復魔法ですか?」
「ああ、この前のルークたちに使ったあれだ」
ああ!
思い出しました。
この前、瀕死の状態にあったルークさんたちに使った魔法のことですね。
でもそれが漏れたからって、どうして貴族の人たちが来たのでしょうか。
「メアリーはいるのかー」
「聖女メアリーに合わせろー」
「ここにいるのは知っているんだぞ」
冒険者ギルドのドアがドンドンと叩かれて、私を呼ぶことが聞こえて来た。
わ、私いつのまにこんなに人気者になったのでしょうか。
「メアリー、応接室に行っておいてくれ。面倒だが、あれらの相手はしないとまずいだろう」
「分かりました」
私は、アランさんに言われた通りに冒険者ギルドにある応接室へと向かった。
◇
「ごめんなさいね」
「今は冒険者ギルドで働いているので......」
「申し訳ございません」
あれから何回目か数えるのが嫌になるほど、貴族たちと面会を行った。
皆さんは、私をぜひ引き抜きたいと言って来ていたみたいです。
それでも今は冒険者ギルドで働いているからと、引き抜きをお断りしました。
「困ったらいつでも我が領に来て下さい」
「残念ですが仕方ありませんね」
「先を越されてしまいましたか、残念です」
貴族の皆さんはしばしばながら、諦めて帰って行きました。
「次は王国の伯爵家の番だな」
「が、頑張ります」
丸々と太った伯爵さまと、その従者の方が入って来た。
第一印象はあまり良くなく、王国でも良いうわさを聞かなかった人物だ。
「久しぶりだな、聖女メアリーよ」
「はい、伯爵さま。今回はどのようなご用件ですか?」
「メアリー、王国での出来事は聞いたぞ。そこで、おまえを我が領で雇ってやることにした」
「伯爵さま、今は冒険者ギルドで働いているので......」
王国の伯爵さまは、上から目線で話かけて来た。
うわさ通りの人で、良い印象は受けなかった。
「なに、金なら心配することはない。どこぞの王子と違ってケチるほど貧乏ではないからな。メアリーの言い値、好きなだけ給金を出すとしようじゃないか」
「あの伯爵さま、お金の問題でもありません。今は冒険者都市で働いているので、王国に行くことは出来ません」
伯爵さまは、私と第三王子のカールさまのやりとりを知っているようだった。
「心配することはない。何不自由ない生活も保証しようじゃないか。私の女になれと言うつもりもない、我が領で働いてくれるのなら、全てを与えよう。それで、いつから我が領で働けるのかな?」
伯爵さまは、私の話を一切聞いてはくれませんでした。
伯爵さまの中で、私が伯爵領に行くのは決まっていることであり、後は契約内容の確認をするだけになっているのかもしれない。
「そこまでにしてもらおうか、伯爵。メアリーは断っている。素直に受け入れるんだな」
「ふん、冒険者都市のギルドマスターごときが、私に口を出すと言うのか」
私が困っていると、アランさんが助けてくれました。
伯爵さまは私のことを見て、私が行く気がないとやった分かった様子です。
「そうか、メアリーはそいつに脅されているのだな」
「そんなことはありません! 私は自分の意思で伯爵領には行きません」
伯爵さまは、顔を真っ赤にして怒り始めました。
「聖女が私の提案を断るだと?」
「伯爵、そろそろお帰りの時間だ」
「そうか、やはり念には念を入れて準備をして来たのが良かったな。そいつは私の物だ、誰にもやるつもりはない」
伯爵さまは、不気味な笑みを浮かべながら、小さな声でそう言った。
そして、冒険者ギルドの外へと向かって行った。
22
お気に入りに追加
748
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
聖女の仕事なめんな~聖女の仕事に顔は関係ないんで~
猿喰 森繁
ファンタジー
※完結したので、再度アップします。
毎日、ぶっ倒れるまで、聖女の仕事をしている私。
それをよりにもよって、のんきに暮らしている妹のほうが、聖女にふさわしいと王子から言われた。
いやいやいや… …なにいってんだ。こいつ。
いきなり、なぜ妹の方が、聖女にふさわしいということになるんだ…。
え?可愛いから?笑顔で、皆を癒してくれる?
は?仕事なめてんの?聖女の仕事は、命がかかってるんだよ!
確かに外見は重要だが、聖女に求められている必須項目ではない。
それも分からない王子とその取り巻きによって、国を追い出されてしまう。
妹の方が確かに聖女としての資質は高い。
でも、それは訓練をすればの話だ。
まぁ、私は遠く離れた異国の地でうまくやるんで、そっちもうまくいくといいですね。
私は聖女(ヒロイン)のおまけ
音無砂月
ファンタジー
ある日突然、異世界に召喚された二人の少女
100年前、異世界に召喚された聖女の手によって魔王を封印し、アルガシュカル国の危機は救われたが100年経った今、再び魔王の封印が解かれかけている。その為に呼ばれた二人の少女
しかし、聖女は一人。聖女と同じ色彩を持つヒナコ・ハヤカワを聖女候補として考えるアルガシュカルだが念のため、ミズキ・カナエも聖女として扱う。内気で何も自分で決められないヒナコを支えながらミズキは何とか元の世界に帰れないか方法を探す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる