宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ

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9話 メアリー、大人気になる

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 冒険者ギルドの二階。
 そこには、職員専用の宿があって無料で利用することが出来る。
 お金がなかった私は、雇われ治療師になってから、二階にある宿を利用していた。


 私、メアリーの朝は早い。
 冒険者ギルドの二階にある自室で目覚めて、仕事の準備を始める。
 仕事場まで、移動時間はほとんどかからないので、ギリギリまで寝ていられるのがとても魅力的。

「おはようございま......す」

 冒険者ギルドの一階へと降りると、いつもとは違うことに気が付いた。
 なんだかギルドの外が騒がしい気がします。
 それに、外には多くの馬車が停まっているのが見えました。

「メアリー、良いところに来たな」

「おはようございますアランさん」

 ギルドマスターのアランさんが、話かけてきた。

「はぁ、面倒なことになってしまった」

 アランさんは、頭に手を置いて困っている様子です。
 外の騒ぎといい、何かあったのでしょうか。

「すまないメアリー、冒険者ギルドの不手際だ。おまえの回復魔法のことが漏れたみたいだ。それで貴族の連中が大勢訪ねて来ちまった」

「私の回復魔法ですか?」

「ああ、この前のルークたちに使ったあれだ」

 ああ!
 思い出しました。
 この前、瀕死ひんしの状態にあったルークさんたちに使った魔法のことですね。
 でもそれが漏れたからって、どうして貴族の人たちが来たのでしょうか。


「メアリーはいるのかー」
「聖女メアリーに合わせろー」
「ここにいるのは知っているんだぞ」

 冒険者ギルドのドアがドンドンと叩かれて、私を呼ぶことが聞こえて来た。
 わ、私いつのまにこんなに人気者になったのでしょうか。

「メアリー、応接室に行っておいてくれ。面倒だが、あれらの相手はしないとまずいだろう」

「分かりました」

 私は、アランさんに言われた通りに冒険者ギルドにある応接室へと向かった。


 ◇

「ごめんなさいね」
「今は冒険者ギルドで働いているので......」
「申し訳ございません」

 あれから何回目か数えるのが嫌になるほど、貴族たちと面会を行った。
 皆さんは、私をぜひ引き抜きたいと言って来ていたみたいです。
 それでも今は冒険者ギルドで働いているからと、引き抜きをお断りしました。

「困ったらいつでも我が領に来て下さい」
「残念ですが仕方ありませんね」
「先を越されてしまいましたか、残念です」

 貴族の皆さんはしばしばながら、諦めて帰って行きました。

「次は王国の伯爵家の番だな」
「が、頑張ります」

 丸々と太った伯爵さまと、その従者の方が入って来た。
 第一印象はあまり良くなく、王国でも良いうわさを聞かなかった人物だ。

「久しぶりだな、聖女メアリーよ」

「はい、伯爵さま。今回はどのようなご用件ですか?」

「メアリー、王国での出来事は聞いたぞ。そこで、おまえを我が領で雇ってやることにした」

「伯爵さま、今は冒険者ギルドで働いているので......」

 王国の伯爵さまは、上から目線で話かけて来た。
 うわさ通りの人で、良い印象は受けなかった。

「なに、金なら心配することはない。どこぞの王子と違ってケチるほど貧乏ではないからな。メアリーの言い値、好きなだけ給金を出すとしようじゃないか」

「あの伯爵さま、お金の問題でもありません。今は冒険者都市で働いているので、王国に行くことは出来ません」

 伯爵さまは、私と第三王子のカールさまのやりとりを知っているようだった。

「心配することはない。何不自由ない生活も保証しようじゃないか。私の女になれと言うつもりもない、我が領で働いてくれるのなら、全てを与えよう。それで、いつから我が領で働けるのかな?」

 伯爵さまは、私の話を一切聞いてはくれませんでした。
 伯爵さまの中で、私が伯爵領に行くのは決まっていることであり、後は契約内容の確認をするだけになっているのかもしれない。

「そこまでにしてもらおうか、伯爵。メアリーは断っている。素直に受け入れるんだな」

「ふん、冒険者都市のギルドマスターごときが、私に口を出すと言うのか」

 私が困っていると、アランさんが助けてくれました。
 伯爵さまは私のことを見て、私が行く気がないとやった分かった様子です。

「そうか、メアリーはそいつに脅されているのだな」

「そんなことはありません! 私は自分の意思で伯爵領には行きません」

 伯爵さまは、顔を真っ赤にして怒り始めました。

「聖女が私の提案を断るだと?」

「伯爵、そろそろお帰りの時間だ」

「そうか、やはり念には念を入れて準備をして来たのが良かったな。そいつメアリーは私の物だ、誰にもやるつもりはない」

 伯爵さまは、不気味な笑みを浮かべながら、小さな声でそう言った。
 そして、冒険者ギルドの外へと向かって行った。
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