7 / 11
7話 第三王子、来る
しおりを挟む
ドラゴンの一件から、数日が経った。
私が治療をしたルークさんたちパーティーは、少しずつ調子を取り戻して、また仕事が出来るまで回復した。
冒険者としての仕事をする前にルークさんたちが会いに来て、私にお礼を言って行きました。
その際にルークさんからは、何かよく分からない物を渡されました。
それは、どこかで見たことのあるような紋章が刻まれている物でした。
「今の私に出来ることはこれくらいしかないけれど、メアリーさんに何かあった際には絶対に力になると約束しよう」
と言い残して、また冒険に出てしまった。
「誰にも見せず、困った時にだけ使って欲しい」とのことなので、誰にも言っていない。
◇
「なんだか、入り口が騒がしいですね」
冒険者ギルドの入り口が騒がしいです。
「聖女メアリーはここにいるのか」
男性が大声で私の名前を呼んでいる。
それは聞き覚えのある声だった。
冒険者ギルドの入り口にいる男性の顔を見ると、王国の第3王子のカールさまだった。
「貴族さまが何のようだってんだ?」
「貴様、それが貴族に対する態度か」
「忘れて貰っちゃ困るぜ。王国ではいくら偉くてもここじゃあ関係ねぇよ。この冒険者都市に身分制度はねぇからな」
「き、貴様!」
そんなやり取りをしているカールさまと目があった。
「なんだ、いるじゃないかメアリー」
「どのようなご用件でしょうか、お怪我でしたら治療室の方へどうぞ」
「き、貴様もそんな態度を」
今までのことを考えて、嫌味っぽく言った。
「メアリー、お前には王国に戻って来て貰おう」
......
......は?
予想外の言葉に固まってしまった。
「こんな所で働いているみたいだが、元々は王国の治療師だったのだ、戻って来て貰うぞ」
「いやです」
「あぁ、金か。金なら父上から渡されている」
カールはごく僅かな金を差し出して来た。
「おいおい、そんなんじゃ子供の小遣いにもならんぞ」
「がははは、貴族さまなのに随分とケチだなぁ」
ギルドにいた冒険者たちも、渡された金額を見て、笑い始めた。
「お金の問題ではありませんカール王子。私は冒険者ギルドでの仕事がありますので、王国に戻るつもりはありません」
「な、なんだと。そ、そうか分かったぞ。身分が欲しいんだな? そうだろう? 僕の愛人にしてやろう。婚約者がいるから夫人には出来ないが、それなら文句もないだろう? 王族になれるんだぞ」
「王子さまの愛人にはなりたくありません。王国には戻らないので、帰ってください」
「メアリー、きさまっ!」
私がカールさまを拒絶すると、カールさまは激怒した。
「そこまでにしてもらおうか、王国の王子よ」
私とカールさまのあいだに、一人の男性が入って来た。
ギルドマスターのアランだ。
カールさまを威嚇して、追い払おうとしている。
「王子よ、他国の治療師の引き抜きを王国の王が認めたのか?」
「そうだそうだ!」
「帰れ帰れー」
「お前たち、覚えておけよ!」
カールさまはそれだけ言うと、冒険者ギルドを出て行く。
私たちもその後を追いかけると、カールさまは馬車に乗った。
それも黄金に輝く馬車で、とても趣味が良いとは言えない物に。
「このことは父上に報告させてもらうからな! お前たちは後悔することになるぞ!」
カールさまはそれだけ言うと、急いで馬車を走らせてしまった。
結局、何をしに来たのでしょうか。
私を追い出したのに、本気であのお金で戻ってもらおうと思っていたのでしょうか。
私が治療をしたルークさんたちパーティーは、少しずつ調子を取り戻して、また仕事が出来るまで回復した。
冒険者としての仕事をする前にルークさんたちが会いに来て、私にお礼を言って行きました。
その際にルークさんからは、何かよく分からない物を渡されました。
それは、どこかで見たことのあるような紋章が刻まれている物でした。
「今の私に出来ることはこれくらいしかないけれど、メアリーさんに何かあった際には絶対に力になると約束しよう」
と言い残して、また冒険に出てしまった。
「誰にも見せず、困った時にだけ使って欲しい」とのことなので、誰にも言っていない。
◇
「なんだか、入り口が騒がしいですね」
冒険者ギルドの入り口が騒がしいです。
「聖女メアリーはここにいるのか」
男性が大声で私の名前を呼んでいる。
それは聞き覚えのある声だった。
冒険者ギルドの入り口にいる男性の顔を見ると、王国の第3王子のカールさまだった。
「貴族さまが何のようだってんだ?」
「貴様、それが貴族に対する態度か」
「忘れて貰っちゃ困るぜ。王国ではいくら偉くてもここじゃあ関係ねぇよ。この冒険者都市に身分制度はねぇからな」
「き、貴様!」
そんなやり取りをしているカールさまと目があった。
「なんだ、いるじゃないかメアリー」
「どのようなご用件でしょうか、お怪我でしたら治療室の方へどうぞ」
「き、貴様もそんな態度を」
今までのことを考えて、嫌味っぽく言った。
「メアリー、お前には王国に戻って来て貰おう」
......
......は?
予想外の言葉に固まってしまった。
「こんな所で働いているみたいだが、元々は王国の治療師だったのだ、戻って来て貰うぞ」
「いやです」
「あぁ、金か。金なら父上から渡されている」
カールはごく僅かな金を差し出して来た。
「おいおい、そんなんじゃ子供の小遣いにもならんぞ」
「がははは、貴族さまなのに随分とケチだなぁ」
ギルドにいた冒険者たちも、渡された金額を見て、笑い始めた。
「お金の問題ではありませんカール王子。私は冒険者ギルドでの仕事がありますので、王国に戻るつもりはありません」
「な、なんだと。そ、そうか分かったぞ。身分が欲しいんだな? そうだろう? 僕の愛人にしてやろう。婚約者がいるから夫人には出来ないが、それなら文句もないだろう? 王族になれるんだぞ」
「王子さまの愛人にはなりたくありません。王国には戻らないので、帰ってください」
「メアリー、きさまっ!」
私がカールさまを拒絶すると、カールさまは激怒した。
「そこまでにしてもらおうか、王国の王子よ」
私とカールさまのあいだに、一人の男性が入って来た。
ギルドマスターのアランだ。
カールさまを威嚇して、追い払おうとしている。
「王子よ、他国の治療師の引き抜きを王国の王が認めたのか?」
「そうだそうだ!」
「帰れ帰れー」
「お前たち、覚えておけよ!」
カールさまはそれだけ言うと、冒険者ギルドを出て行く。
私たちもその後を追いかけると、カールさまは馬車に乗った。
それも黄金に輝く馬車で、とても趣味が良いとは言えない物に。
「このことは父上に報告させてもらうからな! お前たちは後悔することになるぞ!」
カールさまはそれだけ言うと、急いで馬車を走らせてしまった。
結局、何をしに来たのでしょうか。
私を追い出したのに、本気であのお金で戻ってもらおうと思っていたのでしょうか。
33
お気に入りに追加
754
あなたにおすすめの小説
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。
SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。
サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います
かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。
現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。
一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。
【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。
癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。
レイナの目標は自立する事なのだが……。
本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?
今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。
バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。
追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。
シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。
私を虐げてきた妹が聖女に選ばれたので・・・冒険者になって叩きのめそうと思います!
れもん・檸檬・レモン?
ファンタジー
私には双子の妹がいる
この世界はいつの頃からか妹を中心に回るようになってきた・・・私を踏み台にして・・・
妹が聖女に選ばれたその日、私は両親に公爵家の慰み者として売られかけた
そんな私を助けてくれたのは、両親でも妹でもなく・・・妹の『婚約者』だった
婚約者に守られ、冒険者組合に身を寄せる日々・・・
強くならなくちゃ!誰かに怯える日々はもう終わりにする
私を守ってくれた人を、今度は私が守れるように!
戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜
黄舞
ファンタジー
侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。
一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。
配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。
一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。
聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる