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4話 冒険者ギルド
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「ここが冒険者都市ですか」
冒険者都市。
ここは名前の通りで、冒険者たちが多く集まって出来た都市だ。
貴族による支配もなく、冒険者たちによって運営が行われている。
「聖国と王都以外は初めてだから、なんだか新鮮な気分になりますね」
私、メアリーは聖国から王国に派遣されていた。
王国内での宗教の布教を認める代わりに、聖女を派遣して格安で治療師として雇うことになっている。
それが、王国側の都合で追放になったので、自由になった。
「確か噂で聞いたことがあります。冒険者都市には、冒険者ギルドなる組織があって仕事の受注発注を行っていると。そこに行けば、何かしらの仕事が見つかるかもしれません!」
軽くなった財布を覗き込みながら、思い出したことを呟いた。
◇
冒険者ギルド
「で、小娘、何の用だ。ここはか弱い女子供が来るような場所じゃないぞ」
受付に座っていたのは、体格の立派なおじさんでした。
筋骨隆々としていて、ちっとも可愛らしくはありません。
受付って普通は可愛らしい女の人がいるものだと思っていました。
「あ、あの。何か仕事はありませんか」
「仕事ねぇ......、嬢ちゃんは何が出来るんだ」
「元々治療師をやっていたので、回復魔法くらいなら使えます」
「ふーん、嬢ちゃんがねぇ」
筋骨隆々なおじさんは、どこか疑うような目で私のことを見てきた。
子供がいきなり来て治療師だと言ったので、本当かどうか疑問に思っているかもしれない。
「で、嬢ちゃんはどれくらいの実力があるんだ」
「えっ」
実力と言われて、困ってしまった。
これまで宮廷で治療師として働いていた頃は、軽傷の人しか見てこなかった。
私がどれくらいの回復魔法を使えるのか、自分では判断出来ない。
聖国で基礎は学んでいるし、最低限の初級程度の実力はあるはずだ。
「私ってどれくらいの実力なんでしょうか」
「がはは、それで治療師を名乗るのか。まぁ、試験だけはしてやるさ」
おじさんはそう言うと、冒険者ギルド奥へと行き、すぐに戻って来た。
戻って来たおじさんの手には、刃物らしき物が握られている。
「今から、俺が自分の手を傷付けるから、それを治療してみろ」
「は、はいっ!」
「いくぞ、ほら」
おじさんは、持っていた刃物で自分の手に傷を付ける。
軽く傷付けただけだけど、見ていてとても痛そうだ。
「回復魔法!」
私が魔法を唱えると、傷はみるみる回復して行く。
「まさか本当に使えるとはな」
目の前のおじさんは、私が本当に治療師だったとは思っていなかったみたいで、驚いた顔をしている。
「おお、若いのに治療師とは凄いな」
「俺、見てたぞ!」
冒険者ギルドにいた、見るからに柄の悪そうな人たちが集まって来た。
みんなして私が治療をする所を見ていたようで、声を掛けてくる。
「よし、良いだろう。試すようなことをして悪かったな嬢ちゃん」
「え?」
「俺が、ここの冒険者ギルドのマスターをしているアランだ。仕事を探していたんだろ、嬢ちゃんを冒険者ギルドで雇ってやる」
「ええっ!」
なんと、おじさんはただのおじさんではありませんでした。
筋骨隆々なおじさんは冒険者ギルドのギルドマスターだったのです。
そして日雇いで食い繋ごうと思っていたのに、なんと定職に就くことが出来そうです。
二つの意味で驚いて、大きな声を出してしまいました。
冒険者都市。
ここは名前の通りで、冒険者たちが多く集まって出来た都市だ。
貴族による支配もなく、冒険者たちによって運営が行われている。
「聖国と王都以外は初めてだから、なんだか新鮮な気分になりますね」
私、メアリーは聖国から王国に派遣されていた。
王国内での宗教の布教を認める代わりに、聖女を派遣して格安で治療師として雇うことになっている。
それが、王国側の都合で追放になったので、自由になった。
「確か噂で聞いたことがあります。冒険者都市には、冒険者ギルドなる組織があって仕事の受注発注を行っていると。そこに行けば、何かしらの仕事が見つかるかもしれません!」
軽くなった財布を覗き込みながら、思い出したことを呟いた。
◇
冒険者ギルド
「で、小娘、何の用だ。ここはか弱い女子供が来るような場所じゃないぞ」
受付に座っていたのは、体格の立派なおじさんでした。
筋骨隆々としていて、ちっとも可愛らしくはありません。
受付って普通は可愛らしい女の人がいるものだと思っていました。
「あ、あの。何か仕事はありませんか」
「仕事ねぇ......、嬢ちゃんは何が出来るんだ」
「元々治療師をやっていたので、回復魔法くらいなら使えます」
「ふーん、嬢ちゃんがねぇ」
筋骨隆々なおじさんは、どこか疑うような目で私のことを見てきた。
子供がいきなり来て治療師だと言ったので、本当かどうか疑問に思っているかもしれない。
「で、嬢ちゃんはどれくらいの実力があるんだ」
「えっ」
実力と言われて、困ってしまった。
これまで宮廷で治療師として働いていた頃は、軽傷の人しか見てこなかった。
私がどれくらいの回復魔法を使えるのか、自分では判断出来ない。
聖国で基礎は学んでいるし、最低限の初級程度の実力はあるはずだ。
「私ってどれくらいの実力なんでしょうか」
「がはは、それで治療師を名乗るのか。まぁ、試験だけはしてやるさ」
おじさんはそう言うと、冒険者ギルド奥へと行き、すぐに戻って来た。
戻って来たおじさんの手には、刃物らしき物が握られている。
「今から、俺が自分の手を傷付けるから、それを治療してみろ」
「は、はいっ!」
「いくぞ、ほら」
おじさんは、持っていた刃物で自分の手に傷を付ける。
軽く傷付けただけだけど、見ていてとても痛そうだ。
「回復魔法!」
私が魔法を唱えると、傷はみるみる回復して行く。
「まさか本当に使えるとはな」
目の前のおじさんは、私が本当に治療師だったとは思っていなかったみたいで、驚いた顔をしている。
「おお、若いのに治療師とは凄いな」
「俺、見てたぞ!」
冒険者ギルドにいた、見るからに柄の悪そうな人たちが集まって来た。
みんなして私が治療をする所を見ていたようで、声を掛けてくる。
「よし、良いだろう。試すようなことをして悪かったな嬢ちゃん」
「え?」
「俺が、ここの冒険者ギルドのマスターをしているアランだ。仕事を探していたんだろ、嬢ちゃんを冒険者ギルドで雇ってやる」
「ええっ!」
なんと、おじさんはただのおじさんではありませんでした。
筋骨隆々なおじさんは冒険者ギルドのギルドマスターだったのです。
そして日雇いで食い繋ごうと思っていたのに、なんと定職に就くことが出来そうです。
二つの意味で驚いて、大きな声を出してしまいました。
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