宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ

文字の大きさ
上 下
2 / 11

2話 宮廷から解放される

しおりを挟む
 宮廷の入り口、門番がいる場所にいた。

「やっと宮廷ろうごくから追放かいほうされました」

「ははは、そう言ってくれるな聖女さん」

 私が呟いた発言に、門番さんが笑いながら答えた。

「それにしても聖女さんがクビとはね。王国は一体何を考えているのだか」

「私としては、肩の荷が降りた気分ですよ」

「聖女さん、いつでも戻って来て良いんだからね」

「ふふふ、それは遠慮しておきます」

 宮廷の門番さんと会話をしながら、今後について考えごとをしていた。

 王都にいては、何か問題ごとに巻き込まれてしまうかもしれません。
 この際、どこか遠くの街に行ってしまうの良いかもしれない。

「それでは行きますね。今までありがとうございました」

「こちらこそありがとう、聖女さんが居なくなるのは残念だよ」

 門番さんとの会話を後に、私は宮廷を離れて歩き始めた。

 ◇

「冒険者都市までの馬車がありますね」

 今後の移動のことを考えて、馬車の案内掲示板を見ていた。
 ここには、王都からさまざまな都市へと向かう馬車が出ている。

 私は移住する候補地に選んだのは、冒険者都市だった。
 冒険者都市なら貴族たちによる支配もなく、縛られることはない。
 お金さえ払えば住居にも困ることはなく、お金さえあれば住み心地の良い街だと噂で聞いていた。

「えっ、片道5000硬貨ですか」

 財布をちらり、と覗いてみる。
 そこには、5500硬貨入っていた。

 ここに入っている金額が、これまで宮廷で支給された給金の全てだ。
 僅かばかりの給金を無駄遣いすることなく、コツコツと貯めて来たのだ。

「い、行けなくはないですね......」

 冒険者都市まで5000硬貨。
 格安の宿を探すことが出来れば、一泊は出来るかもしれないけど、その後はどうなるかは分からない。

「の、乗ります!」

「はいよ、5000硬貨だよ」

「はい、これで」

 考えていても仕方ないので、馬車へと乗ることにした。
 どの道このまま王都にいたって、よろしくないことが起こりそうな気がする。
 それなら、冒険者都市で仕事を探しながら生きて行く方法を探そう。

 そう考える内に、馬車が動き始める。
 王都の道とは違ってゴツゴツと舗装されていないでこぼこ道を、馬車に揺られながら進んで行く。

「気持ち悪い」

「大丈夫ですか?」

 ぎゅうぎゅうに押し込まれた馬車の荷台で、隣から声が聞こえた。
 隣には、顔を真っ青にした若い男性が辛そうにしていた。

「馬車に揺られて酔っただけだ、気にすんな」

「気休めですが回復魔法ヒール

「あれ? なんか急に体調が良くなったぞ。治療師だったのか、ありがとな嬢ちゃん」

「いえいえ」

 そんなやり取りを数回しながら、目的地の冒険者都市へと向かって行く——。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います

かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。 現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。 一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。 【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。 癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。 レイナの目標は自立する事なのだが……。

旦那様、離婚しましょう ~私は冒険者になるのでご心配なくっ~

榎夜
恋愛
私と旦那様は白い結婚だ。体の関係どころか手を繋ぐ事もしたことがない。 ある日突然、旦那の子供を身籠ったという女性に離婚を要求された。 別に構いませんが......じゃあ、冒険者にでもなろうかしら? ー全50話ー

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜

ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。 その一員であるケイド。 スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。 戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。 それでも彼はこのパーティでやって来ていた。 彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。 ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。 途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。 だが、彼自身が気付いていない能力があった。 ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。 その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。 自分は戦闘もできる。 もう荷物持ちだけではないのだと。 見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。 むしろもう自分を卑下する必要もない。 我慢しなくていいのだ。 ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。 ※小説家になろう様でも連載中

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

処理中です...