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2話 宮廷から解放される
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宮廷の入り口、門番がいる場所にいた。
「やっと宮廷から追放されました」
「ははは、そう言ってくれるな聖女さん」
私が呟いた発言に、門番さんが笑いながら答えた。
「それにしても聖女さんがクビとはね。王国は一体何を考えているのだか」
「私としては、肩の荷が降りた気分ですよ」
「聖女さん、いつでも戻って来て良いんだからね」
「ふふふ、それは遠慮しておきます」
宮廷の門番さんと会話をしながら、今後について考えごとをしていた。
王都にいては、何か問題ごとに巻き込まれてしまうかもしれません。
この際、どこか遠くの街に行ってしまうの良いかもしれない。
「それでは行きますね。今までありがとうございました」
「こちらこそありがとう、聖女さんが居なくなるのは残念だよ」
門番さんとの会話を後に、私は宮廷を離れて歩き始めた。
◇
「冒険者都市までの馬車がありますね」
今後の移動のことを考えて、馬車の案内掲示板を見ていた。
ここには、王都からさまざまな都市へと向かう馬車が出ている。
私は移住する候補地に選んだのは、冒険者都市だった。
冒険者都市なら貴族たちによる支配もなく、縛られることはない。
お金さえ払えば住居にも困ることはなく、お金さえあれば住み心地の良い街だと噂で聞いていた。
「えっ、片道5000硬貨ですか」
財布をちらり、と覗いてみる。
そこには、5500硬貨入っていた。
ここに入っている金額が、これまで宮廷で支給された給金の全てだ。
僅かばかりの給金を無駄遣いすることなく、コツコツと貯めて来たのだ。
「い、行けなくはないですね......」
冒険者都市まで5000硬貨。
格安の宿を探すことが出来れば、一泊は出来るかもしれないけど、その後はどうなるかは分からない。
「の、乗ります!」
「はいよ、5000硬貨だよ」
「はい、これで」
考えていても仕方ないので、馬車へと乗ることにした。
どの道このまま王都にいたって、よろしくないことが起こりそうな気がする。
それなら、冒険者都市で仕事を探しながら生きて行く方法を探そう。
そう考える内に、馬車が動き始める。
王都の道とは違ってゴツゴツと舗装されていないでこぼこ道を、馬車に揺られながら進んで行く。
「気持ち悪い」
「大丈夫ですか?」
ぎゅうぎゅうに押し込まれた馬車の荷台で、隣から声が聞こえた。
隣には、顔を真っ青にした若い男性が辛そうにしていた。
「馬車に揺られて酔っただけだ、気にすんな」
「気休めですが回復魔法」
「あれ? なんか急に体調が良くなったぞ。治療師だったのか、ありがとな嬢ちゃん」
「いえいえ」
そんなやり取りを数回しながら、目的地の冒険者都市へと向かって行く——。
「やっと宮廷から追放されました」
「ははは、そう言ってくれるな聖女さん」
私が呟いた発言に、門番さんが笑いながら答えた。
「それにしても聖女さんがクビとはね。王国は一体何を考えているのだか」
「私としては、肩の荷が降りた気分ですよ」
「聖女さん、いつでも戻って来て良いんだからね」
「ふふふ、それは遠慮しておきます」
宮廷の門番さんと会話をしながら、今後について考えごとをしていた。
王都にいては、何か問題ごとに巻き込まれてしまうかもしれません。
この際、どこか遠くの街に行ってしまうの良いかもしれない。
「それでは行きますね。今までありがとうございました」
「こちらこそありがとう、聖女さんが居なくなるのは残念だよ」
門番さんとの会話を後に、私は宮廷を離れて歩き始めた。
◇
「冒険者都市までの馬車がありますね」
今後の移動のことを考えて、馬車の案内掲示板を見ていた。
ここには、王都からさまざまな都市へと向かう馬車が出ている。
私は移住する候補地に選んだのは、冒険者都市だった。
冒険者都市なら貴族たちによる支配もなく、縛られることはない。
お金さえ払えば住居にも困ることはなく、お金さえあれば住み心地の良い街だと噂で聞いていた。
「えっ、片道5000硬貨ですか」
財布をちらり、と覗いてみる。
そこには、5500硬貨入っていた。
ここに入っている金額が、これまで宮廷で支給された給金の全てだ。
僅かばかりの給金を無駄遣いすることなく、コツコツと貯めて来たのだ。
「い、行けなくはないですね......」
冒険者都市まで5000硬貨。
格安の宿を探すことが出来れば、一泊は出来るかもしれないけど、その後はどうなるかは分からない。
「の、乗ります!」
「はいよ、5000硬貨だよ」
「はい、これで」
考えていても仕方ないので、馬車へと乗ることにした。
どの道このまま王都にいたって、よろしくないことが起こりそうな気がする。
それなら、冒険者都市で仕事を探しながら生きて行く方法を探そう。
そう考える内に、馬車が動き始める。
王都の道とは違ってゴツゴツと舗装されていないでこぼこ道を、馬車に揺られながら進んで行く。
「気持ち悪い」
「大丈夫ですか?」
ぎゅうぎゅうに押し込まれた馬車の荷台で、隣から声が聞こえた。
隣には、顔を真っ青にした若い男性が辛そうにしていた。
「馬車に揺られて酔っただけだ、気にすんな」
「気休めですが回復魔法」
「あれ? なんか急に体調が良くなったぞ。治療師だったのか、ありがとな嬢ちゃん」
「いえいえ」
そんなやり取りを数回しながら、目的地の冒険者都市へと向かって行く——。
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