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1話 宮廷追放

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 宮廷のとある一角にある治療院。

「治療師さん、わたくし怪我をしてしまったの」

「少しお待ち下さいね」

 とある貴族ご令嬢が怪我の治療を求めてやって来た。
 怪我を見ると、擦りむいて赤くなったくらいで、重症ではない。

「少しだけピリッとしますよ、回復魔法ヒール

「いつもありがとうね、治療師さん。後が残ったら大変でしたわ」

 貴族の令嬢は痛そうな顔をしながら、感謝を告げて来た。
 治療師からしたらなんてことない怪我でも、貴族の令嬢からしたら違うらしい。
 小さな怪我のあと一つあるかないかで、今後の人生が大きく変わってしまうとか、なんとか。

 私の名前は、メアリー。
 今みたいに怪我をした貴族たちの治療を行うのが仕事だ。
 貴族たちと言うこともあって、怪我の程度は軽いものが多く、重傷者なんてほぼいないと言うよりいないに近い。

 宮廷で怪我人が発生した時には、王国で何か問題が起きた時だろう。
 その時には、王国お抱えの治療師がたくさん出てくるはずなので、私の仕事は無くなるはずだ。

「治療師さん、私もお願いしますわ」

「分かりました、少しだけお待ち下さいね」

 そんな治療院には、多くの人が訪れている。
 結婚間近の令嬢から、小さな令嬢、結婚した後に怪我をしてしまった令嬢。
 私が女性ということもあって、担当するのは貴族の令嬢たちだ。

「これで大丈夫です。痛むようでしたら、後でまた治療院に来て下さいね」

「ありがとうございますわ、いつも助かっています」

 治療を受けた令嬢は、礼儀正しくお礼をして部屋を去っていく。


 ◇

「お前が聖女だな」

「あなたさまは、確かカールさま」

「ふん、聖女でもこの僕の名前は知っているか」

 治療院で回復魔法を使っていると、カールさまが部屋へと入って来た。
 カールさまは、王国の第三王子で、宮廷内の評判はあまりよろしくない。

「それでカールさま、このような場所にどうしたのですか。怪我であれば王族御用達の治療師があるはずでは......」

「そんなことは僕でも分かっている!」

 カールさまは、怒っているのが一目で分かるほど、顔を真っ赤にしている。

「ここは女性の治療院ですので、王族と言えどもあまり近付かない方がよろしいかと......」

「うるさい、うるさいっ! そんなことは父上から聞いて知っているっ!」

 それなら、一体どうしてこんな場所に来たのでしょうか。

「聖女、お前は宮廷から追放クビだ!」

「え、ですが王さまからは......」

「うるさいっ! お前ほどの治療師であれば代わりがきく。それに聖女一人の派遣にどれほどの金がかかると思っているんだっ! この僕のお小遣いが支給されないほど、財源が圧迫されているんだぞ」

「......」

 第三王子のカールさまは、何を言ってるのでしょうか。
 王国から私に支払われている給金は、物凄く少なく生活するのもやっとの金額です。

「あ、あのカール王子、その治療師さんは......」

「うるさいぞ、王子である僕の決定は絶対だ」

 治療院に来ていた貴族の令嬢たちが何か言おうとしても、カールさまは話を聞こうとすらしない。

「聖国との協定のせいで我が国は不利益を被っているんだ、聖女、貴様は追放クビだっ!」

「カールさま、本当によろしいのですね?」

「当たり前だ、貴様なんかいらない」

 こうして、私は王国の治療院を追放されてしまった。
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