真実の愛を見つけたからと婚約破棄されました。私も真実の愛を見つけたので、今更復縁を迫っても遅いです

ダイナイ

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15話 婚約パレード

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「ローラ、さぁ手を」

「はい、アレックスさま」

 私は、アレックスに手を引かれて馬車へと乗り込みます。
 馬車には、たくさんの飾り付けが施されていて、少し派手な気がします。

「ローラ、大丈夫かい? 少し緊張きんちょうしているように見えるけれど」

「ええ、大丈夫ですわ。ほんの少しだけ緊張しているだけですわ」

「それなら良かった。ではもっと窓際によって、外から見えるように座ってほしい」

「分かりましたわ」

 私は言われるがままに、馬車の窓際、外から良く見える位置に座りました。
 笑顔を忘れてないように、気をつけながら表情の練習をします。


 どうして、こんなことをしているのかと言うと、それは少し前にさかのぼります。
 あれは私とアレックスが、国王に婚約の報告をして、許可をもらった時のことです——。



 ◇


 王城のとある一室。
 ここは私とアレックスが、国王に婚約報告をした部屋です。

「うむ、認めよう。王子アレックス、アシュトン公爵のローラ、両者の婚姻こんいんを認めよう」

 国王からも許可をもらえて、私たちは喜び合いました。
 これでやっと、結ばれることが出来るのだと。

「それで、だ、アレックスよ」

「はい父上、分かっています」

 どうやら、話はまだ続くみたいです。
 婚約報告以外にも、何かあるのでしょうか?

「ああ、ローラにはまだ言ってなかったね」

「そうであったか」

 なんでしょう?
 私だけ分からない何かがあるのでしょうか。

「ごほん。アレックスとローラの婚約は、王都の民たちに発表せねばならん」

「え?」

「僕たち王族の婚約は、王都中に発表して、婚約パレードを行うのが伝統なんだ」

 えっ?

「ええっー!?」

 私、知りませんでした。
 大勢の人の前に出て、何かしなければいけないのでしょうか。
 混乱していると、アレックスは笑いながら言いました。

「ははは、心配しなくても大丈夫だよローラ」

「うむ、用意は全て王国側で行う。ローラは当日、笑って手を振っているだけで良い」

「え、ええ......」

 二人は、簡単なことのように言っていますけど、大丈夫でしょうか。
 私は、大勢の前に出た経験はあまり多くはありません。

 大勢の人に囲まれているところを想像すると、手に汗が出てきました。
 私の汗でベトベトになった手を、アレックスがにぎりしめて言いました。

「僕がいるローラ。何かあれば、全力でサポートとすると約束する。もし、それでもダメなら僕のことを見てくれれば、何とかしよう」

 アレックスの言葉は、とても力強く、とても心地よいものでした。
 先程までの緊張はすっかりとほぐれて、なんだか行けそうな気すらして来ました。
 隣にアレックスがいる。何かあっても大丈夫なのだと、そう思えました——。



 ◇



 王都中に、空砲が鳴り響きました。
 とうとう婚約パレードが始まるみたいです

 空砲が終わると、音楽隊による演奏も始まりました。
 気持ちが盛りが上がるような行進曲で、馬車が動き始めます。

「ローラ、さぁ行こう」
「ええ、アレックスさま」

 王都の門は開かれ、私たちが乗る馬車が前へと進んで行きます。

「いたぞー! アレックス王子に、ローラさまが乗っているぞ!」
「アレックス王子~」
「ローラさまー」

 王都にいる住民が、全て集まっているのではないかというくらいに、道のわきは人で埋め尽くされている。
 門から王城まで一本に伸びている道の両脇りょうわきには、人、人、人。

 あまりの人の多さにいそうになる。
 気持ちを落ち着かせようと、アレックスの方を見ると、ほほんで私の方を見てくれました。

 大丈夫。何とかなります。
 私は、気をしっかりと保って窓の外へと視線を戻しました。
 そして王都の民たちへと、笑顔で手を振りました。

 私が手を振ると、わぁっーと歓声が上がり、民たちはさらに盛り上がりました。

「ローラさまだぁ!」
「ローラさまが手を振っているぞー!」
「こっちを向いて~、ローラさま~」

 緊張しながらも、私がやらねばならないことを全力でやりました。
 笑顔を向けて、手を振り続ける。

 簡単なことではありますが、手を振っているうちに、責任の重さを感じ始めました。
 私は、アレックスの妻に、王族の一員に加わったのだと——。

 目の前にいる民たちは、これから私が守らなければならない存在。
 この民たちの笑顔を、ずっと守って行かなければなりません。
 それがアレックスの妻として、私が成さねばならない責務です。

 馬車は、大勢の声援を浴びながら、一本道を牛歩ぎゅうほの歩みで進んで行く。
 私たちの存在を、王都中に刻み込むかのように——。



 ◇


 馬車は、やっと王城へとたどり着いて婚約パレードも終わりました。
 馬車の終着点には、国王が待っていてくれました。

「よく頑張ったなローラ」
「うむ、よくやったローラよ」

 アレックスと国王は、私のことをほめてくれめした。

「少し、少しだけ疲れましたわ」

「お疲れさまローラ」

「これからもっと忙しくなるぞ」

 国王は、これからは結婚式について決めなければならないと言いました。
 王国内外から有力貴族たちを招いて、私とアレックスの結婚式を挙げるみたいです。

「とりあえず今日はもう公爵領へと戻りなさい。今のうちに両親と話しておくことだ」

「ローラ、今日はゆっくりと休むんだよ」

「はい、国王さま。アレックスさま」


 私は、一度公爵領へと戻ることにしました——。
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