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7話 お茶会
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「久しぶりの王都ですわ」
今回は、一人で公爵領から王都に来ました。
前回みたいに王都にある屋敷にも、母はいません。
アレックス主催のお茶会が開かれる、会場へとやって来ました。
前回のパーティーの時のように、護衛の兵士が立っているので、場所が分かりやすかったです。
「ようこそ、アシュトン公爵のご令嬢ですね。どうぞ、お入りください」
「え、ええ。ありがとう」
あれ?
前回のパーティーの時は、招待状の確認を求められたのに、今回はありませんでした。
どういうことでしょうか。
他の貴族たちは、前回のように確認されています。
どうして、私だけは確認がいらないのでしょうか?
アレックスが何か手回しをしていたのかもしれないと思いつつ、建物へと入った。
建物にはすでに大勢の貴族が集まっていて、お茶会が始まるのを待っているみたいです。
「エドガーさま~、早く行きましょう~」
「分かったから離れてくれないか、デイジー」
目の前を元婚約者のエドガーと、その恋人であるデイジーが通って行きました。
そういえば彼らも、来ないはずがありませんでしたね。
自分たちの仲の良さを、周囲に見せびらかしているように思えます。
だけど、ちょっとこの場では相応しくないかもしれませんね。
そんなことは置いて、私はアレックスを探した。
お茶会の会場にはいると思うのだけど、見当たりません。
と、思っているとアレックスが会場へと入って来ました。
「王子アレックスだ。皆、今回の僕のお茶会に来てくれてありがとう。本来であれば、椅子に座ってゆっくりと語り合うべきだろう。だが、人数も多いので今回は立食形式でのお茶会とさせてもらう」
アレックスはみんなの前に立って、主催としてのあいさつを始めました。
私は文通をしていたので、事前に聞かされていました。
今回は、立って飲み食い出来る立食形式でお茶会をすると。
「立食形式では悪いとは思うが、お茶の味は保証しよう。僕自らがおいしいと思った特別なものを、王国内外の各地からそろえさせてもらった」
周囲からは、おおっー、との声が上がった。
「では、皆、今日は良きお茶会としよう」
アレックスのあいさつは終わり、メイドや執事たちが入って来た。
そしてお茶の用意を始め、アレックス主催のお茶会が始まった。
貴族たちは我先にと、お茶を求めて行動を開始しました。
それもそのはずです。
王子自らが集めた、一級品のお茶の数々を飲める機会はそうそうありません。
私もお茶を飲もうと、動き始めました。
ズズズ
まぁ、誰でしょうか。
とてもマナーの悪い人がいますけど、人が多くて誰だか分かりません。
「やぁローラ、久しぶり」
「お久しぶりですわ、アレックスさま」
そんな事を考えいると、アレックスから話しかけられました。
文通はしていましたけれど、直接会うのはとても久しぶりです。
なんだが、恥ずかしいような気持ちになります。
それはアレックスも同じなのか、どこか照れた様子です。
「ローラ、変わりがないようで安心したよ」
「変わりがあったら、連絡していますわ」
「それもそうだね」
私たちは、二人で笑い合いました。
「さて、ローラにもお茶会を楽しんでもらいたい。僕で良ければ案内をして良いかい?」
「ええ、お願いしますわ」
私は、お茶には詳しくないので、アレックスに案内をお願いしました。
これだけ立派なお茶会を開くのなら、任せておいた方が安心出来ます。
「それなら、まずはこれだ! 南方の国から取り寄せた一品で、独特な匂いはあるけれど、慣れてしまえばとても美味しいんだ」
私は、アレックスが勧めてくれたお茶を飲んだ。
嗅いだことのない風味が広がり、不思議な気分になりやがて喉元を通り過ぎた。
だけど。
「お、おいしいですわ」
「そうだろうっ! そうだと思ったんだ」
アレックスは子供のようにはしゃいで、喜んでいる。
そして、あれもこれもと自慢の一品を紹介してくれました。
自分の好きなものを、楽しそうに紹介しているアレックスは、とても輝いて見えました。
「これなんかどうだ? 西方から取り寄せた物で、苦味はあるが砂糖を加えれば、女性でも飲みやすくなるんだ」
「まぁ、本当!」
アレックスが紹介してくれる飲み物は、どれも美味しいです。
気を良くしたのか、次から次へと会場を回って行きました。
会場を案内されて回っている時に、エドガーたちを再び見かけました。
デイジーはエドガーを引っ張っていましたけど、エドガーは違いました。
なぜか、私のことを驚いたような目で見て、ずっと凝視して来ました。
どうしたのでしょうか。
私に、何かついていたのでしょうか。
「さぁ、これはローラ、君に合うんじゃないかと思って取り寄せた一品だ。飲んでみてくれないか」
アレックスの声で、エドガーから意識が戻った。
そして勧められたお茶を飲みました。
口に含んだ瞬間に広がる、花のような心地よい香り。
味も甘すぎず、丁度良い上品な甘さです。
「アレックスさま! これ、とても美味しいですわ!」
「良かった、君に合うんじゃないかと思っていたんだ」
アレックスが私のために、わざわざ遠方から取り寄せたお茶。
どれだけ高価なものかは分かりませんが、とても美味しかったです。
私が褒めたのが嬉しかったのか、アレックスは満面の笑みを浮かべています。
「さぁ、まだまだ君に見てほしいものがあるんだ!」
アレックスは私の手を取って、会場を案内してくれました
——。
お茶会をお開きとなり、集まっていた貴族たちは帰って行きました。
「アレックスさま、今日はありがとうございました。とても良い一日を過ごせましたわ」
「僕もローラに楽しんでもらえて、良かったよ」
アレックスはほほ笑んでいます。
「それでローラ」
「どうしたのですか?」
アレックスはどこか恥ずかしそうに、声をかけて来ました。
「ローラが公爵領に戻る前に、また会えないかな」
「えーと、確か明日ならまだ王都にいますわ」
「そ、それなら、明日一緒に出かけないか!」
私は、喜んでと短くお誘いを受け入れました——。
今回は、一人で公爵領から王都に来ました。
前回みたいに王都にある屋敷にも、母はいません。
アレックス主催のお茶会が開かれる、会場へとやって来ました。
前回のパーティーの時のように、護衛の兵士が立っているので、場所が分かりやすかったです。
「ようこそ、アシュトン公爵のご令嬢ですね。どうぞ、お入りください」
「え、ええ。ありがとう」
あれ?
前回のパーティーの時は、招待状の確認を求められたのに、今回はありませんでした。
どういうことでしょうか。
他の貴族たちは、前回のように確認されています。
どうして、私だけは確認がいらないのでしょうか?
アレックスが何か手回しをしていたのかもしれないと思いつつ、建物へと入った。
建物にはすでに大勢の貴族が集まっていて、お茶会が始まるのを待っているみたいです。
「エドガーさま~、早く行きましょう~」
「分かったから離れてくれないか、デイジー」
目の前を元婚約者のエドガーと、その恋人であるデイジーが通って行きました。
そういえば彼らも、来ないはずがありませんでしたね。
自分たちの仲の良さを、周囲に見せびらかしているように思えます。
だけど、ちょっとこの場では相応しくないかもしれませんね。
そんなことは置いて、私はアレックスを探した。
お茶会の会場にはいると思うのだけど、見当たりません。
と、思っているとアレックスが会場へと入って来ました。
「王子アレックスだ。皆、今回の僕のお茶会に来てくれてありがとう。本来であれば、椅子に座ってゆっくりと語り合うべきだろう。だが、人数も多いので今回は立食形式でのお茶会とさせてもらう」
アレックスはみんなの前に立って、主催としてのあいさつを始めました。
私は文通をしていたので、事前に聞かされていました。
今回は、立って飲み食い出来る立食形式でお茶会をすると。
「立食形式では悪いとは思うが、お茶の味は保証しよう。僕自らがおいしいと思った特別なものを、王国内外の各地からそろえさせてもらった」
周囲からは、おおっー、との声が上がった。
「では、皆、今日は良きお茶会としよう」
アレックスのあいさつは終わり、メイドや執事たちが入って来た。
そしてお茶の用意を始め、アレックス主催のお茶会が始まった。
貴族たちは我先にと、お茶を求めて行動を開始しました。
それもそのはずです。
王子自らが集めた、一級品のお茶の数々を飲める機会はそうそうありません。
私もお茶を飲もうと、動き始めました。
ズズズ
まぁ、誰でしょうか。
とてもマナーの悪い人がいますけど、人が多くて誰だか分かりません。
「やぁローラ、久しぶり」
「お久しぶりですわ、アレックスさま」
そんな事を考えいると、アレックスから話しかけられました。
文通はしていましたけれど、直接会うのはとても久しぶりです。
なんだが、恥ずかしいような気持ちになります。
それはアレックスも同じなのか、どこか照れた様子です。
「ローラ、変わりがないようで安心したよ」
「変わりがあったら、連絡していますわ」
「それもそうだね」
私たちは、二人で笑い合いました。
「さて、ローラにもお茶会を楽しんでもらいたい。僕で良ければ案内をして良いかい?」
「ええ、お願いしますわ」
私は、お茶には詳しくないので、アレックスに案内をお願いしました。
これだけ立派なお茶会を開くのなら、任せておいた方が安心出来ます。
「それなら、まずはこれだ! 南方の国から取り寄せた一品で、独特な匂いはあるけれど、慣れてしまえばとても美味しいんだ」
私は、アレックスが勧めてくれたお茶を飲んだ。
嗅いだことのない風味が広がり、不思議な気分になりやがて喉元を通り過ぎた。
だけど。
「お、おいしいですわ」
「そうだろうっ! そうだと思ったんだ」
アレックスは子供のようにはしゃいで、喜んでいる。
そして、あれもこれもと自慢の一品を紹介してくれました。
自分の好きなものを、楽しそうに紹介しているアレックスは、とても輝いて見えました。
「これなんかどうだ? 西方から取り寄せた物で、苦味はあるが砂糖を加えれば、女性でも飲みやすくなるんだ」
「まぁ、本当!」
アレックスが紹介してくれる飲み物は、どれも美味しいです。
気を良くしたのか、次から次へと会場を回って行きました。
会場を案内されて回っている時に、エドガーたちを再び見かけました。
デイジーはエドガーを引っ張っていましたけど、エドガーは違いました。
なぜか、私のことを驚いたような目で見て、ずっと凝視して来ました。
どうしたのでしょうか。
私に、何かついていたのでしょうか。
「さぁ、これはローラ、君に合うんじゃないかと思って取り寄せた一品だ。飲んでみてくれないか」
アレックスの声で、エドガーから意識が戻った。
そして勧められたお茶を飲みました。
口に含んだ瞬間に広がる、花のような心地よい香り。
味も甘すぎず、丁度良い上品な甘さです。
「アレックスさま! これ、とても美味しいですわ!」
「良かった、君に合うんじゃないかと思っていたんだ」
アレックスが私のために、わざわざ遠方から取り寄せたお茶。
どれだけ高価なものかは分かりませんが、とても美味しかったです。
私が褒めたのが嬉しかったのか、アレックスは満面の笑みを浮かべています。
「さぁ、まだまだ君に見てほしいものがあるんだ!」
アレックスは私の手を取って、会場を案内してくれました
——。
お茶会をお開きとなり、集まっていた貴族たちは帰って行きました。
「アレックスさま、今日はありがとうございました。とても良い一日を過ごせましたわ」
「僕もローラに楽しんでもらえて、良かったよ」
アレックスはほほ笑んでいます。
「それでローラ」
「どうしたのですか?」
アレックスはどこか恥ずかしそうに、声をかけて来ました。
「ローラが公爵領に戻る前に、また会えないかな」
「えーと、確か明日ならまだ王都にいますわ」
「そ、それなら、明日一緒に出かけないか!」
私は、喜んでと短くお誘いを受け入れました——。
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