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6話 茶会への誘い
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アレックス主催のパーティーが終わった後、公爵領へは戻りませんでした。
私は母が待つ、アシュトン公爵家が王都に保有している建物へと向かいました。
暗くなってからの移動には、多くの危険が伴うため、今日はここで一泊します。
「ただいま帰りました、お母さま」
「ローラ、お帰りなさい」
母が出迎えてくれました。
「ローラ、大丈夫だったの? 何もなかったの?」
「ええ、大丈夫ですよお母さま」
母はとても心配していたみたいです。
「そう? それなら良かったわ。お母さん、ローラには行けと言ったけど、気が気がじゃなかったの」
母の言葉に、あたふたしながら待つ母の姿が目に浮かんだ。
ちょっと見たかった気もします。
「それで、例の王子さまとはどうだったの?」
「どうだったとは、どういうことですか?」
「まさか誘われておいて、何もなかったなんてことはなかったのでしょう?」
母の目がギラリと光ったように見えた。
「そ、それは——」
こうなった母の前では、嘘は通用しません。
私は観念して、正直に話すことにしました。
アレックス主催のパーティーでの出来事を、素直に話しました。
「ふふふ、なるほどねぇ」
母はニヤニヤとしながら、喜んでいるようです。
「ローラ、チャンスよ!」
「チャ、チャンスですか?」
「ええ、これはチャンスよ! 私の見立てでは、王子さまはローラに気があるわ。少なくとも、ローラのことが気になり始めてはいるわね」
え?
アレックスが私に気があるかもしれない?
「ええっーーー!」
◇
「良く帰って来たねローラ、エミリー」
「ただいま戻りましたお父さま」
「今戻ったわ、あなた」
早朝に王都を出て、アシュトン公爵領へと戻って来ていた。
屋敷に帰ると、父が出迎えてくれました。
「さぁ、王都での出来事を聞かせておくれ」
「ええ、お父さま」
私は、母に話したことを父にも話しました。
父は笑顔で話を聞いてくれました。
王都から屋敷へと戻ってから、しばらくは何事もなく平穏な日々を過ごしていました。
領地でなんてことはない一日を過ごしながら、ゆったりとした時間の中、家族で生活をしていました。
「お嬢さま、失礼します」
「あら、どうしたの」
自室でゆっくりと過ごしていると、メイドの声が聞こえて来た。
私は、扉を開けて対応をしました。
「王家からのお手紙が来ています」
「それでしたら、お父さまに渡してください」
「それが......」
メイドは何か言いたそうな様子だった。
「それが、公爵家宛ではなくローラさま宛に届いているのです」
「え? 私に?」
どういうことだろう。
とりあえず、手紙を受け取って部屋へと戻りました。
早速手紙を開けてみると、アレックスから私宛に書かれたものでした。
手紙には、
『ローラへ。いきなりの手紙を失礼する。あのパーティーでの出来事が、どうやら忘れられなくなってしまったようだ。ローラさえ良ければ、僕と文通をしてくれないか?』
と書いてあった。
私は驚きつつも、パーティーでの出来事を思い出しました。
アレックスと過ごした、短いけれど楽しかった時間。
アレックスなら良い話相手になるかもしれません。
私は、父と母に手紙のことを話して、文通をしても良いか聞いてみました。
「ローラの好きなようにしてみなさい」
「ローラ、その釣竿を絶対に手放してはダメよ」
父と母は、喜んで承諾してくれました。
けれど、私には母の言っていることの意味が、あまり分かりませんでした。
許可ももらえたので、アレックスに私からも文通をしましょう、と送りました。
それからは早かったです。
アレックスからの返事が届いて、私たちは文通を始めました。
日常の些細な出来事から、くだらないことまで、多くのやり取りをしました。
アレックスは王子としての責務が大変らしく、たまに愚痴をもらしたりもしていた。
「ふふ、アレックスさまったら」
たまには、笑えるような内容もありました。
アレックスはとてもマメな性格で、私の書いた手紙にすぐに返事を出して来ました。
雨の日も風の強い日も関係なく、絶対に返事をくれました。
そんな文通でのやり取りを始めてから少し経った頃、私はいつものようにアレックスからの手紙を開けて読みました。
『今度はお茶会を開くのだが、ローラが良ければ参加しないかい?』
それはいつものような内容ではなく、お茶会へのお誘いでした——。
私は少し悩んでから、父と母にお茶会のことを話してみました。
「ローラの好きなようにしなさい」
「ローラ、掴んだ釣竿を離してはダメよ」
父は快く承諾してくれましたけど、私には母の言っていることの意味が、よく分かりませんでした。
両親からの許可をもらえたので、すぐに返事を書きました。
『ぜひ、参加させてください』
と。
文通でのやり取りだけで、直接会うことはありませんでした。
アレックスに会えると思うと、どこか心が弾むような気がします。
私は、アレックスのことでいっぱいになっていました。
前はあれほど悩んでいたエドガーのことは、これっぽっちも頭の隅にも出てきませんでした——。
私は母が待つ、アシュトン公爵家が王都に保有している建物へと向かいました。
暗くなってからの移動には、多くの危険が伴うため、今日はここで一泊します。
「ただいま帰りました、お母さま」
「ローラ、お帰りなさい」
母が出迎えてくれました。
「ローラ、大丈夫だったの? 何もなかったの?」
「ええ、大丈夫ですよお母さま」
母はとても心配していたみたいです。
「そう? それなら良かったわ。お母さん、ローラには行けと言ったけど、気が気がじゃなかったの」
母の言葉に、あたふたしながら待つ母の姿が目に浮かんだ。
ちょっと見たかった気もします。
「それで、例の王子さまとはどうだったの?」
「どうだったとは、どういうことですか?」
「まさか誘われておいて、何もなかったなんてことはなかったのでしょう?」
母の目がギラリと光ったように見えた。
「そ、それは——」
こうなった母の前では、嘘は通用しません。
私は観念して、正直に話すことにしました。
アレックス主催のパーティーでの出来事を、素直に話しました。
「ふふふ、なるほどねぇ」
母はニヤニヤとしながら、喜んでいるようです。
「ローラ、チャンスよ!」
「チャ、チャンスですか?」
「ええ、これはチャンスよ! 私の見立てでは、王子さまはローラに気があるわ。少なくとも、ローラのことが気になり始めてはいるわね」
え?
アレックスが私に気があるかもしれない?
「ええっーーー!」
◇
「良く帰って来たねローラ、エミリー」
「ただいま戻りましたお父さま」
「今戻ったわ、あなた」
早朝に王都を出て、アシュトン公爵領へと戻って来ていた。
屋敷に帰ると、父が出迎えてくれました。
「さぁ、王都での出来事を聞かせておくれ」
「ええ、お父さま」
私は、母に話したことを父にも話しました。
父は笑顔で話を聞いてくれました。
王都から屋敷へと戻ってから、しばらくは何事もなく平穏な日々を過ごしていました。
領地でなんてことはない一日を過ごしながら、ゆったりとした時間の中、家族で生活をしていました。
「お嬢さま、失礼します」
「あら、どうしたの」
自室でゆっくりと過ごしていると、メイドの声が聞こえて来た。
私は、扉を開けて対応をしました。
「王家からのお手紙が来ています」
「それでしたら、お父さまに渡してください」
「それが......」
メイドは何か言いたそうな様子だった。
「それが、公爵家宛ではなくローラさま宛に届いているのです」
「え? 私に?」
どういうことだろう。
とりあえず、手紙を受け取って部屋へと戻りました。
早速手紙を開けてみると、アレックスから私宛に書かれたものでした。
手紙には、
『ローラへ。いきなりの手紙を失礼する。あのパーティーでの出来事が、どうやら忘れられなくなってしまったようだ。ローラさえ良ければ、僕と文通をしてくれないか?』
と書いてあった。
私は驚きつつも、パーティーでの出来事を思い出しました。
アレックスと過ごした、短いけれど楽しかった時間。
アレックスなら良い話相手になるかもしれません。
私は、父と母に手紙のことを話して、文通をしても良いか聞いてみました。
「ローラの好きなようにしてみなさい」
「ローラ、その釣竿を絶対に手放してはダメよ」
父と母は、喜んで承諾してくれました。
けれど、私には母の言っていることの意味が、あまり分かりませんでした。
許可ももらえたので、アレックスに私からも文通をしましょう、と送りました。
それからは早かったです。
アレックスからの返事が届いて、私たちは文通を始めました。
日常の些細な出来事から、くだらないことまで、多くのやり取りをしました。
アレックスは王子としての責務が大変らしく、たまに愚痴をもらしたりもしていた。
「ふふ、アレックスさまったら」
たまには、笑えるような内容もありました。
アレックスはとてもマメな性格で、私の書いた手紙にすぐに返事を出して来ました。
雨の日も風の強い日も関係なく、絶対に返事をくれました。
そんな文通でのやり取りを始めてから少し経った頃、私はいつものようにアレックスからの手紙を開けて読みました。
『今度はお茶会を開くのだが、ローラが良ければ参加しないかい?』
それはいつものような内容ではなく、お茶会へのお誘いでした——。
私は少し悩んでから、父と母にお茶会のことを話してみました。
「ローラの好きなようにしなさい」
「ローラ、掴んだ釣竿を離してはダメよ」
父は快く承諾してくれましたけど、私には母の言っていることの意味が、よく分かりませんでした。
両親からの許可をもらえたので、すぐに返事を書きました。
『ぜひ、参加させてください』
と。
文通でのやり取りだけで、直接会うことはありませんでした。
アレックスに会えると思うと、どこか心が弾むような気がします。
私は、アレックスのことでいっぱいになっていました。
前はあれほど悩んでいたエドガーのことは、これっぽっちも頭の隅にも出てきませんでした——。
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