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隣国の王子様の退屈な舞踏会 2

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 室内へと戻ると、貴族たちがドアの方を向いて待機していた。
 王国の王位継承権第一位のランス王子とその婚約者が舞踏会へと来るからだ。
 その二人が来てから、本格的に舞踏会が始まる。

「ランス王子とエミリーさまが到着しました」

 舞踏会にいた兵士の一人が、室内に十分通る声でそう言った。
 それと同時に、ざわついたいた会場は静かになる。

「遅れてすまないな」

「おお、ランス王子だ」
「エミリーさまもいるぞ」

 ランス王子の到着とともに、静まり返っていた室内はザワつき始める。

 まず最初に、ランス王子が室内へと入って来た。
 その後ろにいるのが婚約者のようだ。
 どんな人かを一目確認すると、衝撃を受けた。

 今まで見て来たどの女性よりも、目の前にいる女性は輝いて見えたのだ。
 長く美しい髪の毛に、着飾らないシンプルなドレス。
 シンプルではあるけれど、目の前の彼女にはそれがとても似合っていた。

「それでは、これより舞踏会を開始します。音楽隊、始めろ」

 声が聞こえ、ハッと我に返った。
 ランス王子の婚約者に、目を奪われてしまっていたようだ。
 周囲では踊り音楽が鳴り始め、舞踏会が始まろうとしている。

「グリンさま、私と踊って頂けませんか」
「ええ、喜んで」

 王国での舞踏会は、男女どちらからでも踊りの誘いをして良いことになっている。
 そのため、隣国の王子である私は未婚女性から狙われやすい。
 ランス王子の婚約者に見とれている間に、目の前にはたくさんの女性たちがいた。

「グリンさま、ダンスがお上手ですのね」

「人並み程度には嗜みましたので」

 王族は、社交の場で失敗があってはならない。
 そのため、厳しいダンスの訓練をこれでもかとやって来たのだ。

「貴方こそ、お上手で」

「私はサラですわ。サラ・ローズデールですわ」

 聞いてもいないのに、サラは名乗って来た。
 公の場での名乗りには然程意味はないが、それでも無下には出来ない。

 サラと名乗った女性は、宝石をこれでもかと散りばめたドレスを着ている。
 見るだけでかなり高価の物であると分かるが、品は感じられない。

「私は知っていると思いますが、グリン・マクニースです」
「まぁ、グリンさまったら」

 サラとの会話をしながら、さりげなく周囲を見渡した。
 先程見かけた彼女を、もう一目見てみたい。

 彼女は、舞踏会場の中央にいた。
 ランス王子と手を取り合い、優雅にダンスをしている。

「もう、グリンさまったら、他の人を見ていると悲しくなってしまいますわ」
「あ、ああ。すまない」

 サラに声をかけられ、ハッとした。
 今は目の前のサラに最大限意識を向けようと、ダンスを再開する。
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