42 / 45
本編
37話 初めての仕事
しおりを挟む
王宮。
王宮内は、物であふれかっていてその整理をしているところです。
前国王や前王太子の趣味である多くの品があり、どれも煌めかんとばかりに置かれた物まであります。
しかも品々を手分けをして、少しずつお金に変えている途中です。
それでもクライトン王国の財政難には、ほんの少しだけしかプラスになりませんでした。
なにせ、二人の趣味はとても悪かったのです。
「なかなか思うようには売れないものだな」
「物が物ですから、仕方ありませんわ......」
王宮にある物は、どれも見たこともないような一級品ばかり。
しかもどれも成金趣味といったもので、普通の人であれば購入することはないようなものばかりです。
「なんだこの黄金に輝くイスは......」
「レオン様も見たことはないのですか?」
「ああ、俺は父上や兄上からは嫌われていたからな。王宮に来ることもめったにないから、何があるかは知らないんだ」
「そうなのですか......」
私は、レオン様の過去を思い出す。
セバスチャンから聞いた話しではあるが、相当ひどい扱いを受けていたようですし。
王宮には、あまり来たくはなかったのかもしれませんね。
レオン国王との会話をしながら、二人で作業をして行く。
他の人たちは、別のことをしているし財産難から、雇う余裕もありません。
だから、国王と王妃ではあるけれど仕事はしっかりとしなくてはいけないのです。
「なんですかこれ。純金の正装用の服、みたいですわね」
私は、純金で出来た趣味の悪い服を見つけた。
それは服と言って良いのか、鎧と言うべきなのか分からない見た目をしています。
「レオン様、着ます?」
私は笑いながら聞いてみた。
レオン国王は、私が手に持つ物を見て「うげっ」と声をあげた。
「そんな物どこで着ると言うんだ。さっさと売ってしまおう」
「......売れますか、これ」
「......分からん」
私たちは、純金の服を見ながら言う。
そして互いを見て、笑った。
こんな風なやりとりをしながら、王宮内の片付けを進めて行きました。
むだに高価な物が多いだけあり、慎重に作業をしなくてはいけません。
◇
数日後。
王宮内の片付けは、数日間に及びました。
あれだけ物であふれかえっていた王宮は、荷物がまとめられて整理されてあります。
「なんとかきれいにはなったな」
「ええ、疲れましたわ」
まだ物は建物内にありますが、売り先が決まりつつありました。
「それにしても、買い取ってくれるところが見つかって良かったですわね」
「俺は物だけに諦めかけていたよ。他国や商人に声をかえて良かった......」
豪華な物は、他国の王族や貴族たちに。
皆、喜んで高値を出して買い取ってくれました。
見た目はあれですが、物だけは良いので互いに満足した取り引きになったはずです。
売れ残った物は、商人たちに買い取ってもらえました。
少しだけ売値は下がりましたが、遠くの国に行けば需要があるらしいです。
運賃や処理費用を考えると、良かったと思うようにしましょう......。
「問題はこれらだな......」
「ええ......」
目の前には、特注品の個人に合わせて作られた物。
純金の服や高級な布などで作られた服など。
「もったいないが、服は作り直し。金は溶かして再利用させよう」
「職人たちに任せましょうか」
「そうだな」
レオン国王は、扱いに困っていた物を見ながら言う。
そして、イスに腰をかけた。
「これでやっとひと段落だ」
「お疲れ様ですわ、レオン様」
「まだ休むのは早いぞシルヴィア。まだまだやることはあるのだからね」
そう言うと、机に置かれている書類を手に取り始める。
机には、新たな国王誕生を祝う手紙がたくさん乗っている。
本来であれば使者が来るところですが、今のクライトン王国に使者に対応するだけの余裕も資金もありません。
それを配慮してか、手紙での祝辞が送られてきました。
「これの返事を書かなくてはいけないな」
「私も手伝いますわ」
「すまないなシルヴィア」
私たちは、手を動かし続けて手紙の返事を書いた。
山のように置かれている手紙は、少しずつ減っていった。
「後は封蝋をして、これで終わりだ」
レオン国王は、最後の手紙に蝋燭を垂らしてその上から印を押した。
これで、机に置かれていた手紙の処理は終えました。
「これで休めますわね」
「いや、次は内政面だ」
「ええ!? まだですか」
私たちの仕事はまだまだ続く。
終えても終えても、次から出てくる仕事を私とレオン国王は二人で作業をして行きました。
財政や外交、その他にもたくさんやることはあります。
ですが私は思いました。
これって王妃のすることじゃありませんわ!
と思っても、レオン国王は文句も言わずに作業をしているので私もがまんすることにしました。
「あー、これって国王がやることじゃないだろ......ん? どうしたんだシルヴィア、そんな顔をして」
「知りませんわ」
「怒ってどうしたんだよ」
そんなやり取りをしながら、作業を進めて行く——。
王宮内は、物であふれかっていてその整理をしているところです。
前国王や前王太子の趣味である多くの品があり、どれも煌めかんとばかりに置かれた物まであります。
しかも品々を手分けをして、少しずつお金に変えている途中です。
それでもクライトン王国の財政難には、ほんの少しだけしかプラスになりませんでした。
なにせ、二人の趣味はとても悪かったのです。
「なかなか思うようには売れないものだな」
「物が物ですから、仕方ありませんわ......」
王宮にある物は、どれも見たこともないような一級品ばかり。
しかもどれも成金趣味といったもので、普通の人であれば購入することはないようなものばかりです。
「なんだこの黄金に輝くイスは......」
「レオン様も見たことはないのですか?」
「ああ、俺は父上や兄上からは嫌われていたからな。王宮に来ることもめったにないから、何があるかは知らないんだ」
「そうなのですか......」
私は、レオン様の過去を思い出す。
セバスチャンから聞いた話しではあるが、相当ひどい扱いを受けていたようですし。
王宮には、あまり来たくはなかったのかもしれませんね。
レオン国王との会話をしながら、二人で作業をして行く。
他の人たちは、別のことをしているし財産難から、雇う余裕もありません。
だから、国王と王妃ではあるけれど仕事はしっかりとしなくてはいけないのです。
「なんですかこれ。純金の正装用の服、みたいですわね」
私は、純金で出来た趣味の悪い服を見つけた。
それは服と言って良いのか、鎧と言うべきなのか分からない見た目をしています。
「レオン様、着ます?」
私は笑いながら聞いてみた。
レオン国王は、私が手に持つ物を見て「うげっ」と声をあげた。
「そんな物どこで着ると言うんだ。さっさと売ってしまおう」
「......売れますか、これ」
「......分からん」
私たちは、純金の服を見ながら言う。
そして互いを見て、笑った。
こんな風なやりとりをしながら、王宮内の片付けを進めて行きました。
むだに高価な物が多いだけあり、慎重に作業をしなくてはいけません。
◇
数日後。
王宮内の片付けは、数日間に及びました。
あれだけ物であふれかえっていた王宮は、荷物がまとめられて整理されてあります。
「なんとかきれいにはなったな」
「ええ、疲れましたわ」
まだ物は建物内にありますが、売り先が決まりつつありました。
「それにしても、買い取ってくれるところが見つかって良かったですわね」
「俺は物だけに諦めかけていたよ。他国や商人に声をかえて良かった......」
豪華な物は、他国の王族や貴族たちに。
皆、喜んで高値を出して買い取ってくれました。
見た目はあれですが、物だけは良いので互いに満足した取り引きになったはずです。
売れ残った物は、商人たちに買い取ってもらえました。
少しだけ売値は下がりましたが、遠くの国に行けば需要があるらしいです。
運賃や処理費用を考えると、良かったと思うようにしましょう......。
「問題はこれらだな......」
「ええ......」
目の前には、特注品の個人に合わせて作られた物。
純金の服や高級な布などで作られた服など。
「もったいないが、服は作り直し。金は溶かして再利用させよう」
「職人たちに任せましょうか」
「そうだな」
レオン国王は、扱いに困っていた物を見ながら言う。
そして、イスに腰をかけた。
「これでやっとひと段落だ」
「お疲れ様ですわ、レオン様」
「まだ休むのは早いぞシルヴィア。まだまだやることはあるのだからね」
そう言うと、机に置かれている書類を手に取り始める。
机には、新たな国王誕生を祝う手紙がたくさん乗っている。
本来であれば使者が来るところですが、今のクライトン王国に使者に対応するだけの余裕も資金もありません。
それを配慮してか、手紙での祝辞が送られてきました。
「これの返事を書かなくてはいけないな」
「私も手伝いますわ」
「すまないなシルヴィア」
私たちは、手を動かし続けて手紙の返事を書いた。
山のように置かれている手紙は、少しずつ減っていった。
「後は封蝋をして、これで終わりだ」
レオン国王は、最後の手紙に蝋燭を垂らしてその上から印を押した。
これで、机に置かれていた手紙の処理は終えました。
「これで休めますわね」
「いや、次は内政面だ」
「ええ!? まだですか」
私たちの仕事はまだまだ続く。
終えても終えても、次から出てくる仕事を私とレオン国王は二人で作業をして行きました。
財政や外交、その他にもたくさんやることはあります。
ですが私は思いました。
これって王妃のすることじゃありませんわ!
と思っても、レオン国王は文句も言わずに作業をしているので私もがまんすることにしました。
「あー、これって国王がやることじゃないだろ......ん? どうしたんだシルヴィア、そんな顔をして」
「知りませんわ」
「怒ってどうしたんだよ」
そんなやり取りをしながら、作業を進めて行く——。
0
お気に入りに追加
90
あなたにおすすめの小説
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。
木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。
時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。
「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」
「ほう?」
これは、ルリアと義理の家族の物語。
※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。
※同じ話を別視点でしている場合があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる