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本編
29話 こんな生活も悪くない
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森にある小屋。
その外の入り口付近に、私たちはいた。
「じゃあクライヴ、護衛は任せるぞ」
「お願いねクライヴ」
「おうよ。任せてくれレオン様にシルヴィア様」
私とレオン王子殿下は、前回約束した山菜採集へと出かけることにしました。
王国での動きも気になりますが、今は気にしていても出来ることはありません。
私とレオン王子殿下だけでは、前のような森の獣が出ると危険なので、クライヴに護衛をお願いすることにしました。
「レオン様、シルヴィア様お気を付けてください。クライヴは二人のことを楽しますよ」
「今日は二人が採って来たもので、美味しいものを作りますよ! だからたくさん採って来てくださいね!」
セバスチャンとサラは、私たちのことを見送ってくれた。
私とレオン王子殿下とクライヴは、森へと入って行った。
しばらく入ったところで、クライヴが言う。
「俺は、二人の邪魔にならないように、目に入らないところで護衛でもしてるぜ」
そう言うとクライヴは、ガサゴソと茂みの中へと消えて行った。
「大丈夫、ですわよね?」
「ああ見えて、クライヴは頼りになるやつだ。俺たちが気がつかないうちに、獣はやっつけてくれるさ」
私は、前回の記憶を思い出して手が震えた。
レオン王子殿下は、その震える手を取って言った。
私たちは、山菜探しを始めました。
「ところでレオン様」
「どうしたんだシルヴィア?」
探し始める前に、一つ気になることがあったので聞いてみた。
「レオン様は、山菜に詳しいのですか?」
「え?」
「え?」
レオン王子殿下は、何を言ってるんだとでも言いたげな顔をしている。
「レオン様こそ、私のことを誘ってくれたじゃないですか」
「俺はダメなのは......分かるだろ?シルヴィアが知っているんじゃないのか?」
この前の毒キノコのことを思い出した。
レオン王子殿下が山菜に詳しければ、あのミスはなかったでしょう。
つまり、詳しくはないと言いたいのでしょうね。
「私は詳しくはありませんわ」
「え? この前は食べられる草を持ってきたじゃないか」
「あれは感ですわ!」
私がドヤっと言い放つと、レオン王子殿下は目をまん丸にした。
「と、言うことは二人とも知らないってことか」
私とレオン王子殿下は、互いに見つめ合った。
「どうしようか」
「どうしましょう」
困ったので、どこかにいるであろうクライヴに助けを求めようとすると。
「俺が知ってるわけないだろ」
どこからか、ガハハハと言う笑い声と一緒に聞こえて来た。
「困っていても仕方ない、シルヴィアの感に任せるとしよう」
「ええ、任せてください!」
私たちは、何の知識もなく山菜探しを始めました。
◇
しばらく夢中になって、山菜を集めていた。
「レオン様、それはキノコですわ!」
「そうか? 食べられそうな気がするんだが」
そう言って手に持っているのは、どう見てもヤバそうなキノコ。
私は、黙ってそれをはたき落とすと、レオン王子殿下はどこか悲しげな表情をしている。
そんなやり取りを数回繰り返して、カゴいっぱいの山菜を集めた。
「これだけあればいいだろう」
「そうですわね」
私たちは、カゴいっぱいに入った草を見ながらそう言った。
「それにしても、物音一つしませんでしたわね」
「それだけクライヴが優秀ってことだな」
辺りは鬱蒼とした森で、いつ何が出て来てもおかしくはありません。
「さてシルヴィア、暗くなる前に帰ろうか」
「ええ!」
こうして、私たちは小屋へと帰ることになった。
小屋が見えるところまで来ると、茂みからクライヴが出て来た。
「ここからは先に行ってくれ。俺は血抜きしてから戻る」
そう言うクライヴの後ろには、何やら倒した動物と見られるが複数体見えた。
私たちは、二人で小屋へと戻ることにした。
「おかえりなさい!」
「おかえりなさいませ、おふたりとも無事で何よりでございます」
外で仕事をしていた、セバスチャンとサラが出迎えてくれた。
採って来た山菜をサラへと渡して、小屋へと入る。
◇
森の小屋は、来たばかり頃のような何もない状態ではなくて、手作りの家具が置かれている。
「レオン様、今日はありがとうございます。とても楽しい一日でしたわ」
「シルヴィアがそう言ってくれると、俺も嬉しくなるな」
今日の一日を思い出して、何だかいい感じの雰囲気になってくる。
私とレオン王子殿下の距離は、少しずつ近づいて行く。
「シルヴィア......」
「レオン様......」
私たちは、もう手が届くという距離まで近付いた。
その時、小屋の外からドタバタと音が聞こえて来た。
「もっー! ダメですよ、クライヴさん!」
外からは、サラの声が聞こえてくる。
「今、いい感じのところ何ですから邪魔したらダメです!」
「何言ってんだお前、レオン様にようがあるからそこどけ」
どうやら、サラとクライヴが言い合いをしているようです。
そして、言い争いは終わり急に静かになりました。
「シルヴィア、扉を開けてごらん」
「扉ですか?」
私は、レオン王子殿下に言われた通りに扉へと近付いた。
「おいサラ、お前もっとそっち行け」
「クライヴさんこそ、そのでかい体どかしてくださいよ」
小さな声で、二人が話しているのが聞こえて来る。
私は、扉を開けた。
「何!?」
「わぁっー」
扉を開けると、サラとクライヴが小屋の中へと倒れこむように入って来た。
「二人とも、何をしていたんですか?」
私は、静かに笑いながら言う。
「ち、違うんですシルヴィア様。私は止めようとしたのに、クライヴさんが!」
「なっ!? サラお前、俺のせいにするつもりだな!」
二人のわーわーと言い合いが始まる。
そんな様子を見て、私は笑った。
「ふふふ」
「シルヴィア?」
私が笑ったのを見て、他の皆も笑い始めました。
逃亡先での出来事ではありますが、こんな生活も悪くないと思いました——。
その外の入り口付近に、私たちはいた。
「じゃあクライヴ、護衛は任せるぞ」
「お願いねクライヴ」
「おうよ。任せてくれレオン様にシルヴィア様」
私とレオン王子殿下は、前回約束した山菜採集へと出かけることにしました。
王国での動きも気になりますが、今は気にしていても出来ることはありません。
私とレオン王子殿下だけでは、前のような森の獣が出ると危険なので、クライヴに護衛をお願いすることにしました。
「レオン様、シルヴィア様お気を付けてください。クライヴは二人のことを楽しますよ」
「今日は二人が採って来たもので、美味しいものを作りますよ! だからたくさん採って来てくださいね!」
セバスチャンとサラは、私たちのことを見送ってくれた。
私とレオン王子殿下とクライヴは、森へと入って行った。
しばらく入ったところで、クライヴが言う。
「俺は、二人の邪魔にならないように、目に入らないところで護衛でもしてるぜ」
そう言うとクライヴは、ガサゴソと茂みの中へと消えて行った。
「大丈夫、ですわよね?」
「ああ見えて、クライヴは頼りになるやつだ。俺たちが気がつかないうちに、獣はやっつけてくれるさ」
私は、前回の記憶を思い出して手が震えた。
レオン王子殿下は、その震える手を取って言った。
私たちは、山菜探しを始めました。
「ところでレオン様」
「どうしたんだシルヴィア?」
探し始める前に、一つ気になることがあったので聞いてみた。
「レオン様は、山菜に詳しいのですか?」
「え?」
「え?」
レオン王子殿下は、何を言ってるんだとでも言いたげな顔をしている。
「レオン様こそ、私のことを誘ってくれたじゃないですか」
「俺はダメなのは......分かるだろ?シルヴィアが知っているんじゃないのか?」
この前の毒キノコのことを思い出した。
レオン王子殿下が山菜に詳しければ、あのミスはなかったでしょう。
つまり、詳しくはないと言いたいのでしょうね。
「私は詳しくはありませんわ」
「え? この前は食べられる草を持ってきたじゃないか」
「あれは感ですわ!」
私がドヤっと言い放つと、レオン王子殿下は目をまん丸にした。
「と、言うことは二人とも知らないってことか」
私とレオン王子殿下は、互いに見つめ合った。
「どうしようか」
「どうしましょう」
困ったので、どこかにいるであろうクライヴに助けを求めようとすると。
「俺が知ってるわけないだろ」
どこからか、ガハハハと言う笑い声と一緒に聞こえて来た。
「困っていても仕方ない、シルヴィアの感に任せるとしよう」
「ええ、任せてください!」
私たちは、何の知識もなく山菜探しを始めました。
◇
しばらく夢中になって、山菜を集めていた。
「レオン様、それはキノコですわ!」
「そうか? 食べられそうな気がするんだが」
そう言って手に持っているのは、どう見てもヤバそうなキノコ。
私は、黙ってそれをはたき落とすと、レオン王子殿下はどこか悲しげな表情をしている。
そんなやり取りを数回繰り返して、カゴいっぱいの山菜を集めた。
「これだけあればいいだろう」
「そうですわね」
私たちは、カゴいっぱいに入った草を見ながらそう言った。
「それにしても、物音一つしませんでしたわね」
「それだけクライヴが優秀ってことだな」
辺りは鬱蒼とした森で、いつ何が出て来てもおかしくはありません。
「さてシルヴィア、暗くなる前に帰ろうか」
「ええ!」
こうして、私たちは小屋へと帰ることになった。
小屋が見えるところまで来ると、茂みからクライヴが出て来た。
「ここからは先に行ってくれ。俺は血抜きしてから戻る」
そう言うクライヴの後ろには、何やら倒した動物と見られるが複数体見えた。
私たちは、二人で小屋へと戻ることにした。
「おかえりなさい!」
「おかえりなさいませ、おふたりとも無事で何よりでございます」
外で仕事をしていた、セバスチャンとサラが出迎えてくれた。
採って来た山菜をサラへと渡して、小屋へと入る。
◇
森の小屋は、来たばかり頃のような何もない状態ではなくて、手作りの家具が置かれている。
「レオン様、今日はありがとうございます。とても楽しい一日でしたわ」
「シルヴィアがそう言ってくれると、俺も嬉しくなるな」
今日の一日を思い出して、何だかいい感じの雰囲気になってくる。
私とレオン王子殿下の距離は、少しずつ近づいて行く。
「シルヴィア......」
「レオン様......」
私たちは、もう手が届くという距離まで近付いた。
その時、小屋の外からドタバタと音が聞こえて来た。
「もっー! ダメですよ、クライヴさん!」
外からは、サラの声が聞こえてくる。
「今、いい感じのところ何ですから邪魔したらダメです!」
「何言ってんだお前、レオン様にようがあるからそこどけ」
どうやら、サラとクライヴが言い合いをしているようです。
そして、言い争いは終わり急に静かになりました。
「シルヴィア、扉を開けてごらん」
「扉ですか?」
私は、レオン王子殿下に言われた通りに扉へと近付いた。
「おいサラ、お前もっとそっち行け」
「クライヴさんこそ、そのでかい体どかしてくださいよ」
小さな声で、二人が話しているのが聞こえて来る。
私は、扉を開けた。
「何!?」
「わぁっー」
扉を開けると、サラとクライヴが小屋の中へと倒れこむように入って来た。
「二人とも、何をしていたんですか?」
私は、静かに笑いながら言う。
「ち、違うんですシルヴィア様。私は止めようとしたのに、クライヴさんが!」
「なっ!? サラお前、俺のせいにするつもりだな!」
二人のわーわーと言い合いが始まる。
そんな様子を見て、私は笑った。
「ふふふ」
「シルヴィア?」
私が笑ったのを見て、他の皆も笑い始めました。
逃亡先での出来事ではありますが、こんな生活も悪くないと思いました——。
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