婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

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本編

24話 生活の始まり

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 逃亡先の森にある小屋。
 朝日が昇り始めて、周囲の様子が分かるようになって来ました。
 辺りは鬱蒼うっそうとした森で、馬車が通れる整備された道は、小屋の前までしかありません。

 小屋は、思っていたよりもとても小さく、逃げて来た全員が入れそうにありませんでした。

「これは全員入るのは無理そうだな......」

「レオン様、俺たちは外で野営でもしますよ」

「それはありがたいな」

 クライヴは、全員入ることが無理そうなのを見て、護衛メンバーたちの野営を提案した。

 私たちは、小屋の中に入り内部の確認をする。

「見事に何もないな」

「そうですわね......」

 中には何もなく、ただ小屋が立っているという状態でした。

「それでも、何もないよりはましか」

 レオン王子殿下の言葉に、皆がうなずいた。

「さて、とりあえず生活基盤を整えるところから始めようか」

「どうしますのレオン様」

 レオン王子殿下は、うーんと言いながら言う。

「水や食料は見つかったか?」

「いいえレオン様。小屋には何もなく、周辺に小川なども流れてはいません」

 セバスチャンが答える。
 たしかに、水の音は聞こえては来ません。
 周辺に小川がないことは、事実のようです。

「思っていたよりも大変そうだな......」

「わ、私に出来ることはなんでもやりますよ!」

 サラは、控えめな感じで言う。

「よし、みんなで同じことをしても意味はない。役割分をして、効率的に作業をしよう」

 レオン王子殿下は、皆のことを見ながら言った。

「クライヴたち護衛メンバーは、周辺の調査を頼む。水や食料があればいいが、無理はしないでくれ」

「了解だレオン様。俺たちに任せてくれ」

「サラは小屋の中を。セバスは小屋の外の掃除を頼む」

「はいっ!」
「かしこまりましたレオン様」

 レオン王子殿下は、テキパキと皆に指示を出して行く。

「その、レオン様。私は何をしたら良いですか?」

「そうだな、シルヴィアは......私と一緒に、今後について考えようか」

「分かりましたわ!」

 こうして、皆のやることが決まりそれぞれが担当する仕事を始めた。
 クライヴたちは外へと出て行き、サラとセバスチャンは掃除を始める。

 私とレオン王子殿下は、小屋の外で話すことにした。


 ◇


「それでシルヴィア、今度どうした方が良いと思う?」

「あまり長くは生活出来ないと思いますわ。お金も無くなりますし、時間が経つと見つかってしまう確率も高くなってしまいますわ」

「あー、いや。金の心配はいらない。こう見えても、私は金は持っているんだ」

 レオン王子殿下は、懐からお金を取り出して見せて来た。

「これで食料も買えれば良いのだが、そういうわけにもいかないな」

「領主の支援にも期待出来ませんわね。あまり大きな動きがあると、王国側にばれてしまいますわ」

「とりあえず食料は買わない方向で、支援をもらえるのなら最小限にしておこう」

「そうですわね」

 その後も、食料やお金について話し合いある程度は決まった。

「次は、この生活をどうするかだな」

「レオン様は何か考えていますの?」

 レオン王子殿下は、「そうだな」と考えながら言う。

「出来る限りはここで生活をしながら、周辺国家に亡命出来ないか手紙を送ろうと思っている」

「亡命、ですか」

「ああ、だが判断を誤って送り先を間違えれば、俺たちは捕まるだろうな」

「そうなると、王家との関わりがあまりなく、それでいて協力してくれそうな場所が良いのですわね」

 その後も二人で話し合い、結局あまりまとまらないまま話しを続けていた。
 そんなことをしている内に、クライヴたちが戻って来た。


 ◇


「それでクライヴ、周辺はどうなっていた?」

「小屋の周囲はどこも鬱蒼とした森だな。ここから少し北に歩いたところに、湧き水を確認出来た」

「西には、食べられそうな果物を確認しました」

「小屋周辺で、動物も確認出来ました」

 クライヴたち護衛メンバーは、それぞれが見た情報を知らせてくれる。
 その報告は、とても良いものばかりでした。

「よし、これならなんとか生活は出来そうだな」

「レオン様、私から一つ提案がございます」

「ん? どうしたセバス」

「ここの小屋での生活はあまりオススメは出来ません」

 セバスチャンは、急に意見を行って来た。

「周辺の掃除中、馬の足跡を複数確認しました。ここは馬車でも来れる立地で、見つかりやすいと思われます」

「なるほど、ではどうする?」

「小屋を解体して、北部の湧き水付近に拠点を移すのが良いかと」

「なるほど......クライヴたちはどう思う?」

「俺たちもセバスチャンに賛成だな。動物の危険は俺たちで何とか出来るだろ、それに小屋の解体建設も任せてくれ」

 護衛メンバーたちも、クライヴの発言にうなずいている。

「よし分かった。早速小屋を解体して、拠点を移すとしよう。日が高い内にさっさと作業をしよう」

「了解だ」

 こうして、逃亡先の森での生活がスタートしました。
 まずは、小屋を移築するところから始まります。

 今後、私たちの生活はどうなってしまうのでしょうか——。
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