婚約者はやさぐれ王子でした

ダイナイ

文字の大きさ
9 / 45
本編

6話 レオン・クライトン

しおりを挟む
 クライトン王国の王都。
 私は、血まみれになったドレスから着替えを済ませて、馬車から降りた。

「遅かったな」

「シルヴィアお姉様、道にでも迷ったのですか?」

 既に王都に到着していたお父様とセレナから、遅かった嫌味いやみを言われました。

「申し訳ございません、お父様。少し道中で手間取ってしまいまして......」

「まぁ、良い。私とセレナは別件があるから、シルヴィアは一人でレオン王子殿下と会って来なさい」

「はい、お父様」

 それだけ言うとお父様たちは、また馬車へと乗り込んで王都の内部へと進んで行きました。
 私とレオン王子殿下の婚約のために、王都に来たのではなかったのですか。
 そう思ったけれど、口にすることはしませんでした。

「シルヴィアお嬢様、案内をしますので馬車にお乗り下さい」

「分かりましたわ」

 お父様とセレナは、すでにどこかへと行ってしまい、残されたのは私と従者と護衛の兵士だけです。

 私は、従者に言われるがままに馬車へと乗り込みました。
 馬車は、お父様たちとは別の方向へと行き、王都の内部ではなくて外れへと向かっているようです。

 レオン王子殿下は、こんな外れにいるのですか?
 こんな所には王宮も、王城もありませんよ......。
 建物もどんどん少なくなって行き、周囲には木が多くなって来ました。

 そんなことを考えていると、馬車は進むを辞めました。
 どうやら、目的地へとついたみたいです。
 目的地は、王都の外れにポツンと立っているあまり大きくはない屋敷でした。

 私は、従者の手を取って足元に気を付けながら馬車から降りました。

「ようこそアーヴァイン公爵令嬢、シルヴィア様。お待ちしておりました」

 屋敷前には、一人の執事が立っていて私を見ると話しかけて来ました。

「まぁ、丁寧にありがとう。今日はよろしくですわ」

「案内をします。どうぞこちらに」

 護衛の兵士と従者はその場に残り、私一人で案内の執事について行くことになりました。
 美しく整えられた庭を通り、屋敷へと案内された。
 そして、屋敷の廊下を通ってとある部屋の前まで、歩いて行きました。

「レオン様、アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィア様をお連れしました」

 どうやらここは、レオン王子殿下が待つ場所のようです。
 部屋の中からは特に返事はなく、案内の執事は扉を開ける。

「レオン王子殿下、アーヴァイン公爵家のシルヴィアでございます。今回は、婚約の取り決めの件で来ました」

 私は、マナーを守ってあいさつをしました。
 頭を上げると、部屋には二人の男性がいました。

「これはこれはシルヴィア様、ようこそ起こし下さいました。私は、国王陛下代理の者です」

 体のふくよかな男性は、国王陛下の代理の人らしい。
 第二王子とはいえ、仮にも王子の婚約なのに国王陛下は来ないのですね。

 私は、もう一人の男性へと視線を向けた。
 紺色の髪に整った顔立ち、うわさではよく知っている人物。
 やさぐれ王子のレオン王子殿下、一体どのような方なのでしょうか。

「やぁ、よく来てくれた。アーヴァイン公爵令嬢のシルヴィア、いや、私の婚約者シルヴィアよ。俺がクライトン王国第二王子のレオン・クライトンだ」

 ......。
 ......え?

 私は驚きのあまり、口をポカンと開けて固まってしまいました。
 これがやさぐれ王子!?
 あまりにも想像と違い過ぎて、驚きを通り越して、固まってしまいました。

「レオン王子、シルヴィア様は緊張されている様子です」

「ああ、それは済まないね。では、先に婚約の件について決めてしまおうか」

「あ、すみませんレオン王子殿下......」

「シルヴィア公爵令嬢、敬称は必要ないよ。俺たちはこれからは、婚約者となるのだからね」

 驚いているうちに、私とレオン王子殿下の婚約の手続きは完了しました。
 これで、私とレオン王子殿下は婚約者となったのです。

「これで、アーヴァイン公爵令嬢シルヴィア様とクライトン王国第二王子のレオン王子殿下の婚約は完了しました。これからはお二人は、婚約者同士として扱われます」

 国王陛下代理の人が、書類を出して私とレオン王子殿下はサインを書き終えました。
 二つの書類を、クライトン王家とアーヴァイン公爵家にわけて保管することになります。

「本来であれば、国王陛下が来るべきなのですが、多忙なので来られず申し訳ないです」

「い、いえ、とんでもありませんわ」

 国王陛下代理の人は、謝罪をしてくる。

「これからは宜しく頼むよ、シルヴィア」

「え、ええ。レオンさ、ま?」

 レオン王子殿下は、私に微笑ほほえみながらそう言って来ました。
 どこか違和感いわかんを覚えながらも、こうして私たちは婚約者となったのです。

 私は、うわさと人物のレオン王子殿下の違いに困惑しながら、アーヴァイン公爵領へと戻って行きました——。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄のススメ!王子の「真実の愛」見つけて差し上げます

パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢メロア・クレーベルの隣には、非の打ち所がない完璧すぎる婚約者、ジークハルト王子が君臨している。このまま結婚すれば、待っているのは「王妃教育」と「終わらない公務」という名の過労死コース……。 「嫌ですわ! わたくし、絶対に婚約破棄して隠居してみせますわ!」 決意したメロアは、入学したての学園で、王子の「真実の愛の相手(ヒロイン)」を見つけ出し、自分を捨ててもらうという作戦を開始する。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

婚約破棄された悪役令嬢、放浪先で最強公爵に溺愛される

鍛高譚
恋愛
「スカーレット・ヨーク、お前との婚約は破棄する!」 王太子アルバートの突然の宣言により、伯爵令嬢スカーレットの人生は一変した。 すべては“聖女”を名乗る平民アメリアの企み。でっち上げられた罪で糾弾され、名誉を失い、実家からも追放されてしまう。 頼る宛もなく王都をさまよった彼女は、行き倒れ寸前のところを隣国ルーヴェル王国の公爵、ゼイン・ファーガスに救われる。 「……しばらく俺のもとで休め。安全は保証する」 冷徹な印象とは裏腹に、ゼインはスカーレットを庇護し、“形だけの婚約者”として身を守ってくれることに。 公爵家で静かな日々を過ごすうちに、スカーレットの聡明さや誇り高さは次第に評価され、彼女自身もゼインに心惹かれていく。 だがその裏で、王太子とアメリアの暴走は止まらず、スカーレットの両親までもが処刑の危機に――!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31 *らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。

処理中です...