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第二部:第二十六章 価値
(四)絆のしるし②
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大臣は脇に置かれた箱を机の上に置くと、蓋を開ける。提示された褒賞は意外なものだった。
「金貨五十枚と、魔法付与の施された指輪をひとりずつに。指輪は同じ意匠で作られている。連帯感強化には丁度良いだろう?」
金貨五十枚というのは、以前デラネトゥス家から貰った金額に比べれば、決して多いものではない。だが、成人が稼ぎ出す金額に比べれば、これは破格の報酬と言っていい。
任務を考えれば、公にしにくい出費であるし、七人に同額を払うことを考えれば、十分と言えるだろう。加えて指輪までくれるというのだから 、文句を言えるはずもない。
「魔法付与……、ですか?」
「これは、肉体に負の影響を及ぼす魔法を軽減させる効果を持たせている。何かの役には立つかもしれないな。サイズは一応合わせているので大丈夫なはずだ」
さらりと言ってのけるが、魔法付与の品が高級品だという事は誰もが知ってる。ラーソルバールの剣は特殊なケースで、実際の価格を知っている訳ではない。
付与された効果によって価格は大きく異なるが、いずれにせよ魔法付与の品というのは、誰でも手に入れることが出来るような物ではない。
だが、実はこの褒賞品は騎士にとっては問題点が有る。
「甲冑を着ける場合、強いて言えば手甲で覆う場合には邪魔になるかも知れませんね」
埋め込まれた宝石が少し大ぶりなのが欠点だろうか。
「確かにそうかもしれんな。まあ、記念品と思えば良い。売ってもそこそこの金額はする高級な品ではあるが……」
そこまでは考えていなかった、とばかりに大臣は苦笑した。
「頂いた褒賞品に文句を言うのは不敬です。売るなどもってのほか」
指輪を手に取ると、エラゼルは少し嬉しそうに指にはめる。芸術品のような美しい手に、赤い宝石を埋め込んだ金地の指輪が良く映えた。
「何であんなに訓練して、エラゼルの手は綺麗?」
「なっ!」
フォルテシアが覗き込んで、エラゼルの手をとる。突然の事にエラゼルは顔を赤らめる。
「剣を振った分、武骨になる者もいる。だが、剣に合った正しい形で握り、その手に僅かに体内魔力を纏わせれば、手の防護にもなる。また革手袋などを着用すれば、それなりに効果を発揮するものだよ。エラゼル嬢も剣の師に最初にそう教えられたのではないかな?」
元騎士であった軍務大臣らしい言葉だった。
「そ……その通りでございます」
全て言い当てられたといった風に、エラゼルは驚き畏まる。
上流階級の令嬢だけに、後々の為にそういう気配りも必要だったのだろうが、ラーソルバールには当然そのような知識は無いし、教えてくれる者も居なかった。当然、エラゼルに比べれば、やや武人寄りの手をしているが、それでも女性らしい綺麗な手をしている。
幼少期から剣を振るうちに、知らず知らず手に僅かに魔力を纏わせ、手を防護する術を覚えた事がその要因となっている。だが、それが体内循環を行わずに、手元だけでやるという誤った使用方法だった事が、魔法が不得手となる一因になったのは皮肉としか言いようがない。
体内の魔力循環が良化した今でもそれが無意識に働いていたため、ファタンダールと最初に相対した際に、剣で魔法を退ける事が出来たということを、本人は理解していない。
ラーソルバールは自らの手を見つめる。
自分の手に、犯罪者とはいえ人を殺めたこの手に、この輝きを添えて良いのだろうか。
一瞬躊躇し、隣に立つシェラに視線を向ける。友はその迷いを見抜いたのだろうか、微笑みながら黙って小さく頷いた。
背中を押され、ラーソルバールはゆっくりと机の上に置かれた物に手を伸ばす。
そうだ、これは……。
「……この仲間で頑張って手にした物だから、売る事なんて考えていないし、大事にさせて頂きます!」
ラーソルバールは指輪を手に取ると、嬉しそうにそれを握りしめた。
「金貨五十枚と、魔法付与の施された指輪をひとりずつに。指輪は同じ意匠で作られている。連帯感強化には丁度良いだろう?」
金貨五十枚というのは、以前デラネトゥス家から貰った金額に比べれば、決して多いものではない。だが、成人が稼ぎ出す金額に比べれば、これは破格の報酬と言っていい。
任務を考えれば、公にしにくい出費であるし、七人に同額を払うことを考えれば、十分と言えるだろう。加えて指輪までくれるというのだから 、文句を言えるはずもない。
「魔法付与……、ですか?」
「これは、肉体に負の影響を及ぼす魔法を軽減させる効果を持たせている。何かの役には立つかもしれないな。サイズは一応合わせているので大丈夫なはずだ」
さらりと言ってのけるが、魔法付与の品が高級品だという事は誰もが知ってる。ラーソルバールの剣は特殊なケースで、実際の価格を知っている訳ではない。
付与された効果によって価格は大きく異なるが、いずれにせよ魔法付与の品というのは、誰でも手に入れることが出来るような物ではない。
だが、実はこの褒賞品は騎士にとっては問題点が有る。
「甲冑を着ける場合、強いて言えば手甲で覆う場合には邪魔になるかも知れませんね」
埋め込まれた宝石が少し大ぶりなのが欠点だろうか。
「確かにそうかもしれんな。まあ、記念品と思えば良い。売ってもそこそこの金額はする高級な品ではあるが……」
そこまでは考えていなかった、とばかりに大臣は苦笑した。
「頂いた褒賞品に文句を言うのは不敬です。売るなどもってのほか」
指輪を手に取ると、エラゼルは少し嬉しそうに指にはめる。芸術品のような美しい手に、赤い宝石を埋め込んだ金地の指輪が良く映えた。
「何であんなに訓練して、エラゼルの手は綺麗?」
「なっ!」
フォルテシアが覗き込んで、エラゼルの手をとる。突然の事にエラゼルは顔を赤らめる。
「剣を振った分、武骨になる者もいる。だが、剣に合った正しい形で握り、その手に僅かに体内魔力を纏わせれば、手の防護にもなる。また革手袋などを着用すれば、それなりに効果を発揮するものだよ。エラゼル嬢も剣の師に最初にそう教えられたのではないかな?」
元騎士であった軍務大臣らしい言葉だった。
「そ……その通りでございます」
全て言い当てられたといった風に、エラゼルは驚き畏まる。
上流階級の令嬢だけに、後々の為にそういう気配りも必要だったのだろうが、ラーソルバールには当然そのような知識は無いし、教えてくれる者も居なかった。当然、エラゼルに比べれば、やや武人寄りの手をしているが、それでも女性らしい綺麗な手をしている。
幼少期から剣を振るうちに、知らず知らず手に僅かに魔力を纏わせ、手を防護する術を覚えた事がその要因となっている。だが、それが体内循環を行わずに、手元だけでやるという誤った使用方法だった事が、魔法が不得手となる一因になったのは皮肉としか言いようがない。
体内の魔力循環が良化した今でもそれが無意識に働いていたため、ファタンダールと最初に相対した際に、剣で魔法を退ける事が出来たということを、本人は理解していない。
ラーソルバールは自らの手を見つめる。
自分の手に、犯罪者とはいえ人を殺めたこの手に、この輝きを添えて良いのだろうか。
一瞬躊躇し、隣に立つシェラに視線を向ける。友はその迷いを見抜いたのだろうか、微笑みながら黙って小さく頷いた。
背中を押され、ラーソルバールはゆっくりと机の上に置かれた物に手を伸ばす。
そうだ、これは……。
「……この仲間で頑張って手にした物だから、売る事なんて考えていないし、大事にさせて頂きます!」
ラーソルバールは指輪を手に取ると、嬉しそうにそれを握りしめた。
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