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第二部: 第二十四章 胸の内にあるもの
(二)報告と……③
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邸宅内に戻ると、エシェスが待ち受けていた。
「ようやく、今日のお稽古が終わりました。兄様はそんなに汚れて、お疲れのようですけど、何をしていたんですか?」
「いや、少々仕事をね……」
「……と、ちょっと、何ですかその財宝?」
台車に載せられ運ばれてきた物を見て、エシェスは目を白黒させる。
「後で説明する」
苦笑いしつつ通り過ぎる兄の後ろから、傷だらけで薄汚れ、返り血を浴びた数人の冒険者がついてきたので、エシェスは少々驚いた様子を見せた。
「ルシェお姉様、どうされたんですか?」
慌ててラーソルバールに駆け寄ると、その手を取る。
「依頼されたお仕事が全部片付いたので、ご報告に。色々あるので、ご説明するのは難しいのですが」
「お仕事が終わられたという事は、帰ってしまわれるのですか?」
「はい、そうさせて頂こうと思ったのですが、引き留められてしまいまして……」
苦笑しながら話すラーソルバールの言葉を聞いて、エシェスはほっと胸を撫で下ろした。恋愛方面では甲斐性無しの兄の割には、頑張った方ではないか、と。
「じゃあ、我が家にしばらくお泊りに?」
「はあ……、そういうお話になっております……」
ラーソルバールは困ったように答えるが、その視界に入らないところで、エシェスは良くやったとばかりに喜び、拳を握り締めた。
「それでは皆様をお部屋にご用意しますね。それと湯浴みの仕度を……」
嬉しそうに駆け出すと、即座に使用人達を捕まえ、指示を出していた。
エシェスの気遣いもあって、早々と部屋は用意され、皆が汗と汚れを洗い流す事ができた。
その反面、アシェルタートが事後処理に掛かりきりになったため、ラーソルバール達は夕食の時間まで、何もする事がなかった。居心地の悪さを感じつつも、時間を潰すうちに、それぞれが与えられた部屋で疲れのために眠りに落ちていた。何者にも襲われる心配の無い状況で、寝心地の良いベッドで眠れる事の有り難さを感じずには居られなかった。
「ルシェお姉様……」
ラーソルバールは部屋の扉を叩く音と、自らを呼ぶ声で目を覚ました。
「……あ、はい」
眠気はそれ程では無いものの、疲労からか激しい倦怠感がある。声の主が分かっていたので、失礼だとは思いつつも、部屋着のままで出迎える。
扉を開けると、そこに立っていたのは予想通りエシェスだった。
「もうすぐ夕食になりますので、これに着替えてくださいませ。サイズは湯浴みの間に衣服の寸法を確認させて頂いたので、恐らく問題ないかと」
「え?」
「先程、皆さんの服を街で買って来させました」
どこかで同じような対応をされたな。思い出しながらラーソルバールは顔には出さず、心の中で苦笑いした。奇しくも差し出されたのは赤いドレス。
他人から見ると、自分は赤いドレスが似合うと思われているのだろうか、と少々気になる。だがそれよりも。
「この服の代金をお支払いしませんと……」
「いえ、これは我がルクスフォール家からのお礼だと思って頂ければ。ちなみに、明日の分も別にご用意していますよ」
「は?」
全員分の衣装を二日分などと、礼の範囲を越え、ほとんど依頼の褒賞金に近いものだ。驚きの余り、言葉を続けられなかった。
「それと、コッテ様から、ルシェお姉様は化粧が苦手とお伺いしております。私がその役目を引き受けさせていただきます」
あまりに嬉しそうで積極的な態度だったため、ラーソルバールはその申し出を断る事が出来なかった。
「ようやく、今日のお稽古が終わりました。兄様はそんなに汚れて、お疲れのようですけど、何をしていたんですか?」
「いや、少々仕事をね……」
「……と、ちょっと、何ですかその財宝?」
台車に載せられ運ばれてきた物を見て、エシェスは目を白黒させる。
「後で説明する」
苦笑いしつつ通り過ぎる兄の後ろから、傷だらけで薄汚れ、返り血を浴びた数人の冒険者がついてきたので、エシェスは少々驚いた様子を見せた。
「ルシェお姉様、どうされたんですか?」
慌ててラーソルバールに駆け寄ると、その手を取る。
「依頼されたお仕事が全部片付いたので、ご報告に。色々あるので、ご説明するのは難しいのですが」
「お仕事が終わられたという事は、帰ってしまわれるのですか?」
「はい、そうさせて頂こうと思ったのですが、引き留められてしまいまして……」
苦笑しながら話すラーソルバールの言葉を聞いて、エシェスはほっと胸を撫で下ろした。恋愛方面では甲斐性無しの兄の割には、頑張った方ではないか、と。
「じゃあ、我が家にしばらくお泊りに?」
「はあ……、そういうお話になっております……」
ラーソルバールは困ったように答えるが、その視界に入らないところで、エシェスは良くやったとばかりに喜び、拳を握り締めた。
「それでは皆様をお部屋にご用意しますね。それと湯浴みの仕度を……」
嬉しそうに駆け出すと、即座に使用人達を捕まえ、指示を出していた。
エシェスの気遣いもあって、早々と部屋は用意され、皆が汗と汚れを洗い流す事ができた。
その反面、アシェルタートが事後処理に掛かりきりになったため、ラーソルバール達は夕食の時間まで、何もする事がなかった。居心地の悪さを感じつつも、時間を潰すうちに、それぞれが与えられた部屋で疲れのために眠りに落ちていた。何者にも襲われる心配の無い状況で、寝心地の良いベッドで眠れる事の有り難さを感じずには居られなかった。
「ルシェお姉様……」
ラーソルバールは部屋の扉を叩く音と、自らを呼ぶ声で目を覚ました。
「……あ、はい」
眠気はそれ程では無いものの、疲労からか激しい倦怠感がある。声の主が分かっていたので、失礼だとは思いつつも、部屋着のままで出迎える。
扉を開けると、そこに立っていたのは予想通りエシェスだった。
「もうすぐ夕食になりますので、これに着替えてくださいませ。サイズは湯浴みの間に衣服の寸法を確認させて頂いたので、恐らく問題ないかと」
「え?」
「先程、皆さんの服を街で買って来させました」
どこかで同じような対応をされたな。思い出しながらラーソルバールは顔には出さず、心の中で苦笑いした。奇しくも差し出されたのは赤いドレス。
他人から見ると、自分は赤いドレスが似合うと思われているのだろうか、と少々気になる。だがそれよりも。
「この服の代金をお支払いしませんと……」
「いえ、これは我がルクスフォール家からのお礼だと思って頂ければ。ちなみに、明日の分も別にご用意していますよ」
「は?」
全員分の衣装を二日分などと、礼の範囲を越え、ほとんど依頼の褒賞金に近いものだ。驚きの余り、言葉を続けられなかった。
「それと、コッテ様から、ルシェお姉様は化粧が苦手とお伺いしております。私がその役目を引き受けさせていただきます」
あまりに嬉しそうで積極的な態度だったため、ラーソルバールはその申し出を断る事が出来なかった。
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