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第二部:第二十章 真実と虚構の存在
(二)偽りの名③
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「さて、最初は俺からいきますか」
剣を手に取ると、ガイザは大きく腕を回した。
「お前が一番強いのか?」
冒険者の一人が睨む。
「いやぁ。恥ずかしながら、この三人じゃ俺が三番だ」
苦笑しながら頭を掻く。
「なんだと?」
「それじゃあ、エドウィールさん達は下がっててくれ。俺がやる」
一人の大柄な冒険者が進み出る。短髪のボサボサ頭をかき上げながら、斧を振り回す。
「斧かよ……。彼女より強いかなぁ」
ミリエルを思い出しながら、ため息をついた。
「あん? 何か言ったか?」
「いえいえ、何も。俺はグラデア。よろしく、先輩」
わざと挑発するように答える。挑発に乗せられ、冷静さを失ってくれればやりやすい。
「ゴランドラだ。ちっとばかし名が売れてると思うが、お前さんは知らないみたいだな……。痛い目見たくなかったらやめときな」
挑発に乗った様子も無く、ギロリとガイザを睨みつける。
「あの体格差は面倒だな」
「んー、そうだね。でもガイザなら、一撃も貰わない気がするよ」
楽観的に見る二人の言葉を聞き、冒険者たちが鼻で笑う。ゴランドラが負けるとは思ってもいないのだろう。
「さあ、準備はいいか?」
ホグアードが楽しそうに二人を見つめる。
「いつでもどうぞ」
ガイザが応じると、ゴランドラも頷いた。
「始めてくれ」
開始の合図と同時に、ゴランドラが襲い掛かる。斧を巧みに操り、上から振り下ろすと見せてから、横薙ぎに切り替えた。
ガイザは半歩退がって斧を避け、間髪入れずに牽制の突きを繰り出す。
「ぬっ!」
ゴランドラは斧の柄でそれを弾き上げると、そのまま斧を振り上げる。剣を戻しつつ、ガイザは体を傾けて斧を避ける。
「防御だけなら、ガイザは一流に近いと思うんだよね。教か……師匠も、そこは認めてたし」
「そうだな。相手の隙を突いた攻撃が身に付けば、もっと強くなるのだろうな」
二人の想定通り、そのまま一進一退の攻防が繰り広げられ、どちらも決定打が出せないで居た。
「そこまで!」
ホグアードが長引きそうになった戦闘を中断させる。ゴランドラに疲労が見えてきたからかもしれない。
同様にガイザの息もやや荒い。
お互いに武器を下ろし、息を整えながら手を差し出す。
「やるじゃねえか、坊主……いや、グラデアだっけか」
「お褒め頂き、光栄です。先輩」
二人は握手をすると、武器を置き近くにあった椅子に並んで座る。
「おい、グラデア……。あの嬢ちゃん達は、お前さんより強ぇのか?」
「ええ。一人は恐ろしく強い……。もう一人は別格です」
ゴランドラがガイザに気を許したように、問いかけたので、ガイザもそれに応じる。二人とも、まだ息が荒い。
「なんでぇそりゃ。性質の悪い冗談か?」
「そんな笑い話だといいんですがね……」
ガイザが爽やかに笑うので、ゴランドラは顔を引きつらせて苦笑した。
「では、順番的に言うと、私か?」
珍しく鼻歌を歌いながら、エラゼルが武器棚へと足を運ぶ。使う剣を選びながらも、鼻歌は続けている。
「何だかご機嫌だな。あのお嬢様」
モルアールが不思議そうに呟く。
「道中、馬車の休憩時間にしか稽古ができなかったから、久々で嬉しいんだと思う。多分、本気でやる……」
フォルテシアが微笑みを浮かべながらそう答えた。村での賊討伐の際には、腕の立つ相手が居なかったので、命が掛かっていたとは言え、恐らく本気は出していない。
道中の僅かな稽古相手を、主にフォルテシアが勤めていたので、その辺りは何となく分かるのだろう。
「本気?」
公爵令嬢の本気の剣とはどんなものか。モルアールは興味をそそられた。
剣を手に取ると、ガイザは大きく腕を回した。
「お前が一番強いのか?」
冒険者の一人が睨む。
「いやぁ。恥ずかしながら、この三人じゃ俺が三番だ」
苦笑しながら頭を掻く。
「なんだと?」
「それじゃあ、エドウィールさん達は下がっててくれ。俺がやる」
一人の大柄な冒険者が進み出る。短髪のボサボサ頭をかき上げながら、斧を振り回す。
「斧かよ……。彼女より強いかなぁ」
ミリエルを思い出しながら、ため息をついた。
「あん? 何か言ったか?」
「いえいえ、何も。俺はグラデア。よろしく、先輩」
わざと挑発するように答える。挑発に乗せられ、冷静さを失ってくれればやりやすい。
「ゴランドラだ。ちっとばかし名が売れてると思うが、お前さんは知らないみたいだな……。痛い目見たくなかったらやめときな」
挑発に乗った様子も無く、ギロリとガイザを睨みつける。
「あの体格差は面倒だな」
「んー、そうだね。でもガイザなら、一撃も貰わない気がするよ」
楽観的に見る二人の言葉を聞き、冒険者たちが鼻で笑う。ゴランドラが負けるとは思ってもいないのだろう。
「さあ、準備はいいか?」
ホグアードが楽しそうに二人を見つめる。
「いつでもどうぞ」
ガイザが応じると、ゴランドラも頷いた。
「始めてくれ」
開始の合図と同時に、ゴランドラが襲い掛かる。斧を巧みに操り、上から振り下ろすと見せてから、横薙ぎに切り替えた。
ガイザは半歩退がって斧を避け、間髪入れずに牽制の突きを繰り出す。
「ぬっ!」
ゴランドラは斧の柄でそれを弾き上げると、そのまま斧を振り上げる。剣を戻しつつ、ガイザは体を傾けて斧を避ける。
「防御だけなら、ガイザは一流に近いと思うんだよね。教か……師匠も、そこは認めてたし」
「そうだな。相手の隙を突いた攻撃が身に付けば、もっと強くなるのだろうな」
二人の想定通り、そのまま一進一退の攻防が繰り広げられ、どちらも決定打が出せないで居た。
「そこまで!」
ホグアードが長引きそうになった戦闘を中断させる。ゴランドラに疲労が見えてきたからかもしれない。
同様にガイザの息もやや荒い。
お互いに武器を下ろし、息を整えながら手を差し出す。
「やるじゃねえか、坊主……いや、グラデアだっけか」
「お褒め頂き、光栄です。先輩」
二人は握手をすると、武器を置き近くにあった椅子に並んで座る。
「おい、グラデア……。あの嬢ちゃん達は、お前さんより強ぇのか?」
「ええ。一人は恐ろしく強い……。もう一人は別格です」
ゴランドラがガイザに気を許したように、問いかけたので、ガイザもそれに応じる。二人とも、まだ息が荒い。
「なんでぇそりゃ。性質の悪い冗談か?」
「そんな笑い話だといいんですがね……」
ガイザが爽やかに笑うので、ゴランドラは顔を引きつらせて苦笑した。
「では、順番的に言うと、私か?」
珍しく鼻歌を歌いながら、エラゼルが武器棚へと足を運ぶ。使う剣を選びながらも、鼻歌は続けている。
「何だかご機嫌だな。あのお嬢様」
モルアールが不思議そうに呟く。
「道中、馬車の休憩時間にしか稽古ができなかったから、久々で嬉しいんだと思う。多分、本気でやる……」
フォルテシアが微笑みを浮かべながらそう答えた。村での賊討伐の際には、腕の立つ相手が居なかったので、命が掛かっていたとは言え、恐らく本気は出していない。
道中の僅かな稽古相手を、主にフォルテシアが勤めていたので、その辺りは何となく分かるのだろう。
「本気?」
公爵令嬢の本気の剣とはどんなものか。モルアールは興味をそそられた。
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